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シャフリと料理

 ジークに手を引かれたシャフリは、調理場に連れ込まれた。


 数多くの食材が並ぶ中、笑みを浮かべながらテキパキと動くジークを見て、シャフリは呆然とする。


「ん? どうかしましたか? シャフリ様」


「いや……」


「ささ。食材は倉庫から出したものですが、鮮度は保っています。調理器具も手入れが行き届いていますし、調味料も全て揃っています。自由に使ってもらって大丈夫ですよ」


(いやいや、自由にって……私、庶民料理しか作れないよ!? 見たことない食材と調味料があるし……調理器具も包丁とフライパンと鍋くらいしか使ったことないよぉ〜)


「あ、あはは……困りましたね。何を作ろうか想像できないですね〜」


 するとジークは顎に手を当てて、食材に目を向ける。


「ふむ。確かに何でも良いと言うのは困りますね。それでしたら、カレーライスはどうでしょうか?」


 聞き慣れた料理名を聞いて、シャフリは目を丸くする。


「え? カレーライス? それで良いんですか?」


「意地悪して、難しい料理にした方が良かったですか?」


 シャフリは全力で首を横に振り、鼻息を荒くさせてジークに言葉を返す。


「いえいえ! 全力で作らせていただきます!!」


 元気が溢れ出ている声を聞いたジークはニッコリと笑みを浮かべ、近くにあった椅子に腰を下ろす。


「それではお願いします。時間は……1時間以内にしましょうか」


「はい!」


 シャフリは意気揚々と食材を選び、下処理を始める。


 常日頃、料理をしているシャフリは、カレーライス程度の料理は手際良く調理することができた。


 漂うカレーの匂い。瞼を閉じながら、ジークは香りを楽しみ、完成を待った。


「……ふい。あとはご飯を準備して……出来ました!」


「お疲れ様です。時間も余裕がありましたね。流石です」


 シャフリはジークの前にカレーを置き、ジークが口に運ぶまで待つ。


 嬉しそうな表情でスプーンを持つジーク。たっぷりカレーとご飯を掬い、口に運ぶ。ゆっくり味わい、笑顔を保ったまま完食する。


 感想が待ちきれないシャフリは緊張気味に口を開ける。


「ど、どうでしょうか?」


 コップの水を飲み干すジーク。皿を見つめながら、ジークは感想を口にする。


「とても美味しかったですよ。食材の選択も味付けも良かったです。チキンを使ったカレーライスは久しぶりに食べましたね」


「ウチはお父さんが鶏肉が大好きなので、カレーライスにも鶏肉を使ってます」


「なるほど……ところで、今回は誰を思って作りましたか?」


「え? 誰って……それは」


「自分でしょうか? バルディゴ様でしょうか? お嬢様でしょうか? それとも竜人族の少年ですか?」


 ジークの問いに答えることが出来なかったシャフリ。視線を下に向け、スカートの端をキュッと握る。


「ご自宅仕様だったので、バルディゴ様を思って作られたのでしょう。味は美味しいですが、辛味が強すぎますね」


「た……確かに。私は家で作っているカレーライスを作りました。だけど……」


 ジークがシャフリの肩に手を当て、ニッコリと笑みを浮かべる。


「精一杯作ったのは食べれば分かりますよ。それでは、次はお嬢様を思って作っていただけませんか?」


「ミーナちゃんを?」


「はい。因みにお嬢様は辛いのは苦手です。それと鶏肉も」


「ふえぇ!! 食材も変わって、辛さも変えるんですか!? ど、どうしよう……」


 完全に冷静さを失ったシャフリを見て、ジークが包丁を握る。


「それでは、自分がシャフリ様を思って作ってみましょうか」


「え?」


「少しお待ちを」


 目にも止まらぬ早さで調理を始めるジーク。無駄な動き1つなく、あっという間に煮込みの工程に入る。


 あまりの早さに、シャフリは何度も目を擦る。


「……そろそろですかね」


 盛り付けを終え、シャフリの前にカレーを置くジーク。


 ジークのカレーライスをマジマジと観察し、匂いを嗅ぐシャフリ。


「あ、ごめんなさい。匂いを嗅ぐのは失礼でしたね……」


「お気になさらず。ご自分が作った物と比較してもらって構いませんよ」


「ありがとうございます……それじゃあ」


 スプーンでカレーを掬い、口に運ぶ。


「ん? んん!? んんんんッ!!」


「どうでしょうか?」


「美味しいッ!! 私好みの激辛カレー!! お肉も豚肉で、じゃがいもは小さく切ってある!! こんなに食べやすくて、美味しいカレーは初めてかも!!」


 あっという間に完食したシャフリは目を輝かせて、ジークの手を握る。


「凄いです!! どうして私好みのカレーを作れたんですか?」


「先ほども言った通り、シャフリ様を思って作ったからです。辛いものが好きで、お肉は牛や鶏よりも豚が好き。口は大きく開けられないので、食材は全て細かく切った……ただそれだけです」


「なるほど……でもそれって、好みを知っていないと作れないですよね? 私たち、あの子の好みは分からないですけど……」


 ジークはニッコリと笑みを浮かべて、シャフリの手を握り返す。


「最初から他人の好みを知っている人はいません。よく観察して、よく話して、些細なことでも少しずつ知っていくのです。そうすると、自分がシャフリ様に作ったカレーの様に、最高の出来になります。そして、彼の好みを聞き出すのは、お嬢様の役目です」


「ミーナちゃんが?」


 ミーナの名前を口にした瞬間、調理場の扉が勢いよく開く。


「ジ〜ク〜。紅茶用意して〜。喉が渇いた……ああ!! シャフリ!! 何ジークと手を握っているの!? 離れなさいよ!!」


 ミーナがシャフリに襲い掛かり、シャフリは謝りながら逃げ回る。


「わあッ!! 悪気は無かったんだよ!!」


「黙りなさい!! 大人しく捕まりなさい!!」


 走り回る2人を見てジークはため息をつき、ボソッと呟く。


「調理場では走らないでくださいよ……」

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伊澄ユウイチです!


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