30話 精霊のテイム
「さて、これからミルフィをどうするべきか」
「この子、匂いも淀んでいないし真摯な感じがする。きっと助けても大丈夫だよ?」
ロアナは鼻をすんすんと鳴らしてミルフィの匂いを嗅いでいた。
この子がこう言うなら信用できるし、そうなればだ。
「ミルフィを竜の国で匿うのはどうだ? ルーナに乗って飛んでいけば男たちも追ってこれないだろうし、竜の国へ向かったのも分からないだろうから」
『わたしもそうしようかと考えていました。ここで巡り合ったのも何かの縁ですから。もしくは故郷へ送り届ける手もありますが』
ルーナの提案に、ミルフィは顔を曇らせた。
「……できれば、一緒に連れて行って欲しい。元々住んでいた場所に戻っても、もう誰もいないから……」
それからミルフィは自分の生い立ちについてぽつぽつと語ってくれた。
水精霊の一族も猫精族と同じく数が少なかったものの、活発化していた魔物の襲来を受けて数を激減させたこと。
そして最後に残った水精霊がミルフィで、人間のお爺さんに拾われて暮らしていたこと。
けれどその人は一年前に寿命で亡くなり、それから男たちに捕まり奴隷として扱われていたこと。
「そういう話なら、やっぱり竜の国に連れて行くしかないとあたしも思うけど。隷属の首輪はどうしよっか……?」
ロアナはうーんと小さく唸った。
この首輪がある限り、ミルフィは首輪を付けた人間の指示に逆らえないし、叛逆できないよう魔力だって大半を抑えられている。
さっきみたく、水を少し生成するのが関の山だ。
「それに隷属の首輪には、いざとなったら奴隷の首を絞めて殺す機能も付いている。ミルフィの希少さを考えればそう簡単にはできないだろうけど、下手に逃がすくらいなら殺すって考えるかもな」
「……そ、そんな……!」
ミルフィは震えて縮こまってしまった。
この機能はミルフィも知っているかと思ったが、どうやら知らずに逃げて来たらしかった。
「でも大丈夫だ、俺に考えがある。ちょっとミルフィは嫌かもしれないけど許してくれ、痛くはしない」
「……この首輪が外れるなら、なんでも大丈夫」
ミルフィの同意が得られたところで、俺はテイムの魔法陣を展開した。
即興で魔法陣を書き換え、規格を精霊用にする。
実はテイムも隷属の首輪も、主人に逆らえなくなると言う点では同じだし、効果特性も似たようなものなのだ。
それならば、後の話は簡単である。
要は隷属の首輪以上に強い魔力でミルフィをテイムして、ミルフィの主人を俺へと強引に書き換えて首輪を外してしまえばいい。
弱い魔力は強い魔力に上書きされる、これが魔術の基本なのだから。
「我、汝との縁を欲する者なり。汝の血を我が血とし、汝の権能を我が権能とする者なり。消えぬ契約を今ここに!」
三年前、暴れていたルーナをテイムした時と同等の大魔力を放ってテイムの魔術を起動する。
するとミルフィの隷属の首輪が抵抗したのか紫電を発したが、俺の魔力で強引に押さえつけた。
「ドラゴンのテイムに比べたら、隷属の首輪程度!」
魔力の多くを消費して、一気にテイムの魔術をかけ、隷属の首輪の効果を押し切ってゆく。
最後に魔法陣がミルフィの体へ収束した時には、首元にテイムの紋章が刻まれた代わりに、隷属の首輪はその効果を完全に失っていた。
そしてミルフィの主人が俺になったことで、首輪は真っ二つになりカシャンと外れた。
「……凄い、首輪がこんなにあっさり……!」
ミルフィは軽くなった首元を両手で触りながら、目を丸くした。
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