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18.惑星ケアス

 深夜、アルテミスの別荘を手にはビーム銃や剣を手にしたサルタンファミリーの10名の屈強な男たちが取り囲んだ。

「この家、シールドが張られていますぜ」

「爆破してシールドを破壊しろ」


 アルテミスはシールドが破壊された瞬間にベッドから飛び起きた。

 そして、隣に寝ていたカトリーヌ皇女を揺り起こすと、

「侵入者です。こちらをお持ちください」

 と、カトリーヌ皇女にビーム銃を渡した。

「皇女様、自分の身を守るためには、相手を殺すことも必要な時がありますよ」

 そう言うと、アルテミスは寝室のドアの陰に立った。

 宙賊の一人が寝室のドアを開けて入ってきた。

 アルテミスは、その男の鳩尾に拳をたたき込んだ。男は呻いて倒れこんだ。次に入ってきた男は下からあごを狙いすましてアッパーカットを浴びせ、その男も昏倒した。

 そのとき寝室の反対側の窓ガラスから、一人の男がカトリーヌ皇女めがけて飛び込んできた。カトリーヌ皇女がビーム銃の引き金を引く前に、捕らえられてしまった。銃口が皇女の頭に押し当てられた。

「ママ!」

「おとなしくしろ、俺たちはサルタンファミリーだ」


 銃を構えた男たちがドヤドヤと雪崩れ込んできて、アルテミスを押さえつけた。自分ひとりならこんな奴等はあっという間に叩きのめすことができるのに、皇女を捕らえられては身動きができない。何とかチャンスを作らないと・・・

「皇女様、一緒にきてもらおうか」

 前回誘拐した男たちだ。カトリーヌ皇女は、麻薬漬けにされた記憶が脳裏によみがえり、恐怖で震えた。

「この女はどうする?」

 アルテミスを押さえつけている男が尋ねた。

「いい女だな。一緒に連れていくか」

「ああ、いい女だ」

 アルテミスは嘗め回すような視線を浴び、顎を掴まれた。キリッとした目で見返したが、男たちの下卑た笑い声が響いた。

「来い」


 アルテミスは両脇を男たちに掴まれていた。

「いい体してるな」

 ひとりの男が服の上からアルテミスの胸を触った。

 その瞬間、アルテミスは強烈な膝蹴りをその男の顎に放ち、手にしていたビーム銃を奪い、さらに皇女に銃を突きつけていた男の眉間を打ち抜いた。

 撃たれた男は後ろに吹き飛んだ。

 アルテミスは、皇女に駆け寄り、自分の背にかくまった。

 宙賊たちはアルテミスに向かって一斉にビーム銃を発射した。至近距離だ。外れるはずがない。

 いく筋もの光線がアルテミスを貫いた、ように見えた。

「ママ!」

 皇女が悲鳴を上げた。

 しかし、ビーム銃の光線はアルテミスの体からすべてはじかれていた。

 そして、アルテミスは何もなかったように冷たく笑うと、手にしていたビーム銃で次々に男たちの足を打ち抜いた。男たちは一人残らず床に転がった。

「化け物だ・・・」


 アルテミスは撃ち殺した1名以外の9名の宙賊を縛り上げた。

 そこへ玄関から

「ただいま~」

 と間の抜けた声が聞こえた。

「おかえりなさい、レオン」

 レオンは寝室にくると、ギョッとした。

「こりゃまた・・・」

 そこには9名の宙賊が床に転がされていた。

「パパ、ママが撃たれたの!」

 レオンがアルテミスを見るとパジャマがあちこち破けて、肌があらわになっていた。しかし、肌には傷跡ひとつない。

「目のやり場に困るなぁ」

 と、レオンは意味ありげな視線でアルテミスを見た。アルテミスはあわてて、肌を隠す仕草をした。

 レオンはアルテミスの実力を知っている。彼女は惑星の軍隊を総動員しても多分相手にならない。この程度の宙賊にやられるはずがない。

「ママ、本当に大丈夫?」

「皇女さま、私は大丈夫です。ちょっと着替えてきます。レオン、後のことはお願いしますね」


 レオンはアルテミスにうなずくと、縛り上げられ気絶している宙賊の胸ぐらを掴み、顔を叩いた。

「よう、目が覚めたかい?よくもオレがいない間に、うちの奥さんに手を出したな」

 レオンは凄みを聞かせた声で、宙賊をにらみつけた。

「このやろう!さっさとこの縄を解きやがれ!俺たちはサルタンファミリーだ!逆らうと痛い目にあうぞ!」

「さるまわしだか、さるまただか知らないが、このオレにそんなことが言えるとはいい度胸だ!」

「貴様、何者だ!」

 レオンは寝室にある髑髏の仮面を指さした。

 それを見た宙賊は震え上がった。

「死神、キャプテン・ジョーカー・・・」

 レオンはゆっくりとうなずいた。

「なあ、お前たちは麻薬を製造しているな。その工場を教えてくれないか?」

 宙賊は、ブルブル震えていた。

「ま、麻薬工場・・・」

「そうだ」

「なんで場所が知りたいんだ」

「いや俺も麻薬取引に一枚かませてもらおうかと思ってな」

「それならボスに相談しないと・・・」

 レオンは宙賊の肩に手をまわし、

「とりあえず、工場はどこだ?」

「このケアス大陸の南端のシチリスという場所です」

「ここからどのくらいかかる?」

「通常の宙艦で5時間くらいです」

「ありがとな」

 そういうと、レオンは宙賊の腹に拳を叩き込んだ。宙賊はまた気絶した。


 アルテミスがパンツスーツに着替えてきた。

 レオンは、カトリーヌ皇女も着替えさせるように頼んだ。

 それから、警察に電話をかけた。

「湖畔の別荘を借りているアラン・スコッティだ。盗賊に襲われて、そいつらを捕まえた。引き取ってほしい」

 けたたましいサイレンとともに警察車両が3台到着した。

 レオンは警察官に状況を説明した。

「アラン・スコッティさん、大変な目に合われましたね。この盗賊たちはこちらで引き取ります。また、明日の朝、警察署まできていただけますか?詳しい事情書を作成したので・・・」

「わかりました」

 とレオンは答えた。が、警察署に行くつもりはない。オレがおまわりさんとお友達になれるはずがないのた。

 警察が宙賊を車に乗せ引き上げたたあとで、

「アルテミス!ここを引き払うぞ」

「わかりました」


 レオンはアルテミスとカトリーヌ皇女を連れて宙港のクラリス・ルナへ乗り込んだ。

 宙港の管理局に離陸の許可を申請すると、入国した時と同じ男性が出てきて

「スコッティ夫妻の出国は許可できません。あなたたちにはカトリーヌ皇女の誘拐の容疑がかかっています」

 という返答だった。

 そして、宙港の滑走路にいるクラリス・ルナを10台ほどの警察の戦闘車が取り囲んだ。

「無駄な抵抗はやめなさい。カトリーヌ皇女をその艦から降ろしなさい。さもなくばその艦を吹き飛ばしますよ」

 と管制塔からアナウンスが流れた。

 どうやら宙港も警察もサルタンファミリーの息がかかっているらしい。


 レオンはにやりと笑うと、

「死にたいのなら、やってみな」

 10台の戦闘車は15インチ砲をクラリス・ルナに向けた。

 戦闘車から15インチ砲が一斉に発射された。

 しかし、クラリス・ルナのシールドによって、ことごとく防御された。クラリス・ルナにはかすりもしなかった。

 戦闘車から何人か警察の恰好をした男たちがパラパラと降りてきた。

 肩にはミサイル砲を担いでいる。

 15インチ砲がダメならミサイルで、ということなのだろう。

 その中の数人は顔に見覚えがある。警察の服を着ているが、先ほど警察に引き渡した宙賊だった。

 何発かのミサイルが発射されたが、やはりシールドで爆発し、クラリス・ルナには届かない。

「アルテミス、殺さない程度に痛めつけてくれ」

「私は殺したいですけどね」

「あの中にはまともな警察官もいるかもしれない。全員が宙賊ならそうするけどな・・・」

「わかりました」

 アルテミスは、誰も搭乗していない戦闘車を標的に、レーザー砲を発射した。

 3台の戦闘車が爆音を立てて燃え上がった。

 そのほかの戦闘車からは次々と警察官が降りてきて、逃げ惑った。

 クラリス・ルナは無人になった戦闘車を次々に破壊していった。

「離陸だ」

 クラリス・ルナはその場でふわりと浮き上がった。

 キーンという音とともに宙港から消え去った。

 警察官たちはポカンと夜空を見上げていた。


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