第1話:嘲笑のギルドと、大迷宮への第一歩
∥д・)ソォーッ…ドモドモ(・ω・影)ゞ影盆こと盆ちゃんです。(* ˊ꒳ˋ*)さて、50話分下書きサイトに載せたので今から3話から5話投稿します。流れ次第では今日でもう少し載せるかも(* ˊ꒳ˋ*)でわ、皆さんが楽しめれば幸いです┏○ペコッ
第1話:嘲笑のギルドと、大迷宮への第一歩
「ぶっ! なんだそのスキル? 『拠点創造』? そんな非戦闘スキルで、あの迷宮を探索しようってのか!?」
冒険者たちが集う活気ある大国、アルカディア王国の王都に構える、広大な冒険者ギルドの喧騒。その中心で、下品な嘲笑が響き渡った。
声の主は、いかにも歴戦といった風貌の戦士。周囲の冒険者たちも、登録カウンターの前に立つ青年――トウヤを見て、クスクスと小馬鹿にしたような笑いを漏らしている。
「悪いことは言わねえ。日帰りか数日の野営で浅層のアイテムを拾って帰る、いつもの『金策』にしとけ。踏破を目指すなんて、命がいくつあっても足りねえぞ?」
忠告という名の優越感に浸る男の言葉を、トウヤはただ静かに聞き流していた。
(……テンプレ通りの洗礼、痛み入ります。でも、前世の理不尽なクレーマーや、終電間際の無茶振り上司に比べれば、なんてことないな)
トウヤは、元・現代日本のしがないサラリーマンである。過酷な労働環境のストレスを、週末の「ソロキャンプ」と「こだわりのキャンプ飯」で癒やすのが唯一の生きがいだった。そんな彼が不慮の事故で命を落とし、この世界に転生して真っ先に感じたこと。
それは、「異世界の迷宮探索は、前世のブラック企業より環境が劣悪である」という絶望的な事実だった。
固くて不味い携帯食。ゴツゴツとした冷たい岩肌での仮眠。いつ魔物に襲われるか分からないという極限の睡眠不足。これでは、数十年間誰も踏破できていないとされる全100階層の『悠久の大迷宮』の攻略など夢のまた夢だ。
だからこそ、彼は己に与えられた特有スキル【拠点創造】と現代の料理知識をフル活用し、スローペースでも快適に、着実に深層を目指す「探索メイン」の冒険者になることを決意したのだ。
「ご忠告どうも。でも、俺は俺のやり方でやらせてもらいますよ」
トウヤは我関せずの涼しい顔でギルドカードを受け取ると、嘲笑の渦を背にして真っ直ぐにギルドを後にした。
***
王都の郊外。天を突くようにそびえ立つ、巨大な遺跡の入り口。
それが『悠久の大迷宮』の入り口だった。
一歩足を踏み入れると、ひんやりとした湿った空気が頬を撫でる。苔むした石造りの通路は薄暗く、どこからともなく魔物の低い唸り声が反響して聞こえてきた。通常の冒険者なら、ここで極度の緊張状態に陥り、肩に力が入るところだろう。
だが、トウヤの心臓は別の意味で高鳴っていた。
(よし……まずは最初のキャンプ地を探そう)
しばらく第1階層を警戒しながら進み、通路から少し外れた袋小路の小部屋を発見する。トウヤはリュックを下ろし、ふと息を吐いた。
「記念すべき大迷宮での初キャンプだ。設営の前に、改めて俺の初期手札を確認しておくか。……『ステータス・オープン』」
空中に向かって指をスライドさせると、半透明の青白い光の板――ステータスボードが浮かび上がった。
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【名前】 トウヤ
【種族】 人族
【年齢】 20
【職業】 探索者
【レベル】 1
【HP】 30 / 30
【MP】 20 / 20
【筋力】 E
【敏捷】 E
【耐久】 E
【魔力】 E
【固有スキル】
・拠点創造 Lv.1(基礎結界、極小テント設営、小型魔力コンロ)
・異空庫容量拡張 Lv.1(冷蔵・保温機能あり)
【戦闘スキル】
・短剣術 Lv.1
・弓術 Lv.1
・従魔術 Lv.1(※特殊条件:胃袋掌握)
【生活・生産スキル】
・解体術 Lv.1
・現代調理術 Lv.MAX(異世界食材補正)
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「見事なまでの最低ランクの身体能力だな。これじゃあ、ギルドの連中が笑うのも無理はない」
ステータスボードを眺めながら、トウヤは肩をすくめた。筋力も敏捷もオールE。まともに正面から魔物と殴り合えば、第1階層の雑魚相手でも苦戦は免れないだろう。
だが、彼の視線は戦闘系の項目ではなく、固有スキルと生活・生産スキルの欄に注がれていた。
「初期レベルの段階で、異空庫に冷蔵と保温の機能がついてるのは本当にデカい。それに……前世の趣味が反映されたのか、『現代調理術』がいきなりレベルMAXだ。しかも異世界の食材にも対応してるなんて、至れり尽くせりだな」
そして、一つだけ異彩を放っている戦闘スキル【従魔術】の注意書きに目を留める。
「『特殊条件:胃袋掌握』って……要するに飯で釣れってことか? 魔物を相手にどうやって飯を食わせるのか謎だが、まあ、いつか役に立つ時も来るだろう」
トウヤは満足げに頷き、ステータスボードを閉じた。
前線で剣を振り回す気など毛頭ない。彼が目指すのは、遊撃と安全地帯の確保を徹底した「絶対に無理をしない」探索だ。そのための要となるスキルを、今こそ発動させる。
「さあ、始めよう。――【拠点創造】!」
淡い光が広がり、入り口を塞ぐように見えない結界が展開される。これは魔物を絶対に寄せ付けない安全地帯を生み出す、彼の最大の強みだ。
続けて、異空庫からマジックテントと愛用の調理器具を取り出し、手際よく設営していく。あっという間に、冷たく薄暗い迷宮の一角が、外界の脅威から完全に隔離された快適なパーソナルスペースへと早変わりした。
「よし、完璧だ。……まずは、腹ごしらえからだな」
トウヤは小型の魔力コンロに火を灯し、厚手のスキレット(鋳鉄製のフライパン)を熱する。
異空庫の冷蔵スペースから取り出したのは、王都の市場で仕入れた分厚いオーク肉のブロックと、新鮮な卵だ。
熱されたスキレットに油を敷き、大きくカットしたオーク肉を投下する。
ジューッ!!
迷宮の静寂を切り裂くような、暴力的なまでに食欲をそそる焼き音が響き渡った。
表面がカリッと香ばしく焼け、溢れ出した肉汁が脂と絡み合い、極上の匂いとなってテント内に充満する。そこに現代知識を活かして調合した特製のスパイス(粗挽きの黒胡椒とハーブ塩)を振りかければ、もはや抗うことのできない香りが完成する。
仕上げに、空いたスペースへ卵を落とし、半熟の目玉焼きを添えれば、トウヤ特製「オーク肉の厚切りペッパーステーキ〜目玉焼き乗せ〜」の完成だ。
「いただきます」
ナイフを入れると、ルビー色の美しい断面から肉汁が滴り落ちる。大きく口に放り込むと、オーク肉の野性味あふれる強烈な旨味と、スパイスのピリッとした刺激が脳を直撃した。すかさず半熟の黄身を崩して肉に絡めれば、まろやかなコクが加わり、さらに一段上の次元へと味が昇華する。
「……最高だ。これなら、何日でも潜っていられる」
不味い携帯食で胃を痛める他の冒険者たちが見たら、卒倒しかねない光景。
初期レベルの貧弱なステータスと、誰も見向きもしない非戦闘スキル。しかし、彼にとってはこれが最強の武器なのだ。
誰も成し遂げたことのない前人未到の大迷宮の踏破。その偉大なる道のりは、この極上の「飯テロ」と快適な空間から、静かに、そして確かに幕を開けたのだった。




