皆で話をしよう
第四十九話 皆で話そう
「うーんまいったなぁ」
「どうしたのじゃ? エアドール殿めずらしいのう」
俺とガッコフルーグで赤ワインを絞っている。正しく言うとダンジョンからゴーレムを二体連れてきて、やらせているだけだ。ゴーレム凄い。
「なんかですね、家庭教師の時に結界が広がったって話をしたんですよ。ガレンドールと王国の軍事バランスが崩れましたよ、ヤバイですよってね」
ゴーレムがせっせと少し発酵した葡萄を搾っている。葡萄はセリーリアが踏んだだけだ。絞って再び発酵を開始させる。
「魔法使いのいる部隊にはかなわんからの」
「ええ。そこで、お前ら降伏するか魔法文明を終わらせるか選べって啖呵を切ってきましたよ」
「エアドール殿大きく出たの。何を作るんじゃ?」
「火薬です。炭の粉十五、硫黄の粉十五、硝石の粉七十を混ぜれば燃える薬が出来るんです。火薬って言いますね。火薬を筒に入れて、鉛の玉を入れて火薬に火を付けるとバーンと打ち出せて矢よりも強い武器が出来ます。鉄砲です。これで王国の魔法使いに対抗しようかと」
「鉄砲、のう」
「あまり良くないのでしょうが、ガレンドールが蹂躙されるよりは・・・」
「エージ、硝石ってダンジョンの四階層にあるよ? 白くて水に溶ける石だよね。岩塩かと思っちゃったよ。エージは岩塩が欲しいんだって。鑑定したら硝石だって」
ゲルが話しに入って来る。
「え? 本当?」
「ダンジョンはダンジョンんマスターの欲しい物が出てくるんだよ。普通は魔剣とかさ、魔道具とかだけど、一切出てこないよ。アハハハ」
ダンジョンで硝石が出てくるのか・・・
硝石は日本で産出しなかった。尿が結晶化すると硝石が取れたはずだ。戦国時代とか、基本的にトイレを漁って硝石を集めていたはずだ。例外が織田信長で、外国と交易することにより大量の硝石を得ている。大量の鉄砲を運用するには、大量の硝石が必要なのである。硝石を制した信長が戦国を制したのには訳がある。硝石は理由の一つだ。
「そうじゃのう。二階層のホップなんて何事かと思ったぞい。魔剣を欲しがらないのはエアドール殿くらいだの。ワッハッハ」
葡萄酒は全て絞り終わった。樽の半分くらい、果汁が溜まった。俺は蓋をして醸し石を置き、祈りを捧げる。醸し石は光り始め、発酵が再開された。
「五階層には温泉があったよ。硫黄もあるよ。六階層は砂の山だったよ。エージは砂が欲しいの?」
「砂? 黒っぽい?」
「うん、黒いよ」
「ああ、砂鉄だ。ね、三階層は?」
「三階層は斜面が広がるだけだよ。ロキに見て貰ったけど石灰質で良くないって」
「あー。それ葡萄用の畑だ。葡萄は石灰室の方が良いからな」
「のう、エアドール殿」
「何です?」
「宝の山じゃの。エアドール殿と知り合ってから宝の意味がすっかり変わったぞい。魔剣だとかどうでもいいのう。あれじゃろ? その鉄砲だかってやつは凄いんじゃろ。じゃぁ作るかの。国からドワーフを連れてくるかの」
「へぇ。ドワーフさんが来るの?」
「うん、鉄砲を作るにはかなり細かな物を作れる技量がいるんだ。工房を作った方が良いですよね」
「そうじゃの。ダンジョンのなかに作っちまえばいいぞい。ドワーフは洞窟で暮らすからの」
「ね、七階層は?」
「七階層は平らな土地だけだよ。何も無いよ」
「工房は七階層に作りますか?」
「そうじゃの」
ロキが荷物を抱えて入って来た。
「おーい、収穫だよー」
ロキとフレヤがホップとお茶の葉を持ってきた。お茶の葉はちょうど良い乾燥具合だ。お茶を作るか。
「ロキ、乾燥ありがとう。手でお茶の葉を丸めてくれないかい」
「どんな感じ?」
俺は手本を見せる。ロキは俺を真似て茶葉を揉む。大丈夫だ、俺も適当だ。前の世界でお茶を揉んだ事なんて無いぞ。
ロキがお茶を揉み終わると、鍋に入れて蓋をする。明日の朝まで発酵させよう。
「あれ? ぴかーってやらないの?」
「うん、半日くらい置いておけば良いんだ。ちょうど良い発酵具合になると思うよ。朝来て、発酵具合を確かめてから火に掛けて発酵を止めよう。飲んでみて問題なかったらロキが紅茶を全部作ってもいいよ」
「え? いいの?」
「うん、ロキのお茶が大陸中に出回るよ」
「まぁいいんじゃない。ロキちゃんは可愛いし、エルフが作ったお茶となると話題になるわよね」
「フレヤさん、お茶を作るロキとお茶を淹れるセリーリアで名前を売りたいんだよね」
アイドルユニット化を企んでいるのだ。曲を作りたいなぁ。コードを弾ける楽器ってあるのだろうか? ピアノやギター。ただ、この世界はコードなんて無いから、難しいかもね。音楽も徐々に発展していった。弦楽器一本の弾き語りから、沢山の楽器でオーケストラ。オペラ。近代に入りブルース。ここからエルヴィス・プレスリーが出て、ビートルズが出てくる。何百年も掛けて徐々に発展してきたのだ。現代の音楽、ポップスやロック、フォークなんかはコード作曲という事をよくやる。Am、G、D、Dm、E、Emかな? この辺りのコードを適当に並べると不思議とメロディーが出来上がる。コード作曲と言っている。コード作曲は誰にでも出来るのだが、突然コードを鳴らしても誰も付いて来れないだろう。この世界は弾き語りなのかな? どうして知識があるのか聞かないで欲しい。アラフォーまで独身だといろいろあるのだ。楽器が欲しいな。
「アハハ。うちは入れないでよ、エージ」
「え? 紅茶を作っているロキでーす。紅茶を淹れているセリーリアでーす。そして私が飲むだけでコレを貰っているゲルです、っていう自己紹介で笑いを取るんだけど」
「ぷ」
「あははは。何それおかしい。うひひひ。ひひ、ひ、ひ」
フレヤがちょっと噴き出しただけであったが、ロキが盛大に笑い始めた。ヤバイ。沸点が低すぎる。息が出来なくなっている。
「ロキちゃん! 大丈夫! ちょっと、変な事言わないでよエージ!」
ゲルに怒られた。ロキはゲルに抱かれながら笑っている。思い出し笑い中だ。ツボに嵌りまくりである。
「さぁご飯を食べましょう! ロキちゃんは大丈夫?」
「大丈夫れっす・・・うひひ」
フレヤが大丈夫かと聞いたのだが、ロキは駄目そうだ。メニューはいつも通りパンと紅茶、腸詰めだ。
「あれ? フレヤさん若返ってませんか・・・キャー! おめでとうございます!」
「うふふ。ありがと。ガッコと一緒になったから。そう言う事よ。ロキちゃんも早く魔力を流し合う相手を見つけないとね」
「ね、ロキ。ダンジョンの三階層は石灰質の斜面なんだろ?」
「そうよ。作物は作りにくいね」
「恐らく葡萄の畑だろ」
「あ! あ! 気が付かなかった! 葡萄にピッタリだわ! 絶対良い葡萄が出来るわよ!」
「ロキ一人じゃお茶とホップと葡萄は無理だろ? 二、三人エルフがいないかな?」
「エージ大丈夫なの?」
「ゲル、大丈夫だよ。物も順調に売れているし、お金は心配無いって」
「違うの。ロキちゃん、絶対にグループからハブられるタイプだと思うの。ロキちゃん大丈夫? うちも絶対に無理だし、エージのメイドで良かったなって」
「ゲルちゃん、やっぱりそう思う?」
ゲルが毒を吐いたぞ・・・大丈夫なのか?
「ロキちゃん、ロキちゃんと気の合う人を呼んで来てもいいよ。ご家族でもいいんじゃない」
お、フレヤから許可が出たぞ。
「結婚相手は大丈夫だぞ。そのうち俺がお見合い相手を殺到させてやるから」
「なによそれ? でもわかったわ。考えてみるよ」
「フレヤさん、俺さ、魔法文明を終わらせようと思うんだよね」
俺は先ほどガッコフルーグに話した内容を説明する。ガレンドールは危機に有り、鉄砲と大砲で武装して対抗する、という内容だ。ドワーフが何人か欲しい。
「鉄砲なるものをウチで作るのね?」
「そうです。当分は技術の開示をしたくないです」
「うん、世の中がどうなるか、エージ君はわかっているようだし、やれば良いよ。ガッコ、手紙書いてあげなよ。魔法を終わらせるか、クソ王国のエセ魔術師達を駆逐するのね。いいわ。やりましょう」
「メチャメチャお金掛かりますよ」
「いいわ。物は売れるし、家庭教師も良いお金になっているわ。正直使う当てが無いのよ。美味しい料理も、美味しいお酒も自前だしね。好きに使うといいわ。頑張ってお茶とお酒を造って、本も書いて、儲けましょう」
「ありがとうございます、みんな」
俺は皆に頭を下げた。
お読みいただいてありがとうございます。
誤字修正をいただきました。ありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします。




