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第1話(前編)


ーーそれぞれの事情を抱え、今にない幸せを求めるために、2人は巡り巡ってこの花苑に辿り着く…。


そして出会った2人は花苑の中心に立ち尽くし互いに手を絡め合う。

離しかけた手と手の間には赤い糸が引いて、何があっても解けないようにと絡まり合う。

サーっと走り抜けるような風が吹き、小さくて白い花々がキラキラと揺れる。草がお天道様のような、暖かい匂いを運ぶ。空は澄んだ青色をした快晴のまま、遠くで虹がかかり羽が舞っている。

…しかし、その花園の下には荒廃した墓地が埋まっていた。

そんなこともつゆ知らず、2人は顔を寄せ合い笑い合う。

これは、そんな私たちの物語である。



あまり覚えていたくない。忘れたいけれど忘れられない思い出がフラッシュバックすることがある。

またこんな時に思い出してしまったんだ。中学校卒業式、色とりどりの紙の花で埋め尽くされた看板の前で立ち尽くした。


「お前なんかいなきゃ良かったんだ!!!」


…私を怯えるような、けど確実に突き放そうとする鋭い視線、涙を流しながらまるで周りに助けを求めるかのように叫ばれたあの子を前に、私は何もすることができなかった。夕陽に照らされ、彼女の赤く腫れた頬が痛みを増すように際立った。あの時浴びせられた言葉が倍速で一斉に頭の中で再び流れる。…私がやったんだ。抑えきれなかった。

感情の暴走するままに言葉をぶつけ合い私から手を出してしまったあの日から、孤立するようになった。そして本音を閉ざすようになった。


またやらかしてしまった。卒業式を飛び出してきてしまったんだ。トラウマのように蘇るこの記憶が、いつしか私を衝動的に突き動かすようになった。また何人の人に迷惑をかけてしまったんだ。こんな自分への自己嫌悪が波のように襲いかかってくる。誰もいない南中しきった春の柔らかい光の差す校舎裏で、私はこぼれ落ちていく涙をずっと見ていることしかできなかった。もう着ることのない制服に涙が染みる。こんな自分に負けるのがずっと嫌だったのに。


あの出来事の後から私は地元の高校に行くことを固く拒むようになった。中3の冬前の今からでは遅いことは分かっていたが、志望校を変え本気で受験勉強を始めた。死に物狂いでペンを持つ手を動かし、勉強以外の欲求を噛み殺した。答えを求めて書いて消すという単調すぎる作業を繰り返しすぎて今が昼か夜かもわからない日もあった。

元々地頭もあったが、努力の成果だと信じたい。第一志望としていた県内3位の私立高校には落ちたが、そこそこ偏差値のある公立高校に受かることができた。後悔はなかった。ただ、誰にも会いたくない。環境を変えたかっただけだった。

そこから卒業式まで私は誰とも言葉を交わさなかった。交わす相手もいなかった。最初は孤独で溢れそうだったが、いつしか体がその環境に適応していったようで、何も感じなくなった。これが普通になったんだ。


卒業式を中退したことを謝りに行く気力も出ず、部屋の奥底に沈んで冬眠するような春休みを過ごした。落ち込んでいた割には早く過ぎ去った20日間だった。次の新しい環境に抱く淡い期待もあったからかもしれない。


片道15kmの道のりを経て高校の入学式へ向かう。そこそこ頭のいい公立といったけど、本当は倍率が低いだけで、言ってしまえば誰でも入れる。同じ校内に天才もバカもいる、そんな高校だった。


入学式が終わって同じクラスの新しい人たちと話す時間があった。脳内で何度もシミュレーションしたのに現実ほど上手く行かないものなんてあるだろうか。入学式の記憶はほとんど飛んでしまった。中学で染みついた自分の性格は環境を変えただけは治らなかったようだ。教室の中に馴れ馴れしい声、緊張した声、甲高い笑い声、いろんな声が響き渡る。怖い。目の前にいる私と同じ名前も知らない新入生が全員怖く見える。話しかけられても口ごもって愛想笑いしかできない。口角が上がったまま痙攣して硬直したみたいで、その仮面の裏で精神が死ぬ。サーっと引いていく血の気が嫌なほど伝わってくる。いつ反応をすればいいんだろ、必死になって空気を読んでいるうちに呼吸をすることすら忘れてしまっていた。鼻につーんとした痛みが来たのは、泣きかけていたからだろうか。視界が滲んで、せっかく結んだ三つ編みを映し捉えることすらできない。気が遠くなりそうだった。思っていたより時間は丁寧に刻むようにゆっくり過ぎて、何回時計を見ても秒針が進んでいないように感じた。結局何も話すことができなかった。私は何も変わっていなかったんだ。


同じクラスの皆はそんな私を見抜くのは早くて、既に他の人たちとグループで行動するようになった。

5月に差し掛かって、確実に孤立した。通信制高校への転学も考えたが、中3の時に私のわがままを嫌々だが飲み込んでくれて、倍に近い塾代、そして受験代まで払って受験を応援してくれた親に迷惑をかける気がして言い出せなかった。



ーーーその時からかな。いつしか、現実逃避できる場所を探し求めて彷徨うようになった。

Episode1(後半)⇢主人公は、仮想世界『Lilink』の世界へ引き込まれていってしまう…

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