プロローグ
はじめましての方、はじめまして。
お久しぶりの方、お久しぶりです。
今回から中二病全開の魔術師モノを執筆することにしました。
少しでも面白いと思っていただけたら、高評価やブックマークなどお願いいたします。
昔々、といってもそれほど昔ではない。今から30年ほど前の話だ。1人の偉大な魔術師がこの世に生を受けた……。
「どうあっても、この子どもの父親の名を明かさぬのだな?」
今となっては名前すら失われた小さな砂漠の村で、その魔術師は生を受けた。早産だったため、その男の赤ん坊はひときわ小さく、モノのようにその村の村長の手の中にあった。
村長は厳しい目で、その赤ん坊を生んだ女性を見ていたが、女性は何も答えずに視線をそらした。
「そうか。それでは村の掟に従い、そなたを追放する。この子は永劫の闇の中で神の供物となろう」
若い男二人に両腕を抱えられた女性は、最後まで生まれて来た我が子を見ることなく、その部屋から連れ出されていった。それを見送った村長は、赤ん坊を連れて村の教会に向かった。その祭壇を重々しく押すと、地下室があった。村長は赤ん坊を持ったまま地下室に下り、隠し祭壇の前に生贄として赤ん坊を置いた。そして跪いた村長は〝神〟に祈ってから、その場を去った。赤ん坊を残して。
普通に考えれば、母親から栄養を与えられない赤ん坊はすぐに死んでしまう。はずだった。しかし漆黒の闇の中、少年の周りを漂うモノがあった。〝闇の精霊〟である。
闇の精霊はすべての精霊の中で最も気難しく、並みの魔術師では感じることもできない存在だ。ゆえに少年も闇の精霊が傍にいることを感じることはないだろうと、闇の精霊は思っていた。
にもかかわらず少年は、闇の精霊がいる方に手を伸ばし、あまつさえ楽しそうに笑いかけた。それは永劫の時を生きる闇の精霊にとって初めての経験だった。だからこそ闇の精霊はその赤ん坊を生かそうと考えた。彼に闇の精霊の持つ無限ともいうべきエネルギーを分け与えたのだ。それにより赤ん坊の身体が人間であって人間でないものに変わることなど、闇の精霊にとってはどうでもいいことだった。
◆◆◆
それから10年の時が流れた。少年は闇の精霊から、世界の理のすべてを学び成長していった。その身体も成長し、人間と精霊のハイブリッドとなっていた。
そんなある日のことだ。少年が住んでいた隠し祭壇に光が射した。少年が初めて見た光だった。そして少年はすぐに、光の中に粒子があることに気付いた。それは光の精霊だった。
光の精霊は、少年を外の世界へといざなう。少年はふらふらと立ち上がり、外の世界へと這い出した。彼が初めて見た世界は広大な砂漠の中のがれきだった。そう、彼の生まれた村はとうの昔に滅んでいたのだ。
なんの感慨もなく立ち尽くす彼の下に、風の精霊がなにかを運んできた。茶色いローブだった。そのローブはフードがついており、砂漠を旅するにはちょうど良さそうなものである。
少年は光の精霊に促されてローブを羽織ると、水の精霊に誘われるまま、広大な砂漠を歩き出した。
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