37話 ドラゴンテイマーvs爆炎のアイル
普段通り、皆と猫精族の集落で眠っていた深夜。
──ゴォン! という爆発音が夜のしじまに轟いた。
「に、にゃぁっ!? に、にゃに!?」
「……」
ロアナが猫耳をピクピクさせながら飛び起きた傍、熟睡を続けているミルフィは予想以上に神経が太いらしかった。
そして俺も起きて窓を覗けば、竜の国の端……アイルを捕らえていたあたりから爆炎が広がっているのが見えた。
『あの場所は……まさか!?』
「ああ、きっとそのまさかだ!」
ルーナと一緒に急いで集落を飛び出し、アイルを捕らえていた場所に向かう。
すると木々をなぎ倒しながら、二体のダークリーパーという幽霊のような魔物が現れた。
奴らは影に潜む隠密型の魔物だが、まさか竜の国に入り込んでいたとは。
しかもその二体にはミルフィの首にもあった隷属の首輪が嵌められていた。
「隷属の首輪……ってことは!」
「妾、復活ッ!!!」
盛大な爆発を起こして周囲の木々を薙ぎ払いながら現れたのは、魔王軍四天王、爆炎のアイルその人だった。
「なるほどな。潜ませていた二体のシャドウリーパーが俺の封印術を解除したのか!」
「全く、見張りの古竜たちの目を盗んで抜け出すのは苦労したぞ。とはいえ奴らも、妾の爆炎で吹っ飛ばして来たがな」
ふぅとため息を吐くアイルに、ルーナが食ってかかるように言った。
『戯言を。我らが住処を炎で焼き払うその傲岸なる所業、その身で償わせてくれます!』
古竜の姿になったルーナがすかさずブレスを叩き込もうとするが、アイルは腕を振りかざして魔力を操作した。
すると一瞬でルーナを炎の檻が包み込み、その動きを封じてしまった。
『これは魔術ではなく、魔法ですか……!?』
「古竜の姫君、その中では暴れても無駄だ。何より内部の魔力を一切遮断するその檻の中ではブレスも放てぬ」
どうにか檻を突破しようとするルーナを尻目に、アイルが好戦的な笑みを浮かべた。
「そこで大人しく見ているがいい。貴様の大切にする相棒が、妾の爆炎に焼かれるところをな。……人間の男よ! 妾をあのような無骨な鎖で縛り上げたその無礼、我が爆炎の中で悔いるがいい!」
『レイド、逃げてください! 彼女は危険です!』
ルーナの悲鳴にも似た声と同時に、アイルは瞬時に手のひらに魔力を集めて爆炎の火球を放ってきた。
魔法陣なしに魔力を練って炎を操れる点から、ミルフィと同じく、やはりアイルも魔法を得意とするらしい。
流石は古の魔王軍四天王といったところか。
そして魔法は魔術と違い魔法陣を展開する必要がないため、詠唱もなしにノータイムで発動できる。
圧倒的な早業だが、距離も離れているので着弾まではわずかな猶予がある。
「封印術・竜縛鎖!」
俺は封印術を起動し、魔法陣から現れた鎖を自分の両腕に巻きつける。
そのまま鎖を巻きつけた右腕を振りかぶって、殴りつける要領で火球を粉砕した。
……正確には、腕にある封印術の鎖で魔力炎を無効化したのだ。
「なっ、妾の火球を人間ごときが!?」
『レイド……!』
アイルもルーナも目を見開いているが、そんなに驚くことでもない。
卓越した封印術は魔物の動きだけでなく、あらゆる魔力を抑えて無効化する。
加えて魔術も魔法も、所詮は魔力操作によって引き起こされる現象だ。
魔力を行使している以上、俺の封印術で無効化できない道理はない。
「ドラゴンすら縛れるドラゴンテイマーの封印術には、こういう使い方もあるって訳だ!」
「竜の世話係風情が、よもやよもやだ……!」
疾駆する俺へ向かい、アイルは焦った表情で二体のダークリーパーを差し向けてくる。
だが、肉体を持たない幽霊型の魔物であるダークリーパーは魔力の塊だ。
俺の封印術で簡単に捕らえられる。
「封印術・蛇縛鎖!」
二体のダークリーパーへと封印術の鎖を伸ばして動きを封じ、そのまま竜縛鎖を巻いた拳で殴りつけると奴らは纏めて霧散した。
「貴様は、一体……!?」
驚愕を顔に貼り付けるアイルに、俺は改めて名乗りを上げる。
「俺はしがない、ドラゴンの世話係だ。と言っても、暴れるドラゴンを抑えるためにそこそこ鍛えているけどな」
ドラゴンテイマーは時に暴走するドラゴンを相手にする都合上、身体能力の強さも求められるものだ。
俺自身も、帝国の竜騎士と同程度には鍛えていると自負している。
「魔王軍四天王、爆炎のアイル! 俺たちの暮らす竜の国を炎で荒らしたそのツケ、今この場で払わせてやる!」
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