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第5話「優人VSジャルガン」

第5話目になります。そして、本日21時には第6話目も投稿いたしますので、よろしくお願いいたします。

第5話「優人VSジャルガン」


 俺は呟く。突如として頭に浮かんだ呪いとも言える言葉を。俺をこの世界に送り出したあの言葉を。


「女神の加護があらんことを」


 突然、俺は青白い光に包まれた。と思っていたら、目の前には俺を送り出した女神その人物がいた。


「久しぶりね、桐川優人」


「あんたは、あの時の女神さまか」


「あら、覚えててくれたの。嬉しいわ」


 女神はそう言うとくすくすと笑っているが、すぐにその笑みを引っ込めた。


「それで、あなたは気に入ってはくれたかしら。私の餞別に」


 餞別とはあの剣のことだろうと俺は思っていると、またもや女神は笑う。


「確かに剣もそうなのだけれど、他にもモンスターと渡り合えるように最低限の能力は与えてから送り出してあげたのだけど」


「道理で軽々と戦えたわけか。て言うか、モンスターがこの世界にはいて、戦うなんて一言も聞いてなかったぞ」


 俺の文句に、女神は「あら? そうだったかしら」ととぼけている。


「それで、優人あなたに聞くわ。あなたは目の前の少女を助けたいのかしら?」


 目の前の少女とはアリスのことだろう。俺は迷わずに即答する。


「ああ、助けたい! 目の前で傷付いている少女を助けたいんだ!」


「良く言ったわ、優人。だったら、叫びなさいこの言葉を」


 俺は女神に言われた通りの言葉を口にする。


解放!(リベラシオン)




 青白い光が止み、そこには両手両足を拘束していた鎖が外れ、あの青い剣を持って立つ少年の姿があった。少年の名は桐川優人。突然、女神の気まぐれに寄ってこの世界に召喚された普通の人間だ。


 突然の出来事に、少年以外の人物は混乱していた。まさか、鎖を引き千切り立っているのにも驚いたが、その少年の手に握られている剣にも驚かされることになった。なぜなら、その剣は少年の手に届かない所に置かれていたはずだ。だから、その剣が少年の手の中にあるはずがないのだ。


「よくもアリスを傷つけ泣かせてくれたな」


 俺は大柄の男と細身の男を睨みつけると、一気に地面を蹴った。


 邪魔だった鉄格子を横薙ぎに剣を払って破壊する。その際に壊れた鉄格子を蹴り飛ばし、奴らに飛ばすがさすがに奴らもやり手のようですぐさま回避されてしまう。


 俺はその隙にアリスに近付いた。


「アリス、すぐに終わらせてくるから待っててくれ。話はその後な」


 アリスは泣きながら頷いてくれる。


 俺はそんなアリスの姿を見て、一安心すると敵に向き直る。


「あんたたちは絶対に許さない」


「ほう、許さないね。忘れたのか? お前は一度このグライスに敗北してるんだよ。それなのに、そう言えるってどんだけお前の頭はお気楽に出来てるのか、頭の中を解剖して見てみたいもんだわ。いや、いっそのことぶっ殺して頭の中を見てみるか。グライス、斬り殺せ」


「御意」


 グライスと呼ばれた大男は、以前戦った時と同じグレートソードを構えると、一気に間合いを詰めてくる。


 上段からの斬り下ろしか。だけど、遅い!


 俺はその攻撃を剣で受けるのではなく、少ない動きで回避した。そして、その際に脇腹を斬りつける。


「ぐっ……」


 グライスからうめき声が漏れるが、すぐさま反撃してくるので、それを剣で次から次へ受けていく。そして、しばらくの応酬の後再び鍔迫り合いになる。


「用があんのはあんたじゃねぇ!」


「ボスには指一本も触れさせはしまい!」


「退けよ! 解放!」


 俺の声に呼応するかのように、俺の剣の先から白い霧のようなものが発せられる。そして、次の瞬間驚くべきことが起きる。


 ピキピキピキ。

 

 何かが凍り付く音が聞こえたかと思うと、一瞬にしてグライスが持っていた剣ごとグライス自身までもが凍り付いてしまう。


 俺は剣を呆然とした表情して立っているボスの男に向けた。


「後はお前だぜ」


 男はしばらくの間、呆然と突っ立ていた。しかし、何かに気が付いたのか声を上げて再び笑い出した。


「あはははは、なるほど。そうか、お前が。お前がそうだったのか」


「何がおかしい?」


「いやいや、それじゃあ、グライスには歯が立たないわけだ」


 男が不敵に笑うと、呟く。


絶望!」(デスペレイション)


 男は黒い光に包まれ、光が止んだ頃には黒い鎧を纏い黒剣を手に立っていた。ゲームで出てくる暗黒騎士のような感じと言えば良いのだろうか。そんな感じの格好をしていた。しかし、今驚くのはそこではない。男は今確かに俺と同じような力を使った。それはつまり、この男も女神の加護を受けているってことになるのか?


 疑問に思ったが考えている余裕はなかった。男が動いたからだった。


 気が付いたら目の前に男が立っていた。


「なるほど、お前がこの世界を終わらせる者ってわけか」


 男は呟くと、その剣を振り下ろしてくる。俺はそれを剣で受け止めるが意外にも重く俺は片膝を着いてしまう。


 こんな男のどこにこんな力が!


 俺はそう感じつつも、すぐに答えに行きつく。それも女神の加護と言ってしまえば説明が付いてしまう。実際に俺もその女神の加護のおかげで身体能力などが強化されていたためである。


「俺が世界を終わらせる者ってどういうことだよ!」


 男は答えない。その代わりに、力任せに剣を振り下ろしてくるので、俺は押し戻すと後ろに大きく飛んで距離を取った。


「暗黒騎士の名を得たジャルガン。その名において貴様を倒す」


 男――ジャルガンはそう宣言すると、再び姿を消した。否、消したのではなく目視不能のスピードで動いたのだ。


 いきなり目の前に現れたジャルガンに戸惑うが、俺はすぐさま攻撃に反応して剣でガードする。


「解放!」


 再び剣の力を解き放ち、ジャルガンを凍り付かせ動きを封じようかと思ったが、凍り付く前に逃げられ回避されてしまう。


 やっぱり、そう簡単には当てさせてはくれないか。


 今度は俺から攻めていく。連続で剣を振り下ろし、振り上げ、横薙ぎに払いを繰り返していくが、ジャルガンはすべて正確に把握し避けていく。


 くそっ! 当たらない!


 内心の焦りからか、剣がぶれてますます攻撃が当たらなくなってしまう。


「何だよ。警戒していたのにその程度なのか。がっかりだよ。仕方ねぇ、お前に一つ面白いものを見せてやるよ」


絶望!(デスペレイション) 覚醒(ウェイク)!」


 ジャルガンの剣が黒い光を纏い、その光は伸びていき光線剣(レーザーソード)のような形状になった。それはつまりリーチが延びたことにより、相手の間合いが広くなったことを意味していた。

 そして、俺の凍結させる技は零距離でしか使えない。それは相手の完全有利も意味していることになる。


「お前とやるのももう飽きた。だったら、こういうのはどうなのかな!」


 ジャルガンはそう言って、剣を振り上げるとそれを俺ではなくアリスに振り下ろそうと狙いを定めている。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」


 俺は叫び駆け出した。あいつを止めるために。そして、俺は見た。ジャルガンが不敵に笑う姿を。


 

「自分の無力さを抱きながら死ねよ! くそが!」


 ジャルガンはそう叫ぶと、アリスを狙っていた剣筋を驚くべき速度で俺に変えたのだった。


 俺は咄嗟にガードするが、長大なリーチにはどうしても勝てず肩から腹にかけて斬られてしまう。


 地面に倒れ伏した俺を見てジャルガンは高笑いするのだった。


***********************


 優人の叫びで我に返ったアリスは、優人の方に視線を向けた。そして、そこで驚くべき光景を目の当たりにすることになる。


 それはたった今、目の前で殺されて欲しくないと願っていた人が自らのボスの手で体を斬られている姿だった。そして、斬られた優人は力なく地面に倒れ伏した。


「ユート……」


 アリスの口からはかすれた声が出るだけだった。力の入らない足に鞭を打ち何とか倒れた優人元に駆け寄りその肩を揺すった。


「ユート、ユート!」


 優人からの返事はなかった。さっきまで、自分に待っていて欲しいと言って戦いに赴いた少年は、今は力なく地面に倒れている。それも、自分が立ち直れずにいる時に自分を庇って殺されてしまった。


「ユート、ユート!」


 それでもアリスは少年の名を呼び続けた。


 最初は珍しくて様子を見ていた。この地域では珍しい黒髪の少年だなっと。そして、次の標的は優人に決めた。しかし、いざ関わってみると優人は今まで関わった男たちとはどこか違った。以前に関わった男たちは下卑た笑いを隠そうとせずアリスについて来ていた。だけど、優人はそんな様子もなく、むしろアリスの気持ちの方が温かくなった。そして、アリスはいつ振りか分からない心からの笑顔を浮かべることが出来た。だから、この少年には死んで欲しくない。リーゼのように、自分の両親のように自分の前からいなくならないで欲しいとアリスは心の底から思っていた。


「ユート、ユート、ユート、ユート………………」


 何度も何度もアリスは優人の名を呼んだ。だが、優人からの返事はない。


「ユート、死なないでください!」


 アリスは涙ながらにそう訴えるが、優人が動く事はなかった。それどころか、地面には優人の血で池を作り始めている。このままでは遅かれ早かれ優人は確実に死ぬだろう。


「許しません」


 アリスはゆらりと立ち上がると、腰の鞘から剣を引き抜いた。自分の家族の命と今まさにアリスの大切だと思ってしまった少年の命を奪おうとしている男を倒すために。


「許さないね。何を許さないかを聞きたいもんだな」


 ジャルガンはアリスの姿にも笑うと、やってみろとばかりに剣を構えずアリスの攻撃を待っている。


「舐めないで!」


 アリスは一気に間合いを詰めると、全力の上段斬りを下ろした。しかし、ジャルガンは簡単にその攻撃を弾いていく。


「くっ……」


 だが、アリスはそこで諦めず連撃を繰り出していく。だけど、ジャルガンはそれさえも簡単にあしらっていく。


「おらおら、どうした! お前の力はそれだけなのか!」


「まだ……まだです! あなただけは絶対に許しません」


 上から下から左右からと、色んな方向から斬撃を繰り出していく。


「いい加減、鬱陶しくなってきたな。覚醒!」


 再びジャルガンの剣が黒い光を纏い光線剣を作り出す。


「お前も死ねよ」


 ジャルガンは冷たく言い放つと、アリスの剣を弾き飛ばしてしまう。そして、がら空きになったアリスの体にその刃を振り下ろした。


 アリスはぎゅっと目を瞑った。やってくる痛みに震えながら。しかし、いくら待てどもその痛みはやってこなかった。

 恐る恐る目を開けると、目の前には自分よりも大きい背中があった。


「っ……! ユート」


 名を呼ばれた優人は振り向くと、アリスに向かってニカッと笑いかける。その優人の顔を見てアリスの瞳には再び涙が浮かんでいく。


「アリスは絶対に殺させはしない! 俺が絶対に護る!」


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