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最終話

これで最終話です。

3千前後の短編で全部済ます気だったのですが、こんなに長くなるなんて

短編は難しい。

って短編じゃないですけど……


 王子様には加護がついた。

 これが聖女の持つ最大のスキルだ。

 聖女は信仰の度合いで加護を授けることが出来る。神への信仰心でも良いのだが聖女として崇められるのはもちろん、憧憬や好意を向けられることでも授けられる。

 つまり、恋愛感情をくすぐるのは効果的だ。それにエロもありだと思う。


 だが、ここで一つ問題。


 それはオレが聖女ということだ。

 清く正しい聖女が大っぴらに女を使うのは逆効果になるだろう。使うなら重要人物にこっそりとかだな。

 なんて、どす黒いことを考えている。


 ちなみにマリアは過去にどうやって崇められたかというと、最前線に立って自ら闘ったらしい。

 うん。勇ましい。


 人を救うため、魔王を討伐するために先陣を切って戦い続ける。

 一体どこの勇者だろうか。

 マジ、ジョブの選択を間違っていると思う。


 でも、マリアが持つ天性のカリスマと戦闘センスを持っていればその選択はアリなのだろう。

 それならオレも同じことをすればと言われるかもしれないが


 無理、無理、無理。絶対に無理。


 いくら天使ベースのチートな身体を持っていると言っても魔物と戦うとかありえない。

 ゴブリンとか雑魚キャラ扱いされているけどかなりキモイよ。

 それに棍棒持って襲ってくるとか、マジ、怖いから


 と言う訳でオレにそっちの選択肢はない。

 じゃあ、どうやって好感度を上げるかというと……

 考える必要はなかった。



 その日のうちに対策会議が行われた。

 議題はもちろん、王都を囲む魔族たちへの対応。


 しかし、はっきり言って選択肢はない。

 長期間の籠城は出来ないのだ。

 他国からの援軍は期待できるのだが、時間がかかり過ぎる。

 それにどちらかというとこちらの方が国境に援軍を出さないといけない立場なのだ。

 時間はかけられない。


 そうなると討って出る必要がある。

 そして、取れる作戦は一つ。


 周りの敵は気にせず敵将の首を討つことだけ。


 たが、会議に出席する面々は消極的だった。

 まあ、最強と言われる第二王子率いる第二騎士団が敵わなかったのだ。

 ちなみに第一騎士団は王都の防衛隊で攻撃には向かない。

 第三から第五まであるがその実力は第二騎士団より一段劣る。


「ですが、このままでは国境にいる兵士を見捨てることになりますよ」


「しかし、どうやって敵将を討つのですか。ゴブリンやコボルトは一体一体は弱いですが数が多すぎる。それにあの得体のしれない召喚獣たちがいます。第二騎士団でも敵将まで届かなかったではないですか。それに王子は出陣に反対していたでしょう」


 出兵を主張するのは第一王子だ。

 そして、大臣たちがそれに反論している。

 王は何も言わずに黙って議論を聞いている。


「ですが、この前と今では状況が違う。いまは聖女様が存在します。彼女があの忌まわしき化け物どもをその言葉だけで蹴散らしたのは見ていたでしょう。それに弟は聖女から加護を授かりました。その力があれば今度こそ、魔王軍を蹴散らしてくれるはずです」


「「「「「「おおおおおお」」」」」


 議場がどよめいていた。

 注目がオレに集まる。

 内心ではビビりまくっていたが、オレは微笑みを浮かべておいた。

 それが不敵に笑っているように見えたのか、徐々に賛成の方に流れが変わってくる。


 えっと、この流れって、もしかしてオレも前線で戦えってことになるんじゃないの?

 嫌だよ。戦えないよ。

 だけど、期待がどんどん高まっていく。

 ここはもう断れない。


 と言う訳で、やけだ!


「わたしにどれだけのことが出来るかわかりませんが全力を尽くします」


 怯えながらも凛とそう言いきる。

 そんな演技をしてみたが……


「聖女様だけを戦わせられない。オレも戦うぞ!」


「そうだ。聖女様と共に魔族たちなど蹴散らすのだ」


「オレが聖女様を守る」


 会議に出席した騎士たちが立ち上がり声を上げていた。

 知らない内に彼等の身体に光が宿っている。


 うん、彼等にも加護がついたみたいだ。


 どうやらか弱い乙女が怯えながらも一生懸命使命に立ち向かう姿というのが受けたようだ。

 マジこいつ等ちょろい。


 と言う訳で、隊長クラスの騎士たちが意気揚々と会議室から出ていく。

 大臣たちも少し興奮気味だ。

 そんな中、黙って会議の行く末を見守っていた王は……


「わしはまだ何も決めてないのだがのう」


 深い溜め息を吐き、第一王子様に慰められていた。




 そして、昼過ぎ。


 城門の前には元第二騎士団、現聖女親衛隊を始め、第三、第四、第五騎士団の面々がそろっていた。

 そして、オレはなぜか城門の上に立ち彼らの注目を一身に浴びている。


 ああ、帰りたい。

 こんなの小学校の時に全校集会で委員会の活動報告をさせられて以来のことだ。

 なんだか緊張をしておしっこがしたくなる。

 が、聖女がそんなことを言う訳にはいかない。

 聖女はおしっこなんてしないらしいので

 そんな幻想はこの手でぶち壊したくなる。


 なんてバカなことを考えているとマイクのような物を渡された。

 どうやら、拡声器のような魔導具らしい。

 そして、オレがマイクを構えて前に出ると二千を超す兵士たちのざわめきが一瞬で静まり返った。

 静寂が場を支配する。


 オレは大きく息を吸ってから語りだした。


「皆さん。現在、王都は魔族の軍勢に囲まれています。しかし、恐れることはありません。あの魔物たちは操られているだけです。敵将の魔物使いさえ討伐すれば、魔物は散り散り退散するでしょう。どうかわたしに力をお貸しください。そして、わたしはあなた達に力を与えましょう」


 そう言ってオレは近く跪いている元第二王子の王子の頭に手を翳す。

 すると、王子に加護が授かり光りだした。


「我等には聖女様がついている! 聖女の加護を受けた我は一騎当千だ。皆のものついて来い!」


「「「「「「おおおおおおおおお」」」」」」」


 高らかな宣言に津波のような兵士の鬨の声が答える。

 そして、兵士たちの中で何人かがわずかに光りだした。


「オレにも聖女様の加護が」


 所々で声が上がる。

 そして、その光は伝播するように増えていき、そして、その輝きも増していく。


「聖女、聖女、聖女――」


 聖女コールがいつの間にか上がり始め、声が唸りそのまま獣のような咆哮に変わっていく。

 そして、士気が最大限に高まったところで城門が開かれた。

 第二王子は階段を下りるのも億劫だと城壁から飛び降りて最前線に立ち魔物たちに向けて突貫していく。


 それからは怒涛の勢いだった。


 もう、兵士たちは前に進むことしか考えていない。

 その勢いに操られているはずのゴブリンやコボルトは怯え、逃げ出すものが現れだした。


 集団の前が次々に空いていく。

 そこに待ち構えていたのはゆるキャラ軍団。


 だが、彼等には魔法の言葉が授けられていた。


「この不人気キャラめ!」

「時代遅れの骨董品!」

「落ち目野郎!」

「公金の無駄遣い!」


 どうやら、一日二日では対策は立てられなかったようだ。

 新たに呼び出された者もいたようだが、どれも似た境遇のゆるキャラばかりで罵倒を浴びてorz状態。

 唯一奮闘していたふな○しーもその動きのキレは鈍っている。

 それに奴はどうやら一号機のようで汚れや傷みが目立つ。

 その所為か一斉攻撃でファスナーもといイリュージョンが壊れて動かなくなった。


 そして


「そんなバカなオレのゆるキャラ軍団が!」


 副団長ゆるキャラ~ん、討ち死に


「ワイバーン、オレを連れて撤退――ぐわーー」


 魔王軍第三軍団長 ピーチボーイ討ち死に


 こうして魔王第三軍団は壊滅するのだった。



 

 そして、俺は勝鬨を上げる兵士たちを城門から見下ろしながら。


「宗教こええええ」


 と一人身震いするのだった。


 こうして王都はその脅威から解放される。

 そして、次は国境、魔王軍本体との戦いだ。


「えっと、チェンジできませんかね」


 その呟きは神様には届かなかった。


 おしまい。


やっぱり短編は難しいです。

本当はもう少しエロ誘惑やブリッコなどで民衆を篭絡したり、歌って踊れる聖女誕生。シスターや王女集めてアイドルグループ結成。ファングッズや人気投票で好感度煽って加護をどんどん上げていき、さらには魔族もファンに引き込んで、魔王も……

って展開を考えていたのですが、とても書ききれませんでした。

わたしの力不足です。

ちなみに続きを書く予定はありません。


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