第2話 はじめましてブラック企業
登場人物
宮本→主人公
受付→何か怖い事務員
古田→ブラック企業の人事担当
教師→大学の就職課の先生
三月十五日に卒業式を控え、気楽な残りの大学生活を送っている三月上旬、内定先の松黒商事からスマホに一本のメールが届いた。
なんだろ?と思い、メールを開けると、そこにはなんとも厳しいお言葉の内容が書かれてあった。
『二〇□□年度新入社員の皆様へ
四月二日に予定していました入社式ですが、弊社の都合により、日程を三月十五日に
変更させていただきました。
突然の変更に驚かれる方もおられると思いますが、三月と言うこともあり、新入社員の皆様にはそろそろ社会人の自覚を持って頂きたいと思っております。
まずそもそも四月に入社式をする企業は三流です。まだ卒業旅行や友人との飲み会などといったくだらない行事に勤しんでおられる方々はすぐにでもそういった娯楽行事をやめるようお願いいたします。そして一刻も早く生活リズムを直すよう心がけてください。
また、入社式の時間帯と場所などの案内は本メールに添付してあるURLを参照願います。これから社会人として、大変厳しい現実が近づいてきていますが、風邪などひかないよう健康に気をつけてお過ごしください。
松黒商事(株) 古田人事採用担当部長 』
………えっ?
三月十五日? 去年の面接の時、入社式は四月からとか言ってたじゃん!
てかまて、完全に卒業式と駄々被りじゃん。
どーすんのよ。あとこの弁綴った人めっちゃ煽ってるし…
突然の内定先からの知らせに、俺は慌てて連絡をいれた。
受付『はい、松黒商事の△△です』
宮本 「あっ、お世話になります。今年御社へ入社させていただく宮本と申します」
受付『ハイハイ、新入社員の宮本さんですねー。御入社おめでとうございます。それで御用件は何でしょうか?』
宮本 「はい、実は先ほど御社からの入社式の連絡をいただいたんですけど、実は三月十五日の入社式の日、自分丁度その日に大学の卒業式がありまして、入社式と被ってしまうんですよ。どうしたらいいかと思いまして…」
受付『あーそういう事ですかー。では古田人事担当に代わりますので少々お待ちください』
ニュウシャシキユウセンニキマッテンダロバカガ。
えっ何今?
何か物凄い怖い事言ってたような気がしたんだけど。てか受付の女性の方態度悪!そんでこの保留中の流れる音楽、すげー不気味なんだけど…。
…十分後
古田『はい替わりました。古田です』
宮本「あっ、お世話になります。今年入社式の宮本です」(出るの遅えなぁ)
古田『あー宮本クンね。用件は聞きました。入社式を優先してください」
宮本「えっ!?」
古田『入社式を優先してください』
宮本「えーーーーーー!?」
古田『ほう、何か文句でもあるのかね?』
古田「えっ嫌、特には…。わっ分かりました。十五日の時はよろしくおねがいし…」
ガチャ、プーップーップーッ
宮本 (!?きっ、きられた…。おいまて、俺の行くこの会社ちょっとやばいんじゃないか?)
俺はすぐにケータイで、内定先である松黒商事の口コミを調べた。そして出てきた口コミを見て、俺は驚愕した。
『残業ヤバイ』
『完全結果型主義のため、売上の悪い支店は一向に給料が上がらない』
『始業時間はAM七時からPM十時まで。その上残業が重なると、日を跨ぐ事も』
『離職率が三ヶ月で三十パーセント』
『週休二日制と書いてあるが、完全ではないため、月に一度しかない』
『辞めたい辞めたい辞めたい辞めたい辞めたい』
あっ……絶対やらかした。
これ完全ブラック企業じゃん。あー俺もう終わったわ。
思い返せば不思議な点は幾つかあった。
あまり気にしていなかったのだが、普通十月ぐらいにあると聞く内定式が無かったし、説明会でも業務形態についての説明は何一つ聞かされなかった。
宮本 (このタイミングでカミングアウトしてきたのかよ…)
あまりにも突然すぎる事態に俺の思考回路はショート寸前、もう途方に暮れるしかなかった。
その後、取り敢えず俺はまず友達やゼミの先生に卒業式に行けない事をメールや電話などで伝えた。そしてみんなからは
『おい、お前の会社ヤバイだろ』 『なんでそんなトコ選んだんだよ笑』『社畜乙』『辛かったらいつでも飛び降りるんだぞ』
など散々言われまくった。
宮本(畜生、あいつら結構薄情だ‼︎あとあの就職課…マジで覚えてろ)
手を出すつもりはないが、流石にコレは酷いだろと、あの就職課の先生に文句一つは言わないととてもじゃないが気がすまない。
俺は怒りを抱え、大学の就職課に足を運んだ。
宮本「失礼します‼︎‼︎」
声を荒げて入ったが、そこには全く知らない若そうな男性教師別が一人キョトンとこちらを見て座っていただけだった。
若い男性教諭は俺に問いかけた。
教師「う〜んと…何かご用ですか?」
宮本「大有りですよ!⬜︎⬜︎先生何処っすか?お話があるんですけど!」
教師「えっ、⬜︎⬜︎先生ならとっくの前に富山の大学へ転勤なさったよ」
宮本「はぁぁぁぁ!?」
びっくり仰天。
なんと俺をあんなクソ企業に勧めた先生は二月初めに別の大学へ転勤してしまったらしく、もうすでにここにはいなかったのだ。
宮本「…そうですか、分かりました。失礼します…」
落ち込む俺を見て何かあったのかと思っただろう。若い男性教諭は再び俺に話かけた。
教師「あの、⬜︎⬜︎先生に何か用でもあったのかな?もし良ければ私が電話で伝えておくけど…」
宮本「いえ、大丈夫です。もういいんです」
この苛立ちは一体何処へぶつければいいのだろうか。
ただただやりきれない気持ちが込み上げてくる。俺は何故か疲れてしまい、その日は流石に寝込んだ。
そしてメールが届いた次の日からは、ほとんど家に篭って残りの休みの日々を過ごした。
~入社式前日の夜~
宮本「明日か…あーあ。マジで嫌だなぁ」
生きる屍のような生活を過ごしていたが、時の進む力はあまりに残酷で、気づけばいよいよ明日は入社式となってしまった。
宮本 (えーっとスーツはコレ、ハンカチはこれにして…あっ、あとネクタイはー。)
取り敢えず準備は整えた。流石に忘れ物はしたくないからな。
明日は朝も早いため、二十一時過ぎにはベッドについた。でもなかなか眠れない。
宮本 (明日からいよいよ社会人かぁ。俺はこれからあのブラック企業でどんな社会人人生を送るのだろう…)
正直実感はあんまりない。
こんな事を思うのは俺だけなのだろうか?意外と世の中の新入社員達もみんなこんな気持ちなんだろうか。
ベッドで横になりながら俺はいろいろ考えた。
これからの社会人生活をどう過ごしていくかを。そして一つの決心をした。
ブラック企業で働くという事が決まってから、俺はもう覚悟を決めた。
やはりあんなところで長くは働く気はない。
辞めたいと思ったらすぐ辞めて転職活動をしよう。そう決意した。




