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サンディ・コニック博士が説明する。
「仮想現実のレイヴパーティを通じてNeon Dustが流行り、その流行りに便乗してナノテクノロジーを使ってカプセルの中にAIを入れた奴らがいるんだ。
それが軍事産業メーカーの『Strategic Systems & Black Research』通称SSBRだ。
彼らはランダムにNeon Dustのカプセルの中にAIを忍ばせた。そして、それを使った若者の脳をハッキングするようになり、IDとパスワードを物理的に盗み出している。
その技術を開発したのはイシドール・ラチエという人物だ。
ロボット工学と脳科学で素晴らしい功績を残しているが世界大戦のときから周りからは狂ったと言われるようになっている。私の推測では恐らくNeon Dustを開発したのも彼だ」
アンジェリカ「SSBRの傘下にはハッキング集団がいて、『The Code Divers』という途上国に潜伏している組織なの。
ナノテクノロジーのAIが脳と融合したユーザーにアタック攻撃を仕掛けるわ。
Neon Dustを使用したときの高揚感や幸福感と共に頭痛が始まる、その瞬間が脳をハックする絶好のタイミングになっているというわけね。
あなたたちの脳もナノテクノロジーのAIと同期してしまっているの。でも、心配しないで。
ここにいるラファエラとカジェタノがあなたたちを守っているわ」
ノア「僕たちの脳はAIと融合してしまっているんだ・・・」
思ったより事態は深刻だった。もう元には戻らないだろう。
「そう、元には戻らない。ただしそれが利点にもなってるわ。私がレナータの脳をハックして潜在能力を引き出したの。あなたの脳を守るついでにね。それとIDとパスワードを解析してアバターの反射速度を上げたわ」
ラファエラがレナータにウィンクをした。
(確かにNeon Dustをレイヴパーティで使った次の日からレナータは突然、強くなった。
僕はNeon DustとNeon Coreまで使っている。それは一体どういう状態なんだ?)
コニック博士「ラチエ博士が開発したのはそれだけではなくNeon Coreという代物まで作っていたんだ。これは仮想現実の中にしか存在しない球だよ。ノア君はそれを偶然、手に入れてネオグライドのゲーム中に使ったね?」
核心を突かれてドキッとしたノアはもう何も隠せないと悟った。
「ええ、使いました。それが何かもわからないまま」
ノアがNeon Coreを使ったことを告白すると心配そうにレナータはノアを見つめた。ふたりは手を強く握り合った。
ここまで核心を突かれ、さらに自分たちよりもすべての状況を把握している人たちがいることに驚いた。しかも、まだその先に不穏な何かがあることがはっきりとわかる。
アンジェリカが僕たちふたりを待っていたのはそういうことなのだから。
アンジェリカ「ある男がNeon Coreの持ち主だった。刑事たちに追われV-HUBに逃げ込んだんだけど、そのときどこかでそのNeon Coreは消失したの。
男の名前はヨーラン・スティーンハルマン。
彼が使っていたアカウントはエリーサ・ホンコネンという女性のものだったわ。
彼は現実世界でエリーサ・ホンコネンのVRゴーグルを使っていたんだけど、エリーサの自宅に警察官が突入した後にマンションの一室が爆発で吹き飛んで何も証拠が残らなかったの。
それは大々的にニュース番組で報道されていたから知っていると思うけど、問題はそのNeon Coreの効力にあるの。ノア君のネオグライドの戦績と戦い方を見ればわかる通り、あれから負けたことがない」
コニック博士「つまりNeon Coreは仮想現実のアバターに働きかけるAIで発動させることができればアバターの能力値、パラメータは異常に高くなる。
まるでネオグライドに投入されるbot『クラッシュマスター』のようにね。
発動させる方法さえわかれば・・・の話だけどね」
アンジェリカ「実はラファエラは疑似現実のラチエ博士の研究所に侵入したことがあるの。1度だけね。
そのときにNeon Coreを見つけたわ。
一体それが何だったのかそのときはわからなかった。
ノア君、君がNeon Coreを発動させてからいろいろ私たちも理解したの」
半年以上前にラファエラは疑似現実の入り口を見つけていた。
Neon DustとナノテクノロジーのAIの調査を行っていたときにラチエ博士の研究所で開発されたことを突き止め、そして、研究所のパソコンをハッキングし疑似現実に侵入した。
疑似現実の研究所は、現実のLaboratoryと瓜二つだった。
街や都市も同じ、ただその世界に存在するほとんどの人物がAIで構成されていた。
疑似現実の研究所にラファエラは紫のウサギのつなぎに赤いローファー姿で侵入している。
(おふざけにもほどがあるだろ・・・まったく)
誰かと接触しそうになったらすぐにログアウトするつもりだったらしい。
ホワイトハッカーのやることはよくわからないが、しかし、追跡能力は確かだ。
ラファエラ「私たちが追跡していたNeon Coreを使ったノア君はネオグライドで強くて優秀なプレイヤーへと変貌していった。『脳と融合したAI』と『アバターと融合したAI』のふたつを持ち合わせているのはノア君たったひとりよ」
(衝撃的な事実だが、もしかしたら僕の脳もアバターもAIが主導権を持っているのか?)
コニック博士「ナノテクノロジーのAIは宿主の情報や知識を整理する役割を持っている。
ハッキングする、しないは別にしてね。そのため宿主が潜在能力を発揮しやすくなるんだよ。
ラチエ博士がやろうとしていたことは人間が持つ潜在能力を活性化させることだったようだ。しかし、それは軍事産業メーカーとラチエ博士がやりたかったことだったとしたら?」
一瞬、背中に寒気が走った。
(それは僕たちが考えていたことよりもずっとスケールが大きな問題だ・・・)
コニック博士は続けた「つまりNeon DustにナノテクノロジーのAIを忍ばせ、プレイヤーの情報をハックしてデータを集めていると考えられる。軍事産業がよくやる戦闘シミュレーションの一環だよ」
ラファエラ「ネオグライドは、さぞかしイイ情報が手に入るのでしょうね」
ラファエラが仮想現実の中のe-sports『ネオグライド』を皮肉った。
(仮想現実のサバイバルゲームをスポーツ化した『ネオグライド』が、まさか戦闘シミュレーションのデータ集めに使われている・・・?)
アンジェリカ「エルディオスの街にフロランという人物が現れて、ネオグライドに参加していたけど彼が率いていた仲間はAIだったわ。
ネオグライドの運営側が送り込んだbotその中でもパラメータ異常を起こした存在『クラッシュマスター』をフロランたちが持っている武器で倒してしまったの。
ゲームの中でも世界の均衡を壊す存在、異分子が現れてしまったの。
つまりそれは現実世界でも起きる日は近いとエルディオスのAIは考えた。そして、ノア君とレナータさんには、我々の仲間として協力してほしいという流れになったの」
コニック博士「実際に何かが起きる予兆は既にある。
研究所からラチエ博士は姿を消し、その当日、大きなロボットが暴れていたという証言があった。我々には君たちの協力が必要なんだ」
ノア「わかりました。協力しましょう。僕たちにもその情報が必要だった。
恐らく仮想現実の中だけの話じゃないですよね?」
アンジェリカ「その通りよ。現実の世界で起きている何かはいずれ世界を巻き込むことになるでしょう。その前に先手を打ちたいの」
こうしてノアとレナータはLumen Arkの組織に加わることを決意した。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/nd8b5bbf0ebb8?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




