146話 目には目を!?
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「なによコイツ!? キモ! ジローさっさと何とかしなさいよ!」
タコさんの触手に手こずり八つ当り気味に次郎衛門へと怒鳴るフィリア。
既に20本以上に増えてしまったタコさんの触手にイラついているようだ。
「キモイ!? キモイですって!? きいいいい! あなたに私の何が分かるって言うのよ! ちょっと姿を見せただけで魔物扱いされる身になってみなさいよ! この金髪美人!」
フィリアの言葉にヒステリー気味に吠えるタコさん。
フィリアに対して金髪美人などとむしろ褒め言葉を吐き捨てている辺りにタコさんの余裕のなさが伺える。
「何ですって! この触手うにゅーん!」
売り言葉に買い言葉と言った具合にフィリアも徹底口戦の構えだ。
だがこちらも触手うにゅーん! が悪口として成立しているのかは微妙なところではある。
「おい! フィリアたんちょっと落ちつけって!」
それなりにレベルの高いバトル中に勃発した何ともレベルの低い言い争いに流石の次郎衛門も困惑気味だ。
戦闘自体が膠着状態になりつつある現状では舌戦も立派な駆け引きと言えなくもないが如何せん内容がしょぼ過ぎである。
触手が無尽蔵に増えて行くのであればいずれは均衡も崩れるのかも知れないが、どうやらそうでもないらしい。どうもタコさんが同時に操れるのは精々普段の4倍、30本程度が限度のようである。
ちなみに切り飛ばされた触手がどうなっているのかと言えば。
「けっこうおいしい」
「歯応えが絶妙なのじゃー」
とまぁ、埒が明かない状況にすっかり飽きたお子様達が美味しく召し上がっていたりする。
生で良し、焼いて良しと中々好評なようだ。
結構な勢いで触手が量産されているというのにも関わらずそれに負けぬ勢いで食べ続けている。
育ち盛りは食べ盛りとはよく言ったものである。
まぁ、本物の幼女であるアイリィはともかく、600年以上生きているアイラが成長する可能性があるのかについては疑問ではあるが。
成長しなかったとしてもそういった需要はいつの時代にもあるものなので強く生きて欲しいところだ。
「クッ! 人の体を美味しそうに!」
「ほらほら。タコさんも意地張ってないで頭冷やせって」
忌々しげに吐き捨てるタコさんに忠告する次郎衛門。
だがこの膠着状態の影でタコさんは地味に状況を打破するべく動いていたらしい。
「人間共! 調子に乗るのもここまでよ!」
タコさんの声と同時にフィリアの足元の地中から触手が飛び出しフィリアの体に絡みつく。
どうやら密かに砂地の地中を進めていたようだ。
「な、何すんのよ! 離しなさいよ!」
「良い気味だわ! どうしてくれようかしら?」
タコさんの触手にねっとりと絡みつかれたフィリアの姿は結構エロいものがあった。
触手まみれのフィリアの図だなんて誰よりも次郎衛門が喜びそうな光景だ。
だがしかし。
そんな光景を目の当たりにした次郎衛門が何故か血涙を流し崩れ落ちる。
「――――――――――――に……」
ぼそぼそと何事か呟く次郎衛門。
その声は非常に小さく今にも消え入りそうな声だった。
「え?」
「俺ですらまだフィリアたんと触手プレイ出来てないのに! テメーの血は何色だぁ! 許さねえ! 絶対に許さねぇぞおおおおお!」
どうやら次郎衛門はタコさんに先を越された事に怒り狂っているっぽい。
何とも次郎衛門らしいキレポイントである。
「馬鹿な事言ってないでなんとかしなさいよ!」
「任せろフィリアたん! フィリアたんの膜は奪わせやしない! あれは俺のもんだ!」
「何でジローのものなのよ! 私のものに決まってるでしょうが! っていうか膜って言うな!」
「え? ちょっと待って! 私は別にそんな事をするつもりは!」
完全に暴走状態に突入した次郎衛門にむしろタコさんの方が面を喰らっているようだ。
世間一般でいうところの自分よりもキレてる人がいると冷静になってしまう法則が働いたのだろう。
しかし相手の状況を気にする次郎衛門ではなかった。
というかフィリアの言葉も聞いてなさそうである。
「黙れ下郎! 目には目を! 歯には歯を! そして! 触手には触手じゃああああああ!」
次郎衛門の叫び声と共に次郎衛門の作務衣の袖からは無数の触手が飛び出した。
次郎衛門が生み出した無数の触手は一直線にタコさん…… ではなくフィリアの元へと突き進んだ。
そして水着X触手コンボによって当社比300%ほどセクシーが増量されているナイスバディへと絡みつく。
ちなみにタコさんの触手が普通のタコっぽいタイプなのに対して次郎衛門の触手はエロ漫画とかにで出て来そうな先っぽ部分にモザイクが必要なタイプである。
漫画だったなら見開き一杯モザイク塗れになっているところだ。
この作品が漫画じゃなくて本当に良かった。
「こら! ジロー! やめなさいよ! 何をしてくれちゃってるのよ!」
「おう! おれもびっくりだ! 出してみたいなぁとは思ってやってみたら! 何と出せちゃったんですよ!」
「ふざけなるな! この馬鹿ジロー!」
どうやらタコさんに負けじと挑戦してみたら出来たという事らしい。
ノリで新魔法を作ってしまうとはエロのパワーというものは偉大なものである。
そして生み出された触手達はフィリアの抵抗もなんのその。
元気一杯にフィリアに絡みついている。
「わ、私の事を無視しないで!」
次郎衛門の暴走時にありがちな事ではあるが案の定置いてきぼりを喰らったタコさんが叫び、次郎衛門へと触手を伸ばす。
しかし思いもよらぬエロ漫画状態に免疫のないタコさんの顔はゆで上がったかのように真っ赤だ。
心なしか触手の動きにもキレがない。
「クハ! クハハハハ! タコさんよ! 邪魔をするなら容赦はしないぞ! 二人まとめて凌成敗じゃああああああ!」
メイドイン次郎衛門の触手はフィリアだけでなくタコさんの触手を呑みこみタコさんに絡みつき始めた。
圧倒的だ。
いや、圧倒的触手力と言うべきか。
瞬く間にタコさんの豊満な肉体は次郎衛門の触手の支配下に落ちたようだ。
両成敗ではなく凌成敗と言い放っている辺りに次郎衛門の犯る気が感じられる。
「ちょ!? や、やめなさいって! コラ!」
「いや! ぬるぬるが気持ち悪い!」
「クハ! クハハハ! 良いではないか! 良いではないかああああ!」
もはや誰が悪者なのか分からない状態である。
というかどこぞの悪代官でもここまで酷いプレイはしないのではないだろうか。
そしてお約束のようにフィリアがキレる。
「やめろって言ってんでしょうがああああああ!」
叫び声と共にフィリアの体から雷が迸った。
雷と言うよりも放電と言った方がしっくり来るかも知れない。
先程までのタコさんには通じなかったが、今回は状況が違う。
今のフィリアの体には次郎衛門の触手とタコさんの触手が複雑に絡み合っているのだ。
その結果どうなったかと言えば。
「「うぎゃあああああああああああ!」」
香ばしい食欲を誘う香りと共に倒れる次郎衛門とタコさんなのであった。




