諜報員の行方
SSBRの建物内にある宿泊室のフロアの廊下を意気揚々とエージェントのパウルが台車に朝食と新薬のNeon Dustを載せて歩く。
ゲレーテ・ヘンラインが監禁されている部屋の前に来るとドアを2回ノックした。
「ええ、どうぞ」中から彼女の声が聴こえ、新薬のNeon Dustをコップの中のドリンクに混ぜて、ドアのカギを開け中に入るとパウルが彼女の機嫌を覗いながら朝食を載せた台車をベッドの横につけた。
「ゲレーテ、朝食を持ってきたよ。ブルック専務から聞いたよ。君はスパイだったそうじゃないか、ムチャをするね」
ベッドに横になったゲレーテ・ヘンラインはバブローブを着用していた。
その様子を見る限り観念したようにも見える。いつも着ているワインレッドのスーツはクローゼットに仕舞い、白いシャツは下着と一緒に洗濯機の中に入っているが、そのまま放置されている。
ゲイのようにも見えるこの男は大の女好きでSEX依存症でもある。
SSBRのCEOをはじめとする役職者に近づこうとするスパイは多く、魅力的で美しい女性が話しかけてきたらそのほとんどは諜報員だと認識するように訓練がなされていた。そのためケネス・ブルックも普段はかなり警戒心が強くハニートラップに引っかかることは少ないが取引先企業が集まる会議にまさかゲレーテ・ヘンラインのようなスパイが紛れているとは思いもしなかったようだ。
ハニートラップとして暗躍している女はもっと露骨で下品な印象があるが彼女にはそれがなかった。だから、ケネス・ブルックは恋に落ちたのだと自分に言い聞かせていた。
宿泊室の他の部屋には元スパイとして暗躍していた女たちが監禁されているが、既にドラッグ漬けである。1日の大半をバスローブ姿で過ごし幻覚と幻聴の中でパウルに手なづけられ、激しいSEXの中でいつしか快楽に溺れて目的を忘れてしまっていた。そして、パウルが手なづけた女たちはSSBRの幹部たちの抱き枕として扱われ、醜い大人の欲望の性欲処理係となっているのだった。
「監禁してハニートラップに使われるほどの美貌を持つ女たちと自由にSEXしたほうが現役スパイのハニートラップに引っかからなくていいだろ?」とCEOが凄むと幹部連中は納得せざるを得なかった。
非人道的な行いに幹部たちも最初は拒んでいたがCEOが軽めのドラッグを用意して、それを渡し、曜日を替えつつ、幹部ひとりひとりに「抱いてこい」と命じて、いつしかそれが当たり前になっていた。
CEOのカリスマ性に魅せられると同時に彼らは人心掌握の術中にまんまとハマってしまったのだ。
「私はこれからどうなるの?」
ゲレーテ・ヘンラインが率直に質問を投げかける。
パウルは不安そうな顔をした彼女に寄り添い応える。
「そうだね、ゲレーテ、不安だよね。でも、心配しなくても大丈夫だよ。今までとは少し生き方が変わるだけで身の安全は保障されるんだ。このキレイな部屋と食事が用意されているのを見ればわかるだろ?君は大切に扱われるよ」
気休めの言葉でごまかすパウルを見上げ、少し安心したように彼女はベッドに腰をかけて座った。
パウルが思わず唾を飲み込むほどゲレーテ・ヘンラインは魅力的だった。
「じゃあしっかり朝食を取るんだよ」
緊張と興奮のあまり声がうわずって手が震えるパウルは部屋を出て行った。
急いでスマートフォンで時計を確認する。
(10分後だ!朝食を食べた10分後に、この部屋に来ればゲレーテ・ヘンラインとSEXできる!!!)
パウルは最高に気分が上がっていた。
上目遣いで目線を合わせてくる無防備な彼女が『おいしそう♪』に見えた。今すぐそのバスローブの中に手を突っ込んで胸を揉みしだきたいという欲望に駆られ、声がうわずって手も震えてしまった。
(危ない!危ない!シラフの彼女にそんなことをしたら何らかの体術で倒されるところだ。仮にも彼女は諜報員、どんな技を持っているかわからない。首を絞めて気絶させられたら、それこそSSBRの専務に銃を向けた女を逃がしたなんてことがあったら私の命はどうなるかわからない)
パウルは興奮冷めやらぬなかでギリギリ理性を働かせた。
一方、Lumen ArkのメンバーにもSSBRに潜伏していた仲間が諜報員だということがバレて連絡が断たれたという情報が入っていた。
仲間の名前は『ゲレーテ・ヘンライン、消息不明』と記載されている。
Lumen Arkのメンバーはコニック博士が作ったダークウェブサイトをスマートグラスやスマートフォンなどのデバイスにインストールして使用している。
ダークウェブサイトは、その昔、ロシアとアメリカが開発したのが始まりだった。
最新の兵器を揃えている国は、在庫として抱えた大量の古いミサイルを中古品として他国に横流ししていることが多く、敵対する国同士がロシアやアメリカから卸した中古の兵器で戦っているなんてこともざらにあった。
専用ソフトのインストールとタイムパスがなければサイトへのアクセスは不可能。
コニック博士は、さらにそれを改良して指紋認証や眼球認証も取り入れ、セキュリティは堅牢となっている。眼球認証は、生態認証の中でももっとも高度なバイオメトリクス認証と位置付けられ、1秒で確認作業が終わる優れものである。
Lumen Arkの組織が使う専用ソフト上でチャットのやり取りが行われている。
『SSBRのケネス・ブルックの秘書として潜伏してANGEL DESCENT計画が秘密裏に進行していることを知らせてくれた人ですよね?』ノアがチャットを入力した。
『そうだ、彼女が自ら志願してSSBRに潜入してくれたんだ』
Lumen Arkのボスがノアにチャットを返した。
『彼女を助けに行かないんですか?』さらに質問を続ける。
『SSBRの施設の近辺に我々の仲間は待機している。いざとなれば玉砕覚悟で飛び込むさ。でも、彼女はそんなにヤワじゃない。施設から逃げ出すぐらいは簡単にやってのけるだろう』
どうやらボスからの彼女への信頼は厚いようだ。
10分後、パウルはゲレーテ・ヘンラインがいる部屋のドアを2回ノックしたが彼女からの返事はなかった。そっとドアのカギを開けてパウルは薄暗い部屋の中へ入って行った・・・・。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/ne8937e050cd2?app_launch=false
画像はnoteに置いています。なかなかエロいです。




