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第7話「女神再び」

第7話目になります。楽しんで頂ければ嬉しいです。

   第7話「女神再び」


「ユート、どうしたんですか?」


 俺がアリスとの出会いを思い出していると、料理を作り終えていたのかアリスがこちらを不思議そうに眺めていた。


「ああ、ごめん。ちょっとアリスとの出会いのことを思い出していたんだ」


「そうだったのですか。でも、いざ思い出されると恥ずかしいですね」


 アリスは言葉通り恥ずかしいのか、頬を赤く染めている。


「でも、改めて言う事ではないかもしれないけど、あの時アリスを助けられて本当に良かったって思ってるよ」


「お礼を言うのは私の方です。ユート、私を救ってくれて本当にありがとうございました」


 そう言って銀髪長髪の彼女は優しく微笑むのだ。作り笑いでもなければ感情を押し殺した笑いでもない心からの笑顔で。


 こうして笑い合えるようになって、俺は嬉しかった。そして、もう一つ変わったことと言えば、大きくは俺とアリスの関係だろう。

 俺とアリスは一年前に結婚していた。一年前にアリスからプロポーズされたのだ。その時、俺たちは別に付き合っていたわけではなかったので、いきなりのプロポーズに俺は大層驚いていた。しかし、俺はあの女神との約束のせいで、3年しか生きられないらしかったので、最初はアリスのプロポーズにものすごく戸惑っていたが、アリスの熱意や、何よりも俺もアリスとは一緒にいたいって思ったことや、何だか先を越されて情けないと思う部分もあったが、俺はアリスのプロポーズを受け入れたのだ。


 もちろん、その後に俺から再度アリスにプロポーズし直したのだが。


 アリスの場合は「私をユートのお嫁さんにしてください!」って真剣に言われただけだったので、俺は急遽指輪を用意して「俺と結婚してくれ」と言ったものだ。


 しかし、2年前は人間なんて信用できないとか言ってた癖して、結婚なんてしているのだから、俺は自分自身のことを笑ってしまう。きっと、昔の俺が今の俺を見たとしても信用しないだろうな。


「ユート、またぼぉ~としていますよ」


 声をかけられ、意識を前に戻すとほっとかれて不満だったのか、アリスが頬を膨らませ不満を露わにさせていた。


「ああ、悪いアリス。ちょっと、あの時のことを思い出してた」


「むう~、今度はどの時ですか?」


「俺とアリスが結婚することになった時のこと」


 俺の言葉にアリスは顔を真っ赤に染めた。まさか、その話がくるとは考えていなかったのだろう。


「もう、意地悪をするユートは嫌いです」


 アリスは赤い顔のまま、そっぽを向いてしまう。別に意地悪をしたわけじゃないんだけどな。


 俺はそう感じながらも、アリスの名を出来るだけ優しく呼んだ。アリスは渋々と言った感じにこちらに振り向いてくれる。


 あれから、2年が経ち15歳になろうとしている彼女はかわいさの中に綺麗さを持ち合わせていき、ますます魅力的な女性へと成長していた。そんな彼女が俺の嫁と言う事実が今でも信じられないと思ってしまう。


 俺はそう感じながらも、アリスの小さな唇にキスをした。


「悪かったって、これで許してくれないか?」


「むう、何か釈然としませんが許します。それに、せっかく作った料理が冷めてしまいますし」


 何とか機嫌を直してくれたようで良かったっと俺は思っていた。すると、気を許したせいなのか、俺の腹が盛大に鳴った。

 それを聞いたアリスはくすくすと可笑しそうに笑っている。俺は何とも言えない気持ちになり、頬をポリポリと掻いてしまう。


「うふふ、仕方ありませんよ。今日もモンスターを一杯倒しながら、大宮殿の情報を集めていたのですから。それでは食べましょ。今日も腕によりをかけましたから」


「ああ、いつもありがとうアリス」


 俺の素直な気持ちにアリスはえへへと笑うのだった。


***********************


 あれからアリスが作ってくれたご飯を食べ、風呂に入って(この世界にもその概念はあり、衣食住に関して言えば元の世界と大差はなかった)、今はベッドの中にいた。ちなみに、俺の胸にすり寄っていたアリスはすでに寝息を立てて眠っている。アリスはいつも、俺の胸の中で眠っていた。何でも、無事に生きている俺の姿を見て胸の中で眠るとものすごく安眠できるらしい。


 俺はそんな眠るアリスの頭を優しく撫でながら、今後のことを考えていた。残された俺の時間は1年間だ。それまでに、俺は大宮殿に辿りつかなければならないのだが、この2年間ずっとその手の情報をアリスと2人で探してはいたのだが、全てが空振りに終わっていた。


 あの女神は本当に大宮殿に行かせる気があるのかすら思ってしまう。


 それに気になることは他にもある。以前、アリスのことを利用していたジャルガンと言う男だが、その男は俺のことを見て『お前がこの世界を終わらせる者ってわけか』と口にしていた。あれは一体どういう意味だったのだろうか? それにあの男が使った力は何だったんだ?


 あれ以来、そのようなことも言われていないし、あんな力を持っている奴にもあったことがなかった。それじゃあ、あれは本当に一体? 駄目だ、思考が堂々巡りになっている。


 この問いはずっと自身の中でしてきてはいたのだが、答えは出ないままだった。


「本当にどうしたもんかな」


「ユート……? 眠らないのですか?」


 寝ていたはずのアリスが、眠そうに目をこすりながらこちらを見ていた。


「ごめん、起こしちまったか?」


 俺の問いにアリスは首を横に振った。俺はそんなアリスの頭を撫でると、眠りにつくために体勢を整えた。アリスはそんな俺を満足そうに見ると、再び眠るために俺の胸に頭を擦り寄せてくる。その際に、アリスの甘い匂いが鼻孔をくすぐったが、何だか安心する匂いだなっと感じた。その匂いやアリスの温もりを感じ、それがとても心地良くて眠気がやってくる。


「おやすみなさいです、ユート」


「ああ、おやすみアリス」


 こうして夜は更けていくのだった。


***********************


 空が白み始めた頃、俺はアリスを起こさないようにベッドから出ると、剣を背負って近場の林に入り、素振りをしていく。


 俺は毎朝、アリスが起きる前まで近くの林で剣を振っているのだ。


 俺たちは今、辺境の町【トゥンナ】を拠点に活動していた。俺が始めていた町【パーナ】からは北西へ数十キロ離れた場所にある。ここに越したのは、アリスと話した結果ここで活動しようと言う事になったのだ。


「ふっ! はっ!」


 俺は無心に剣を振っていく。あの戦いで俺はもっと強くならないといけないって思ったんだ。

 だから、今日も必死に剣を振る。


 しばらく、振り続けていると、空が青くなり始めていた。

 

 そろそろアリスが作った朝ご飯が出来た頃合いだろう。あんまり遅いと、アリスが拗ねてしまうだろう。実際、以前夢中になって遅くなってしまったら、家にはものすごく不機嫌になったアリスが待っていたのだ。


 あのアリスの機嫌を直すのにものすごく苦労したのを覚えている。まあ、そんなアリスの姿もかわいかったのだが。だけど、あれはあれで大変なので俺は家に戻ることにする。しかし、俺は戻ろうとした足を止めることになった。なぜなら、そこにはあの女神がいたからだ。


「女神さま?」


「久しぶりね、優人」


「どうして、あんたがここに?」


 どうして、女神がここに? この女神は本当に気まぐれで、この女神とはあの盗賊団の一件以来会ってはいなかった。それがどうして、今日ここにいる?


 俺が不思議に思っていると、女神はくすくすと笑いながら言葉を紡ぐ。


「まあまあ、そんなに不機嫌そうな顔をしなくても良いじゃない」


 別に不機嫌になっていたわけではないのだが。


「それで、あんたが出て来たってことは、何かあったってことなのか?」


 俺は当たり障りのない質問をした。俺はそこまでの話術はないため、ドストレートな質問をぶつける。とにかく、早く用件を聞こうと。


「せっかちね。まあ、あなたの言っていることは間違ってはないけど。それで、優人。一つあなたに教えてなかったことがあるわ」


「俺に教えてなかったことって?」


「この異世界【ニルヴァーナ】のことでよ」


「っ! この世界のことだと?」


 この異世界【ニルヴァーナ】。確かに分からないことだらけだとは思っていたが。


「この世界【ニルヴァーナ】は、5つの世界が重なり合って出来ているのよ。そして、あなたが目指す【大宮殿】は、5つの世界のどこかに存在しているの」


「それはつまり、ここには【大宮殿】はないってことか?」


「それは分からないわ」


 女神の言葉に、俺は衝撃を受けた。世界が5つもあるだって? んな馬鹿げた話があるのか? だけど、俺がこの異世界に飛ばされたのだって、ある意味じゃ馬鹿げたことなのかもしれないけど、だけど、そんなことがあり得るのか? 複数の世界が重なり合っているなんてことが。


 俺の疑問を見透かしたかのように、女神は言葉を続けていく。


「あり得るのよ。この()()()()ならね」


「言ってる意味が分からないんだけど」


 俺は素直な感想を口にする。パラレルワールド。つまり、並行世界のことなら聞いたことがあるが、複合世界何て聞いたことがなかった。


「だから、優人この5つの世界を巡って【大宮殿】を探し出しなさい」


「探し出しなさいって言われても、その世界を巡る方法さえ分かってないのに、どうすりゃいいんだ」


 俺は思ったままのことを口にする。本当にどうしたら良いのやら。


「それはそうと、優人。この世界の在り様は理解したわね」


 女神の問いかけに俺は頷く。


「そして、これから話すことがあなたに会いに来た一番の理由ね」


「話ってまだあったのか。それに、口ぶりから今から話すことの方が重大な気がするだけど」


 俺が聞き返すと、終始笑みを崩さなかった女神がいきなり真顔になった。


「優人、この優人たちがいる一つ目の世界は後数日の内に滅びるわ」


 女神の言葉に俺は目を大きく見開いた。


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