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目指すは深層、まずは腹ごしらえから! 〜現代知識と【拠点創造】で始める、前人未到の大迷宮スロー攻略記〜  作者: 盆ちゃん


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第206話:【閑話】絶対同盟と黄金の雫、そして果てしなき『旨味』への渇望

### 第206話:【閑話】絶対同盟と黄金の雫、そして果てしなき『旨味』への渇望

アルカディア王国の『星繋ぎの迎賓館』、最上階の大宴会場。

その夜、絶対同盟のトップたちや転生者たちは、いつになく「妙な緊張感」に包まれていた。

「(……おい、太一。トウヤさんたち、今日はミズホの迷宮に突入したんだよな?)」

ミリオタのケンタが、隣に座る魔王ゼノン(太一)に小声で尋ねる。

「(ああ。エルドリアの100階層ダンジョンを数日で駆け抜けた連中だ。今日の報告会では、最低でも第30階層くらいまでの『極上ボス肉』が並ぶと思って、昼から胃袋を空っぽにしてきたんだが……)」

彼らの目の前の円卓には、いつもなら山のように積まれているはずの「巨大な肉塊」や「ド派手な大皿料理」が存在しなかった。

置かれているのは、一人につき一つずつの【黒漆塗りの上品なお椀】と、小皿に乗った【出汁巻き卵】だけである。

そこへ、厨房からエプロン姿のトウヤが、満足げな笑みを浮かべて現れた。

「みんな、待たせたな。今日の『和の国ミズホ・遠征初日』の報告会を始めるぜ」

「(トウヤ殿! 待ちわびましたぞ!)」

ガルド宰相が身を乗り出す。

「(して、今日は第何階層まで進まれたのですかな!? どんな巨大海鮮を仕留めてこられたので!?)」

トウヤは、ニカッと笑って指を一本立てた。

「(第1階層の、入り口から100メートル地点だ。魔物との戦闘はゼロだぜ)」

「「「…………はい?」」」

絶対同盟の面々が、ポカンと口を開けた。

かつて、初見の迷宮を一日で40階層分も蹂躙した最速の攻略パーティーが、「100メートルしか進んでいない」と言うのだ。

「(な、何か恐るべき結界でもあったのですか!? それとも、トウヤ様たちでも苦戦するような神話級の罠が……!?)」

エルドリアの若き皇帝が青ざめる。

「(ガッハッハ! 苦戦といえば苦戦じゃな! 【極上の食材を一切傷つけずに見つけ出す】という、神様が仕掛けた恐るべきギミックにな!)」

ガレスが豪快に笑いながら、トウヤの横に巨大な寸胴鍋をドンッ! と置いた。

「(……驚くのも無理はない。だが、俺たちが立ち止まった理由はこれだ。今日一日かけて、第1階層の『竹林』を完璧な角度で伐採して集めた、この迷宮の【真の報酬】を味わってくれ)」

トウヤが合図をすると、メイドたちが円卓の全員の前に置かれた「お椀」の蓋を一斉に開けた。

### 【宇宙を内包する雫:『黄金の出汁』の試食会】

パカッ。

蓋が開いた瞬間、宴会場の空気が【静寂】に包まれた。

エルドリアの古代ロースト肉のような暴力的な香りでも、魔国の激辛スパイスのような刺激的な匂いでもない。

それは、どこまでも深く、優しく、そして魂の奥底を直接揺さぶるような【究極の旨味ダシ】の香りだった。

「(こ、これは……!?)」

ヴィルヘルム国王が、震える両手でお椀を持ち上げる。

**【本日の極上メニュー】**

* **神座しんざの竹林より湧き出でし『黄金の出汁』のシンプルお吸い物**

* (※具材は一切なし。ほんの僅かなミズホ産の塩と、一滴のカイト特製・魔力回復醤油のみで味を調えた究極のスープ)

* **『黄金の出汁』を限界まで巻き込んだ、特製・ぷるぷる出汁巻き卵**

お椀の中には、透き通るような黄金色の液体が、シャンデリアの光を反射してキラキラと輝いている。

「さあ、冷めないうちに飲んでみてくれ。これが、神様が俺たちに用意してくれた『神界ルート用の超絶ハードモード』の答えだ」

言われるがまま、絶対同盟の王たち、そして転生者たちが、お椀に口をつける。

ズズッ……。

「――――ッッ!!!」

その瞬間、ヴィルヘルム国王の目から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「(な、なんじゃ、この優しさは……!! 口に含んだ瞬間、数百年かけて熟成された『昆布』のような圧倒的な深みと、極上の『鰹節』のような華やかな香りが、荒れた胃袋と魂を優しく撫で回してきおる……!! 味が……味が、宇宙のように広がっていくゥゥゥッ!!)」

「(信じられない……肉の脂も、強いスパイスも入っていないのに……こんなにも【美味い】と感じるなんて……!)」

魔王ゼノン(太一)が、お椀を持ったまま硬直している。魔界の強烈な味付けに慣れきっていた彼の舌に、「旨味(UMAMI)」という新たな概念が雷のように直撃していた。

「(あぁぁ……トウヤさん……トウヤしん……!!)」

誰よりも号泣していたのは、和の国の賢者・カイトであった。

彼は、出汁巻き卵を一口食べた瞬間、椅子から崩れ落ちて床に突っ伏した。

「(俺が苦労して作った『醤油』のポテンシャルが……この黄金の出汁と合わさることで、ついに限界突破した!! 卵の甘みと、出汁の旨味、そして醤油の香ばしさ……!! 俺の故郷チキュウの和食は……異世界で神の領域に到達したんだァァァッ!!)」

「(ヒャッハー! この出汁巻き卵、噛む前から口の中で溶けて、旨味の爆弾が弾けやがるぜ!! 酒だ! これは熱燗が無限に飲めるヤツだ!!)」

「(ああ……心が洗われますわ……。神様は、私たちにこの安らぎを与えたかったのですね……)」

ジンが叫び、エリスが恍惚とした表情で頬を染める。

宴会場は、いつものような「熱狂と狂乱」ではなく、深い感動と浄化の涙に包まれていた。

たった一杯の「具のないスープ(出汁)」が、世界を統べる王たちの心を完全に掌握したのである。

### 【次なる神々しい食材への『絶対的期待』】

「(……トウヤ殿)」

ヴィルヘルム国王が、お椀を一滴残らず飲み干し、深く息を吐き出してから顔を上げた。

「(これが……第1階層の、ただの『背景の竹』から採れたというのか?)」

「(ああ。特定の歩法と、ミリ単位の切断角度を守った時だけ湧き出してくる『隠し食材』だ。……普通に駆け抜けたら、ただの硬い竹で終わってた)」

トウヤが頷く。

「(……なんという恐るべき迷宮……いや、なんという【宝物庫】だ!)」

ガルド宰相が、興奮で顔を紅潮させて立ち上がった。

「(第1階層の背景ギミックで、これほどの至高の味が隠されているのであれば! 第50階層や、第100階層のボス……そしてその先にあるという『未踏の大陸』には、一体どれほど神々しい食材が眠っているというのだ!!)」

宰相の言葉に、円卓の全員がハッとして息を呑んだ。

「(……確かに! この黄金の出汁で煮込んだ『未知の巨大海鮮』……!)」

「(この出汁で作った『究極の海鮮鍋』……! 想像しただけで、ヨダレで溺れそうですわ!!)」

「(エルドリアの古代オーブンで焼いた魚に、この出汁をかけたら……!)」

彼らの脳内に、【まだ見ぬ究極の和食フルコース】のビジョンが鮮明に浮かび上がる。

もはや、「攻略が遅れる」ことへの不満など誰一人抱いていない。むしろ、「1ミリたりとも見逃さずに、すべての隠し食材を回収してきてくれ」という、狂気的なまでの期待と食欲が宴会場を支配していた。

「(トウヤ殿! 我ら絶対同盟は、貴殿らの『舐め回し探索ツアー』を国家の総力を挙げて支援する!! 必要な物資があれば何でも言ってくれ! だから……どうか、その迷宮の【本当の美味さ】を、一つ残らず我々の食卓に届けてくれ!!)」

エルドリア皇帝が、身を乗り出して懇願する。

「おう! 任せとけ!!」

トウヤは、空になったお椀を片付けながら、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「神様が仕組んだ『超絶ハードモード』。……俺たちの異常な執念(食欲)と、この最強の仲間たちの力で、隅から隅まで完璧に解き明かしてやる。……明日は第2階層の『幻の巨大キノコ』と『隠し海苔』の回収だ! みんな、胃袋の準備運動をしといてくれよ!!」

「「「ウオォォォォォォォォォォォッッ!!!!(いただきますッ!!)」」」

静寂と感動に包まれていた宴会場は、再び爆発的な歓声と熱狂に包まれた。

ただの「攻略」は終わり、神すらも巻き込んだ【究極の食材探し(トレジャーハント)】が幕を開けた。

世界最高峰の出汁の味を知ってしまった彼らの欲求は留まることを知らず、悠久の踏破者たちによる「世界一丁寧で強欲な迷宮探索」は、絶対同盟の底なしの期待を背負いながら、明日からも果てしなく続いていくのであった。


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