破章 06 シスコン
何かの気配を感じて、僕は振り向いた。何かが変わっている。間違い探しの最後の一個が見つからないような気分だ。まぁ、いいか。
再び僕は、何かを感じて振り向いた。気にするな。気にしたら負けだ、と僕は自分に言い聞かせた。
「…おにぃ」
分かった。間違い探しの最後の一つが。答えは妹がだんだん、僕に近づいている。最初に見たときは、ソファから立ち上がって、こちらを見ていた。二度目のときは、キッチンの入口付近まで来ていた。分かったときには、すでに僕の腕は絡み取られていた。
「すみれ、どいて」
「後、三十秒」
「三十秒たったら、どいてくれるのか?」
「ううん」
素直な良い子だね。
まぁ、後は煮込むだけだから、別段問題は無いのだが。万が一、誰かにこの光景を見られたら、言い訳の一片も思いつかないだろう。
「変態シスコンがいる」
空耳だ。きっと疲れているのだろう。ただの幻聴が聞こえるだけだ。
「おにぃ、お客さんみたいだよ」
「ごめん、すみれ。僕は耳か脳が、可笑しくなったのかも知れない。ちょっと病院に行ってくるよ」
「君、この時間はもう病院はしまっているよ」
「有木みどりぃぃ。今すぐ、不法侵入で警察に引き渡してやる」
「じゃあ、その前にこの事実をあずさに伝えようか」
「すみませんでしたぁぁ。どうか、この事だけは、誰にも話さないで下さい」
土下座していた。僕には一切の躊躇が無かった。
「お姉ちゃん。何させてるの」
「凛、私は何もさせてない。勝手にやっているだけだ」
「えぇ?自分からやっているの?嘘でしょ?」
凛ちゃんまで居るのか。やばい、このままだと凛ちゃんにまで変態で、シスコンで、自分から土下座するような、クズに思われてしまう。
「私は、どんなおにぃでも愛しているよ」
有木姉妹の中で、僕のシスコン株が急上昇しているだろうなぁ。
僕はゆっくりと立ち上がって、カレーの具合を確かめた。
「カレー、食べて行く?」
「じゃあ、甘えさせてもらおうか。シスコン」
僕は今後、シスコンがあだ名になるようだ。




