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Iteration 02 Part 1: Partner 仲間

ーー死ねば、すべて巻き戻る。

孤独な「ソロ」の戦いで呆気なく命を落としたミナが、再び目を覚ました場所。そこは、最初の森とは異なる、荒廃した灰色の都市だった。

混乱する彼の前に現れたのは、首元に鮮やかな赤いスカーフを巻いた少女・リオ。

「よろしく、相棒くん」

何もかもを忘れて絶望に抗う少年と、自分の死すら笑い飛ばして「生」を渇望する少女。

本来なら交わるはずのなかった二人の境界線ラインが、システムの手によって強制的に結ばれる。

ループの地獄を一人往くミナに訪れた、初めての『変奏デュオ』。

彼女を守るため、少年は3秒後の未来を書き換える。

 眩い光が収まり、僕は目を開けた。

 そこは荒廃した都市。崩れ落ちたビル群、砕け散ったガラス、風に舞う灰色の砂塵。

 先ほどの森とはまるで違う、乾いた世界だった。


「……また、始まったのか」


 息を呑む。

 前のループで“死んだ”感触が、まだ腕の奥に残っている。

 胸の鼓動が早まる。あの痛みを、二度と味わいたくない――そう思った矢先。


「およ? 君はスナイパーライフルかぁ。私もスナイパーライフルなんだよね、偶然じゃん」


 背後から軽い調子の声。女の声だ。


 慌てて振り向くと、ビルの陰から一人の少女が現れた。

 肩までの黒髪に破れたコート。首元には鮮やかな赤いスカーフ。

 笑顔を浮かべているのに、その瞳だけは氷のように冷たかった。


「……誰だ、君は」


「え、自己紹介まだ? そっか、“デュオ”だからね」

 少女はひらりと手を挙げて笑った。

「私はリオ。よろしく、相棒くん」


「相棒……?」


 言葉を反芻した瞬間、視界の端に透明なウィンドウが浮かんだ。

 〈チーム登録完了:MINA/RIO〉

 〈残り生存者:40(チーム数:20)〉


 ――やはり、“あのゲーム”がまた始まっている。

 ただ、今回は僕は一人じゃない。


「で、どうする? 始まったばっかだけど、もう狙撃ポイント決めとく?」

 リオは軽い声で言いながら、ボロビルの屋上を見上げた。

 まるでこの状況を、少し楽しんでいるように。


「……楽しそうだな、君は」


「うん。だって、どうせ死ぬなら笑ってたいでしょ?」


 一瞬、その言葉の裏に何か深い影を見た気がした。

 でも僕はそれを追及できなかった。

 風に揺れる赤いスカーフが、やけに鮮やかに見えたからだ。


「ミナっちは、なんでこのゲームに参加したのかな?」


 不意にリオが尋ねた。

 僕は言葉を失う。――そんなこと、僕が知りたい。


「こんなゲーム、参加したくなんかない。

 でも……何故、させられてるんだ……!」


 思わず声を荒げた。神経が擦り切れているのが自分でも分かる。

 けれどリオは、どこか不思議そうな顔で僕を見ていた。


「え? だってミナっちも“生き返る”ために闘ってるんでしょ?」


「……生き、返る?」


「このバトルロワイヤルで優勝すれば、生き返れる。

 この世界に来た瞬間、そう説明されたでしょ?」


 ――そんな記憶は、ない。

 いや、“説明された”という感覚すら存在しない。


「……生き返るって……まるでここにいる全員が、死んでるみたいな言い方だな」


「なーんだ、ちゃんと理解できてるじゃん!」

 リオは悪戯っぽく笑った。

「このゲームの参加者は、みんな一度“現実で死んだ人間”。

 勝てば、現実に戻れる。負ければ――永遠に、ここに残るだけ」


 その言葉が落ちた瞬間、時間が止まったように感じた。

 風が砂を巻き上げ、遠くでビルが崩れ落ちる音が響く。

 胸の奥に、鈍い痛み。


 ――現実で死んだ人間?

 じゃあ僕は……?


「……なぁ、リオ」

「ん? どうした、相棒くん」


「……君、これが“初めて”なのか?」


「え? そりゃそうでしょ? この“デュオバトロワ”は一発勝負だし。

 死んだらそれで終わり。リトライなんて――できるわけないじゃん」


 笑いながら言うその声が、妙に遠くに聞こえた。

 喉が焼けるように乾く。


「……そっか。じゃあ、やっぱり……君は、ループしてないんだな」


「ループ?」


リオは首を傾げた。


 「なにそれ、新しいスキル名? 隠しスキルとか?」


 軽口を叩く彼女を見て、僕は何も言えなかった。

 ――僕だけが、この地獄を何度も繰り返している。

 その確信が、胸の奥に静かに根を下ろしていった。


「まぁいいや! とりあえず狙撃ポイント探そっか!」


 このまま話しても状況は変わらない。

 僕はリオについて行くことにした。


「君は……」


「リオでいいよ。“ちゃん”付けでもいいよん」

 ニヤニヤしながら彼女は僕をからかう。


「リオは……この現実世界について、何か知っているのか?」

 “生き返るため”ということは、ここは現実ではない――そう思ったからだ。


「ミナっちよりかは知ってるかもね〜」


 リオは肩をすくめて笑った。


「この世界は、“記録庫アーカイヴ”って呼ばれてる。


 死んだ人の意識データを再構成して、試験的に生存条件をシミュレートしてるんだって。

 ――ま、要するに、あの世のβテストみたいなもんだよ」


 “記録庫アーカイヴ”。

 どこかで聞いたような、けれど記憶にない単語。

 頭の奥で微かなノイズが走る。


「……それを、誰がやってるんだ?」


「さぁ? “管理者”とか、“観測者”とか呼ばれてる存在らしいけど。私は会ったことないよ。ただ――」


 リオは言葉を切り、空を見上げた。

 黒い雲の隙間から、電子的なノイズのような光が走る。


「―― 一度だけ、夢の中で“誰か”に言われたことがあるんだ」


「なんて?」


「“選ばれた魂だけが、再起動を許される”って」


 その言葉を聞いた瞬間、僕の中の“メーター”が微かに脈打った。

 青い光が、確かに少しだけ伸びていた。


「……リオ、その言葉、どこで――」


 問いかけようとしたその時、遠くの廃ビル群から銃声が響いた。

 リオは反射的に地面へ滑り込み、スコープを構える。


「――交戦中のチームだ。方角、北東。距離300」


 瞬間、彼女の瞳が獣のように鋭く光った。

 軽口を叩いていた彼女の中に、もうひとつの顔が覗く。


「ミナっち、初陣だね。死にたくなければ、ちゃんと私の後ろに隠れて」


 ビルの影に潜り込みながら、僕は思った。

 この少女――ただのプレイヤーじゃない。

 どこかで、僕と同じ“異常”を抱えている。


 そしてその予感は、この後すぐ、現実になる。


 次の瞬間、僕のエコー・ビジョンが発動した。

 ――視界が、白く弾ける。


 “3秒後に、リオが撃たれる”


 最初の僕みたいな目に合わせたくない、何よりも初めてのパートナーを失うわけにはいかない…何故だろうか不思議と守らなきゃという感情がこみあがってくるのを感じた。


「リオ、ごめん!」


 僕は咄嗟にリオの手を引っ張り地面に押し倒すことになった。


「ヒェッ!?」


 リオは僕の咄嗟の行動に驚いた、しかし未来視通りさっきリオが立っていた場所に銃弾が数発着弾した。


「リオ、僕らはどちらもスナイパーだ1回ここは逃げてポイントを探そう」


 僕はリオを起き上がらせ手を引っ張り、狙撃ポイントを探した、道中で撃たれることはなかった。


「ちょっと〜、ミナっちたら大胆〜。

 女の子をいきなり押し倒すなんて、タイミング選びなよ〜」


 リオは冗談めかして笑ったが、その手は微かに震えていた。

 さっきの銃弾が、どれほど致命的だったかを理解している証拠だった。


「……悪い。けど、君が撃たれる未来が見えたんだ」


「未来が……見える?」


 リオが眉をひそめる。

 僕は言葉を選びながら頷いた。


「僕は…ループしてるかもしれないんだ、このデスゲームを、未来が見えたのは最初のループで未来が見える能力に気づいたからなんだ」


「へぇ……面白いね」


 リオはそう言って、少しだけ真剣な目をした。


「でもさ、それなら――次も助けてよ。どうせ私、一発勝負なんだから」


 その笑顔が、どうしようもなく儚く見えた。


「そこまでして生き返りたい理由があるんだな」


「まぁね、君も生き返りたい理由あるんでしょ?」


 リオの軽口に、僕は息をのんだ。

 “生き返る”――その言葉が、今の僕を動かしている。

 この試合に勝てば、ループも終わり、現実に戻れる。

 そう信じている。いや、信じるしかない。


「……ある。必ず勝って、生き返る。そうすれば全部終わるんだ」


「へぇ、頼もしいじゃん」


 リオは笑って、スコープを覗き込んだ。

 その横顔はどこか寂しげで、でも強かった。


「だったら私も、君の勝利に賭けるよ。――だって相棒だもん」


 ビルの間を、灰色の風が吹き抜ける。

 僕は銃を握り直した。

 “この戦いに勝てば、全てが終わる”――その幻想を信じながら。


  Iteration 02 Part 1 : Partner 仲間 ━ end

過去に書いたやつの2話目です、読んでくださりありがとうございます!

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