家族
偉大な魔術師の家族になる少女……。
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〝西の町〟
アルトに指定された町にたどり着いたアルファは、特に目的もなく町の市場を歩いていた。
ぼうっと歩きながらも風の精霊と感応し、周囲の警戒を怠らないのはアルトの教育の賜物だった。
そんな拡張されたアルファの聴覚に悲鳴がこだました。
「だ、誰か! その人を捕まえてください!
シスターだった。地面に膝をつきながら、走り去る男に手を伸ばしていた。
その男は、ちょうどまっすぐアルファの方に向かって走って来た。
「どけ! クソガキ!」
男はそう恫喝しながらアルファをつき飛ばそうとするが……。
アルファは顔色一つ変えずに風の精霊の力で大気を操り、男の首を締めながら中空に持ち上げるのだった。
「ぐっ……が……」
男は苦しみ、目に見えない大気に締め付けられた首を必死にかきむしるものの、当然そんなことで抵抗できるはずもなく、すぐに酸欠で意識を失った。
意識を失った男に興味を失くしたアルファは首を絞めるのをやめ、重力に誘われるままに男を地面に落とす。
「よかった……。追いつきました……!」
先ほどのシスターが男に駆け寄ると、彼が手にもっていたカバンを持ち上げて。
「あの、あなたが捕まえてくれたんですか? ありがとうございます」
少しだけ間の抜けた顔をしたシスターは、朗らかに笑みを浮かべてアルファにお礼を言った。
「いや……」
未だ師であるアルト以外とのコミュニケーションに慣れていないアルファはぶっきらぼうに答える。
「なにかお礼をさせてください!」
「別にいい」
特に興味なさげに返したアルファは踵を返し、その場を立ち去ろうとした。したのだが、シスターの少女は彼の袖をぎゅっとつかんで離さなかった。
「そうおっしゃらないでください! ここで帰しては神様に怒られてしまいます」
アルファは小さく息をつくと少女を振り返る。その様子に、少女はぱあっと顔をほころばせた。
「ありがとうございます! そうだ! お昼をごちそうさせてください。ちょうどこれから帰って準備をするとこだったんです。あの、あなたのお名前は?」
「……アルファ」
「アルファ様……私はサーヤと申します」
これが偉大な魔術師の家族となる少女との出逢いだった。
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