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12.魔王城からのお使い

自称神様のクソじじぃが帰ってから数時間。

俺は本日の使い果たしてしまった労力をねぎらう様に、アニメの視聴に性を出していた。


とりあえず、溜まってた分は全部見終わったというところに、凄く申し訳なさそうな顔した角が生えたやつが現れた。

もちろん、PC画面から。


「だ、誰!?」


えぇぇえええええ!?

俺のセリフ取られたんだけど!?

こっちが聞きたいわ!


「あ、もしかして奥様がお世話になった方でしょうか?」


ん?奥様??

PC画面から出てきたやつで奥様といえば……


「魔女のお知り合い?」


「お知り合いなんて滅相もない!ワタシは魔王城に使える者でございます。」


やたら丁寧な人?だな。


「本日は奥様より預った品をお届けにあがりました。

こちらになります。」


そういうと、おどろおどろしいという表現がぴったりな色の袋が出てきた。


「こちら奥様特性のドゥルケでございます。簡単に説明させて頂きますと甘いお菓子でございます。」


「あ、ありがとう……。」


正直、もらいたくない。

けど、凄いキラキラした目で渡してくるから断れないじゃねーか!

もう、奥様特性ってところで拒否反応出てるからね!?

魔女だよ!?しかも、魔王の奥さんだよ!?

毒とか入っててもおかしくないからな!?


「いえいえ。こちらは奥様からの感謝の品ですのでお礼を言うのはこちらでございます。」


「はあ……。」


え?

こいつ本当に、PC画面から出てきた人?

信じられないんですけど……。

だって、ものすごく丁寧なうえに謙虚。

ここから出てくる人って、とりあえず強引な感じでくるんじゃないの?

もう、思い切って聞いてみるか……


「あの本当に魔王城の人ですか?」


「はい。ワタシは魔王城に使える悪魔でございます。城内では、主に旦那様ご家族のお世話などをさせて頂いております。」


「へー。」


この人、悪魔だったのか。

けど


「あんまり悪魔っぽくないな。」


「よく言われます。しかし、この性格ばかりは本来の悪魔の姿に寄せようとする度に拒否反応が起こる次第でして。そんなところへ、魔王城のお給仕の募集が出ておりましたので急いで面接へ向かいました。戦闘の必要もないポジションに受かり、今に至ります。」


悪魔に就活とかあるんだ。

まあ、俺してないけど……。

就活のコツとかあるんだろうか?

いや、働きたい訳じゃない。

なんなら働いたら負けだ。

けど、この窓口から脱却する為には必要かもしれない……。

世界は違えど、悪魔といえど、就活の先輩だ……


「就活のコツとは?」


「しゅーかつ?とは何でしょうか?」


「就職活動」


「あ!略されてるのですね!!勉強になります。しゅーかつのコツですか……。」


そう言うと少し考える素振りをして


「当たって砕けろ!ってところでしょうか?」


「……。」


告白かっ!

それ告白しようか迷ってるヤツに言うやつだよな!?

てか、砕けちゃダメなんじゃね?

砕けたらその後また落ち込んで引きこもるよな。

んで、窓口続くんじゃね?

……負のループじゃねーか!!


「でも、ワタシの様な業種は他人にはオススメ致しません。」


まあ、魔王城で魔王ご家族の世話とか死んでもやりたくないしな。


「お世話をさせて頂いておりますと、知らなくてよい旦那様ご家族の情報が入ってきたりもします。もう、本人から言われて誰かに黙っていると言うのが本当に辛いのです……思い出しただけで胃が痛い……。」


この悪魔、いい子過ぎるとは思ってたけどやっぱり、何か訳ありっぽい……。

こういう気苦労が多いヤツは、早死しちまったりするからな。

しゃーない、何か食べるの怖いけどお菓子ももらってしまったしな……


「基本的にここで俺が聞いた事は他言無用だ。全部吐き出して帰れば?」


「よろしいのですか?」


「ああ。」


だって、こんないい悪魔他にいないと思うし他のヤツにあの家族の面倒が見れるとは思わない。

子供は知らないけど。


「では、お言葉に甘えてお話させて頂きます。ワタシは魔王城にお仕えして10年程になりました。旦那様ご家族は旦那様、奥様、次期魔王となられるご子息と反抗期真っ只中のご息女の4人家族でございます。これが、一人ならまだしも全員ワタシにだけご注文をしてくるのでございます。」


あ、もう何かこの悪魔の苦労の片鱗が見えた気がする。


「奥様に関しましては、ご存知の事かと思いますが勇者と浮気つまり不倫の関係をもっておられます。貴方様のご協力のおかげで最近は、ワタシが駆り出される事は比較的減りましたが旦那様のお相手は全てワタシに押し付けて行かれるのです。」


え?お相手って何?

何させられてんの!?


「旦那様は本当は奥様とされたい様ですが、奥様は勇者との逢引に生を出しておられまして……。僭越ながらワタシが、旦那様のチェスのお相手をさせて頂いているのです。」


あー、チェス。

よかったぁ……変な事じゃなくて。

べ、別にやらしい事なんか考えてないからな!!


「旦那様は奥様がチェスが好きだとおっしゃったので、一生懸命に勉強されておりました。そして、奥様と一戦交えたいとおっしゃられておりました。ですが、奥様はチェスの興味が薄れており拒否なさるのです。さらに奥様の逢引の際に細工として、ワタシに旦那様とチェスをやっておく様、ご命令が下るのです。しかし、実力差がありワタシの方が上という何とも、申し訳ない気分になるのです。」


あのおっさん本当に家族想いだな。

魔女は何とも言えないけど……。


「この実力差ですが、使える身としては旦那様を立てる事が重要でございます。そこで、ワタシは毎回絶妙な感じで旦那様に負ける事に致しております。これが意外と頭を使う上にプレッシャーもかかってしまうのです。ああ、胃が痛い……。」


うわぁ……。

これ上司をヨイショするみたいなやつですよねぇ……。

この悪魔すげぇな……。


「ご息女のお嬢様も只今、反抗期真っ只中でしてワタシへの反抗はなさらないのですが、些細な事が旦那様を傷つけていっている気がするのです。」


あれ?

この話何かおっさんからも直で聞いたような……?


「旦那様の洗濯物と一緒に洗わないで欲しい、旦那様と一緒にご飯を食べたくない、旦那様とご子息のお坊ちゃんは部屋に入らない様見張っててほしい、などなど沢山の注文が入るのでございます。あ、また胃が……」


がっつり反抗期!

もう、洗濯物とか典型的!

異世界にもあるんだな、反抗期。

やっぱり、どこの世界もお父さんは可哀想だな。


「お坊ちゃんは、基本的には穏やかな方なのです。ですが……。」


お?どうした?

言葉つまってんぞ、大丈夫か?

……いや、この悪魔は大丈夫じゃなさそうだけど。


「もし、この様な愛について否定的でございましたら申し訳ございません。どうやら、お坊ちゃんは同性の方が今の想い人のようでして……。」


ん?同性?

俺は別にいいと思うけど後継ぎ問題とか大変……ん?もしかして、魔王が最初に俺に魔王になれって言ったのコレが原因なんじゃね?

そんな気がしてきたんだけど?


「想っている分にはワタシも良いと思うのですが、度が過ぎるのでございます。お坊ちゃんの部屋には、想い人のお写真が沢山飾ってあるのです。これが問題なのです!」


別にそれくらい、いいじゃねーか。

好きなアイドルのポスター貼ったりするのと一緒じゃん。


「全て盗撮写真なのでございます。こちらは最近になって判明した事実ですが、想い人は奥様の不倫相手の勇者一行の武闘家なのです!これが盗撮以上に問題なのです!ああ、奥様が勇者と不倫しているだけでも旦那様にはダメージが大きいのに、お坊ちゃんまで付き合い出してしまったら……ああ、吐きそう……。」


うわーーーー!!

何この犯罪集漂う話!

盗撮!?盗撮って何?

てか、親子そろって勇者(バカ)ご一行のメンバーが好きとか絶対ダメだろ!

もう、何なのこの家族。

ツッコミどころが多すぎるんですけど!?


ああ、もう魔王のおっさんがすげぇ心配になってきた……。

てか、まだ魔王の迷惑話聞いてないんだけど……。

聞きたくねぇぇええええ!!


と、俺が心の中で叫んだ瞬間に悪魔の方から不思議な音が鳴り出した。

音は悪魔の居る方から聞こえてくる。


悪魔はポケットをゴソゴソしだしたかと思えば、謎の四角い物体を取り出した。

四角い物体を悪魔が撫で回していると音が止まった。

それと共に悪魔の顔は青ざめていった。


「も、申し訳ありませんが部下が!ぶ、部下が死んでしまいそうなので帰ります!!」


そう言うやいなや、PC画面に飛び込む様に帰っていった。


大丈夫なのか?

すごい真っ青な顔で帰って行ったんだけど?

てか、部下が死にそうってどういう状況?


疑問は沢山浮かんだが、俺には知る術も無ければ知る必要もない。

という事で、かわいそうだが悪魔の事は一旦忘れる事にした。


さて、俺の手元に残った魔女特製のお菓子。

食べずに捨てると呪われそうな気もする。

よし、ちょっとは食べるか……。


俺は意を決してお菓子の袋を開けた。


中には青っぽい色の洋菓子っぽいものが入っていた。


……色からして食べたくないし食欲がわかない、けど呪われるかも。


俺は死ぬかもしれない覚悟と共にお菓子を食べた。


ん?

これ美味しいんだけど。

凄い美味しいんだけど!

色はヤバいけど味はいけるわ!


俺は悪魔とその部下の事など頭から消えていき、美味しく魔女特製のお菓子を食べたのだった。


しかし、この後、腹痛に襲われることを俺はまだ知らない。



続く……

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