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草原の話を書こう

第四十二話 草原の物語を書こう


 俺はゲルの背に乗り、海を飛んでいた。陽が傾き始めている。王国の南にガレンドールがあり、入り江になっている。ガレンドールの南は海だ。


 海は蒼く、またさざ波があかね色に輝いている。空も蒼く、雲もあかね色に染まりつつあった。

 

 ゲルに乗っても、風圧や寒さを感じられなかった。ゲルが魔法で緩和してくれているのだろう。何処まで行っても海。落ち着いたら、大海原をゲルと旅したいな、と思ってしまった。


 「ゲル、そろそろ帰ろう。今度ゆっくりと飛びたいね」


 ・・・うん。いつでもいいよ。


 ゲルは進路を反転させ、家に戻っていった。


 家の前の浜に着陸して、降ろして貰うとゲルは人の姿に戻った。


 「おーい、初飛行おめでとう! ガッコ、今日はお祝いだよ!」


 「むむ? そうなのか? エアドール殿が白龍に乗ったらお祝いなのか?」


 フレアとガッコフルーグが待っていた。フレアは笑顔で、ガッコフルーグは少し難しい顔をしている。


 「もう朴念仁だねぇ。エージ君とゲルちゃんが愛し合ったから、ゲルちゃんは背を許したのよ!」


 「む、むむ。フレヤと同じじゃな」


 「ちょっと、ガッコ止めてよ!」


 ん? あれおかしいな? フレヤさんが綺麗になっている気がする。


 「ねぇ、ゲル、俺たちのことフレヤさんにすっかりばれているけど、それは良いとしてフレヤさんが若返って綺麗になっている気がするのだけど・・・」


 ゲルは顔を真っ赤にして俺の袖を掴んでいる。


 「魔力を流したのよ。あの、お二人で」


 ゲルが俺に耳打ちしてくる。


 「?」


 俺はフレヤとガッコフルーグを見る。


 「あら、変わった? あたいはガッコと結婚するから。高位の魔法使いは魔力を流し合うことで体が活性化し、若返るのよ。ゲルちゃんももう抱いて貰ったんでしょう? じゃぁ今晩は魔力を流しながら抱いて貰うのね」


 フレヤが笑いながらガッコを叩く。


 「さっき無理矢理魔力を流されての、死ぬかと思ったぞい。喰った物を全部吐き出したからのう。死ぬ気で受け止めろとか、骨は拾ってやるとか、ベッドの上の会話と思えなかったぞい」


 「しょうがないでしょ。ガッコしか頼めないもの。若くなりたかったの。ガッコだったらめいっぱい流しても大丈夫でしょ。あたいと結婚出来るんだから嬉しく思いなさい。もう」


 やっぱり恋仲だったのか。恋仲と言うより長年連れ添った夫婦そのものだね。しかしフレヤさんは少し怖いね。


 「あの、フレヤさん、ガッコさん、おめでとうございます。うちからなにかあげたいけど、今まで散々宝を持って行かれたので勘弁してくださいね」


 因みにゲルは無一文だった。二人に身ぐるみを剥がされたのであろう。


 「それより、エージ君、竜騎士就任おめでとう。これで君が大陸最強の戦士だね。ゲルちゃんを大事にするんだよ。これをあげるから、嵌めてあげて」


 俺は真っ赤な宝石のついた指輪を受け取った。


 「フレヤさん・・・


 俺はゲルの左手薬指に指輪を嵌める。


 「エージさん、何しているの? キャー指輪!」


 ロキがやって来た。


 「ロキ。俺はゲルを幸せにするんだ」


 「ええー。ゲルちゃん、嘘よ嘘。エージさんが普通の幸せを持ってくるわけ無いわ。きっとメチャメチャな事が沢山起きる・・・付き合えるのは確かにゲルちゃんくらいかもね・・・まぁ大変だと思うけど・・・頑張ってね・・・私は写本くらいなら手伝うけど、あとは嫌よ」


 「まぁ、そうね・・・」


 俺が自信満々に「幸せにする」といったら、ロキが微妙な事をいいやがった。メチャメチャってなんだ。前にも言われたな・・・ちょっと傷付いたぞ。


 「ロキ。今、俺に創作の神が降り立った。ロキが主人公の草原物語。草原に住むエルフの少女が恋に悩むストーリー。奔放な性と、男性遍歴を重ね美しく成長していく物語。最後は恋人との別れで強く生きることを決意して終わる」


 「ちょ、ちょっと」


 ロキが動揺し始める。本当に書くと思っているのだろうか?


 「ん? 魔法少女アップルフレヤというのはどうかな? 普段は十二才の女の子。しかし魔法のステッキを振り、魔法の言葉、アップルプルプルスイーティープリティフレヤちゃん! と叫ぶと美しい女性の魔法使いに変身。衣装はフリフリの色鮮やかなメイド服。下着が見えそうで見ないのがポイント。星の彼方で懺悔してね! と言い放って必殺技を放つ、イケメン冒険者ガッコがピンチに陥ると何故が現れる魔法少女アップルフレヤ、実は密かに・・・」


 「殺すよ?」


 フレヤが俺の頭を掴んだ。ヤベ。やり過ぎた?


 「でも読んでみたい気がするわ。ほら、あんたの家庭教師先の兄妹で書きなさいよ。密かに想うのは兄だったっけ。ロキの話は出版しないからこちらも書け。名前は変えてやれ」


 「え? ちょっと、俺殺されるんですけど。超不敬だし。魔法少女アップルマーヤか・・・」


 フレヤがにやりと笑う。


 「明日許可を取ってくるんだよ? 絶対だよ?」


 「フー。私じゃないなら関係無いや。ウフフ」


 笑いながらやりとりを見守るロキ。


 「まぁ頑張ってね。エージ。完成したら一緒に飛ぼうね」


 「あれ? エージさんとロキちゃん飛ぶの? ウソォ! エージさん竜騎士じゃん!」


 「そうよ、竜騎士になって貰ったの。うちの背に乗るのはエージだけ」


 「で、王国を攻めるの? ガレンドール?」


 なんだかた物騒な話をしているぞ・・・


 「ロキちゃんわかってないわね」


 フレヤが割り込んでくる。


 「エージ君は本で天下をを取るのよ。勘違いしないでくださる? ウチのエージを嘗めないで欲しいわ」


 いつの間にか編集気取りだ・・・クソ、草原物語はモデルをフレヤにしてやる。フレヤは家から大量の羊皮紙を持ってきた。本気なのか・・・


 「さぁ早速書くのよ」


 「災難じゃのう」


 俺はガッコフルーグに慰められながら草原物語を書き始めた。主人公は町外れにすむ少女。最初に恋に落ちるのは商家の旦那。旦那は超絶な技で少女を攻め、快楽の虜にしてしまう。二人目は貴族の次男。商家の男は身を引く。次男は攻められるのが好みで、少女は技を磨いていく。三人目は次男の父親。少女から成熟した女に代わり、父親に奪われる。少女はむなしさが溢れてくる。女は普通の愛を求めていたのだ。父親から王子の筆降ろしを頼まれる。王子はまだ幼く、華奢だった。婚約が決まったが、女性経験が無いために経験が豊富な女性で子作りを教え込むのだ。


 美しい女にのめり込む王子。毎日肌を重ね合わせる。肌を重ね合わせる度に女は喜びを増していく。本当に王子が好きになってしまった。本当の愛をようやく見つけたが、実ることは無い。一年後、王子の子を宿してしまい、そっと宮殿から姿を消す女。女を捜したいが、立場上探すことが出来ない。王子は草原を行軍中、女と子供を見かけて話は終わる。


 俺は頑張った。夕方から書き始めて、夜中には書き終わった。異世界の性知識を濃厚に書ききった。因みに勝手に男が沸いて出て恋に落ちてしまうのはその辺のスキルが俺には無く、仕方が無いであろう。


 ガッコフルーグは寝てしまったが、フレヤ、ロキ、ゲルまでもが興奮しながら原稿を読んでいる。エロい話だったから頑張ってしまった。


 「なるほど、殿方をこうやって攻めるのか・・・知らなかった・・・私キスしただけで振られたしね・・・魔法が使えない頭が弱い子ってね・・・」


 ロキの過去をほじくってしまったようだ。


 「どうして、最後別れるの? 嘘でしょ!? 運命って残酷」


 ゲルがこんなクソエロ小説で泣き始めた。おかしくないか?


 「て、天才だわ。モデルがあたいっぽいけど許してあげるわ。鼻血がでるわね。凄いわ。天才よ。何とかして出版したいわね」


 無理ですよ。絶対に出版できないから。


 俺は眠くなり、ゲルと一緒に眠った。もちろん興奮していたため、二人で愛し合ったことは仕方が無いであろう。


 朝起きると、フレヤとロキが目を真っ赤にして原稿を読んでいた。世界で初めてエロ小説で徹夜した女に認定だ。


 さぁ、今日は家庭教師だ。頑張ろう。朝食をモリモリと食べる。


 「皆さんおはようございます! エージ様、ゲルちゃん今日も頑張りましょう!」


 一人爽やかなセリーリアが現れた。エロの澱みに咲く花の様だ。うん。セリーリアは清らかであって欲しい。


 「セリーリアちゃん、この袋、帰ったら開けてみて。絶対よ」


 「わかりました!」


 セリーリアはフレヤから原稿の入った袋を手渡された。嘘だろ。

お読みくださってありがとうございます。

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