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ブラック企業のホワイト支店  作者: マツグチラムネ
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第29話 土下座

宮本→主人公

中山→お姉様事務員

多和田→営業マン

高橋→配送マン

高橋「よし、帰ろう。やっぱり今日は無理だったんだよ。諦めは肝心だ。みんな帰ろう。さぁ帰ろう」


高橋さんはそう言うと、その場で倒れ込んだ。

現在時刻は16時。完全に遅刻が決定した。


多和田さんも項垂れるようにその場でしゃがみ込んだ。


多和田「あぁ…終わった……」


そう呟く多和田さんの顔はかなり青ざめており、血の気がなくなっていた。そして、それと同時に多和田さんの車内ケータイから着信の音が鳴り響いた。


多和田さんは着信の宛先を見て天を仰いだ。


多和田「客先からだ……」


頭を抱えながら出ようか出るまいかで多和田さんは悩んでいるようだ。その様子を見て、高橋さんは元気のない薄笑いを浮かべた。


高橋「さっさと出たら?そしてこう言うんだ。『やっぱり今日は無理でした。突然の予定変更は困ります!!』ってな!」


多和田「そんな事言える訳ないだろ!言ってしまったらそれこそもう買ってくれないぞ!」


高橋「しょうがねぇじゃん。先方も我儘過ぎるんだよ!」


多和田「はぁ…今はもう君と口論すらしたくないよ…。あっ、着信が切れた!」


高橋「……」


疲れ果てている二人を見ながら、俺は喉の渇きを癒すため、橋本さんにもらったエナジードリンクを飲んで一息ついた。


さぁ、一体これからどうするのだろうか。あまり余計な事には関わりたくないので少し多和田さんと高橋さんから距離を置いて立ち尽くす。


そんな俺の様子を見て、中山さんは俺の耳元でボソッと呟いた。


中山「コラ、何距離を置こうとしてるのさ!」


宮本「えっ⁉︎嫌、違うんですよ。空になったエナジードリンクの缶を捨てに行こうとしただけなんですよ!」


俺は慌てて弁明をするが、中山さんは怪しげな視線で俺を見つめる。


中山さんは溜息を吐き、多和田さんに言った。


中山「多和田さん、取り敢えず一度先方に電話をかけてくださいよ。こうなってしまったからには、正直に伝えて、この後どうするかのやり取りをした方がいいと思いますよ?」


多和田さんはしばし腕を組みながら熟考したのち、悟りを開いたような顔をして、ケータイで連絡を入れた。


そこで俺はとんでもない光景を目の当たりにした。


『テメェ、ふざけんじゃねぇぞゴラァァァァァァァァァァ!!!!!さっさと今すぐ現場に持って来やがれぇぇぇぇぇ!!!!!!!


多和田さんが先方に着信を入れたと同時に、先方から怒号が俺にまで聞こえるくらいの音量で辺りを鳴り響かせたのだ。


誰もいないのペコペコと必死で頭を下げながら謝る多和田さん。その様子を見て顔面蒼白になる中山さんと高橋さん。


あまりにもお怒りになっている先方の怖さに、俺もまた、驚きを隠せなかった。


宮本(怖っ!ヤーさんじゃねえか!!)


しばらくその怒号が続いた後、プツリと先方からの連絡は途絶えた。


途絶えたと同時に多和田さんは腰を抜かし、その場で再び倒れ込んだ。


宮本「多和田さん、大丈夫ですか⁉︎」


高橋「多和田!大丈夫⁉︎」


中山「多和田さん⁉︎」


皆で声をかけるが、多和田さんは完全に意気消沈していた。


多和田「……すまん、今から現場に行くぞ」


高橋「……分かった。おい宮本、行くぞ」


宮本「……了解です」


中山「はいこれ、伝票。どうかご無事で」


こうして俺と高橋さんと多和田さんは大きな2トントラックに乗り込み、美濃加茂の現場へと出発した。


そして美濃加茂の現場に着いたのは17時半過ぎだった。現場に到着し、再び先方にしっちゃかめっちゃかに怒られた。


そこで俺達3人はその場で土下座をして謝った。


土下座をしながら俺は思った。


『成る程、このために土下座の練習が生きてきたのか』と。


入社式でやったマナー講座で、絶対に土下座の練習なんて必要ないだろうと思っていた。でも本当にしなければならない時があったんだ。初めて俺は心の底からあの毒島を尊敬してしまった。


3人で大きな声を合わせて叫んだんだ。


『大変申し訳ございませんでした━━━━!!!』





お久しぶりの投稿です。

不定期更新が続きますが、暇つぶしがてらで結構ですので、是非是非お楽しみください。


さて、私事ではありますが、現在2作目となる公募用の小説が完成に近づきつつあります。2作目の応募を終えましたら、次は漫画のネームの応募に挑戦してみる予定です。


やっぱり創作は楽しいです。では、また!

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