第三十八話
魔族討伐の報酬を七人で分けて、僕とバララエフは冒険者ギルドを後にした。
しきりに勧誘してくるセーザルはイタンに押し付けておいた。
「ロイク! とバララエフ! 無事に戻ったのね!」
「ロイク様とお祖父様。ご無事で何よりです。お怪我はありませんでしたか?」
フェリシアとリーリエに出迎えられ、僕とバララエフは魔族との戦闘の内容を語った。
厳しい戦いだったが、僕もバララエフも無傷であることに四人は喜んでくれた。
さて得られた魔法陣は冒険者ギルドに引き取られていったが、僕は〈写真記憶〉で記憶しておいた魔法陣を〈多重思考〉のひとつを割いて分析し続けていた。
いくつか分からない部分もあったが、概ね分析は完了した。
どうもダンジョンコアを活性化させて大暴走を起こそうとする魔法陣らしいことが分かった。
メインストーリーでは語られるだけだったが、エピソードとして確かにスタンピードで滅びた街があった。
どうやらここのことだったらしい。
もし大暴走が発生していたら、僕はフェリシアとリーリエを守りきれただろうか?
確実に守りきれる、とは言い難い。
ひとりでは数の暴力には抗いがたいものがあるからだ。
やっぱり魔族は放置しておいていい存在ではない。
今回は七人で六人の魔族と戦ったが、僕ひとりではギリギリなんとかなるかどうか、といったところだっただろう。
一対一の戦いならば魔族の王も倒せるだろうと高をくくっていたが、魔族がパーティを組んで陰謀を企てるということなら、厳しい戦いを強いられることになる。
どうもゲームの展開に気を取られていたが、ラストダンジョンでエンカウントする魔族たちの数を思えば、大量の魔族を相手取った後に魔族の王と対峙することになるのは明白だ。
……仲間が必要だな。
フェリシア、リーリエは既に鍛え始めている。
バララエフがメインストーリーの戦いについてきてくれるかは未知数だから期待はしないでおこう。
同様にタチアナとエルミーヌも数には入れない。
タチアナは僕の保護者役だからついてきてくれるかもしれないが、彼女の技量の伸びはここ最近、鈍っている。
明らかに才能の限界だ。
どうやらメインストーリーの主人公とヒロインと合流して、今から鍛えなければならないらしい。
ただ一言で合流する、と言っても簡単ではない。
彼と彼女たちは、いまどこで何をしているのか。
そして自由の身とはいかない幼い僕の行動範囲内で、彼らと合流するのは至難の業だ。
……まあ最悪、オープンフィールドに籠もって鍛えればいいわけだけど。
時間停止レベリング。
反則級のチートだ。
その日、密かに僕は魔族の王討伐を心に誓った。




