Iteration 01:Lost Memories 失われた記憶
目覚めると、そこは現実世界の「死者」たちの consciousness(意識データ)が集められた終の記録庫。
与えられたのは一丁の銃と、理不尽なバトルロワイヤル。
勝者に与えられるのは「現実への生還(再起動)」。敗者に待つのは「存在の完全消去」。
記憶を失った少年・ミナは、3秒後の自身の死を予知する奇妙な能力『エコー・ビジョン』だけを頼りに、孤独な戦いへと身を投じる。
しかし、そのデスゲームは「一度きり」ではなかった。
死ねば再び、あの黒い空間へ。
リトライを繰り返すたびに、なぜか変化していく武器、変動するゲームモード、そして――増えていく「仲間」たち。
「どうせ死ぬなら、笑ってたいでしょ?」
それぞれが胸に抱く、切実な「生きたい理由」。
それらが重なり、交わるとき、記憶を持たない少年の冷めきった生存本能は、いつしか「誰かを守りたい理由」へと変貌していく。
何も感じないまま、僕は目を覚ました。
頭の中は真っ白で、名前も、昨日のことも、何ひとつ思い出せない。
ただ、この状況が自分にとって“好ましくない”ということだけは、なぜか分かっていた。
周囲を見渡すと、世界は真っ黒だった。
空間に浮かぶ電子モニターだけが、ぼんやりと青白く光を放っている。
そこには謎のカウントダウンと――
「ソロバトルロワイヤル」
――という文字が、無機質に点滅していた。
体を動かしてみると、手にはアサルトライフルが握られている。
心臓が跳ねた。
何も覚えていないのに、“生き残れ”という本能だけが確かに胸の奥で鳴っている。
そういえば、ただ一つ――
絶対に思い出さなければいけないことがある。
それは、僕の名前だ。
「僕は……僕は………ミナ。僕の名前は、ミナだ。」
その瞬間、遠くで電子音が鳴った。
だが、それ以上を思い出そうとしても、頭の中はノイズにかき消されるばかりだった。
モニターから、無機質な声が流れる。
“エントリーが正式に認められました。登録名:ミナ。種族:人間。スキル:不明。
チーム構成:ソロ。参加人数:60名。
勝利条件:最後の一人になるまで生き残れ。”
「……最後の一人まで、生き残れ……?」
言葉を反芻した瞬間、胸の奥がざわついた。
記憶がなくても分かる。
――これは、“戦い”の始まりだ。
“ゲーム開始まで20秒前。これより戦闘エリアへ転送カウントダウンを開始します……10、9、8――”
何が起こるのかも分からない。
ただ、直感だけが「もう戻れない」と告げていた。
“……3、2、1――Game Start.”
カウントがゼロになった瞬間、視界が真っ白に弾ける。
眩しさに目を閉じ、次に開けた時――僕は森の中にいた。
湿った土の匂い。風に揺れる木々の音。
さっきまでの黒い空間が幻だったかのように、世界はあまりにも現実的だった。
その時、視界の片隅に下向きの矢印アイコンが浮かび上がる。
指で触れると、透明なパネルが展開された。
そこにはプロフィールらしき情報と簡易マップ、そして――
「残り生存者:60」
という文字。
だが、最も気になったのは画面の隅にあった“謎のメーター”だった。
薄く青く光るバーは、今は空っぽのまま。
意味は分からない。
けれど――直感的に“これは僕の何かを示している”と感じた。
風が止まり、森が静まり返る。
まるで、世界全体が“次の行動を見ている”ような気がした。
「……スキル、エコー・ビジョン。スキル詳細を――」
そう呟いた瞬間、頭の奥に映像が流れ込んだ。
視界いっぱいに広がる銃弾の雨。
それを避けきれず、倒れていく“僕自身”の姿。
あまりにもリアルすぎて、吐き気を催した。
「……気味が悪い幻覚だ……」
そう口にした瞬間――轟音が鳴り響く。
ほとんど同時に、何かが僕の身体を貫いた。
「――っ!?」
焼けるような痛み。温かい感触。
出血とともに、視界がぐにゃりと歪む。
理解するのは一瞬だった。
あの轟音は銃声、僕を貫いたのは――弾丸。
けれど、そんなことを悟った頃にはもう遅かった。
――再び、何も感じない“無”の時間が流れた。
ただ、先ほどとは違う。
今の僕には、ほんの少しだけ考える余裕があった。
「あれは……幻覚じゃない。僕に起こりうる未来……?」
その言葉を思い浮かべた瞬間、再び目が覚めた。
暗闇。見慣れたはずの、あの黒い空間。
「……はぁっ!? 僕は、死んだはずじゃ……!」
混乱する頭の中で、ひとつだけ確かな感覚があった。
“撃たれて死んだ”という記憶だけが、確かに残っていたのだ。
モニターが再び現れ、淡い光を放つ。
だが、そこに映し出された文字は――前とは違っていた。
「デュオバトルロワイヤル」
「……デュオ?」
最初は“ソロ”だったはずだ。
そして、違和感はそれだけではない。
手を見ると、握っているのはアサルトではなく――スナイパーライフルだった。
「……武器まで違う……?」
スキルも変化しているのか。
そう思い、意識でプロフィールを呼び出す。
透明なパネルが再び浮かび上がり、スキル欄には変わらず【エコー・ビジョン】の文字があった。
今度こそ、詳細を確認する。
【スキル “エコー・ビジョン”:
自身の3秒後の未来に“命の危機”が訪れるとき、
その光景を脳に直接再生する。】
――やはり、あれは“未来視”だったのか。
あの銃撃の瞬間は、スキルによる警告だった。
だが、その下にはもうひとつ、見慣れない項目が追加されていた。
スキル名も詳細も、すべてが文字化けしている。
「スキル名:▌ー▉▉▌▉
スキル詳細:�����」
読めない。だが、“存在している”ことだけは確かだ。
その意味を考えるより先に、もう一度あのメーターを確認した。
――微かに増えている。
ほんのわずかに、青い光が伸びていた。
何を条件に動くのか分からない。
けれど、それが“何かの進行”であることは、直感的に理解できた。
“今回のルールを確認してください。
チーム構成:デュオ。参加人数:40名(20チーム)。
ゲーム開始まで残り30秒。”
「……今度は、仲間がいるのか……」
息を呑む。
新しいルール、新しいモード、そしてわずかに進んだ謎のメーター。
また――ゲームが始まる。
“残り10秒です……3、2、1――Game Start.”
再び、視界が真っ白に弾けた。
世界が切り替わるような感覚とともに、命懸けの“次の試行”が始まろうとしていた。
Iteration 01 : Lost Memories — end
読んでくださりありがとうございます!
過去に書いてて没になったやつです、気分次第で続き書く予定です。
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