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僕が綴る物語  作者: ハルハル
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破章 04 妹


「さぁ、上がってくれ」

 招かれ上がると、小さいながらきれいに整理された部屋があった。小さな卓袱台に君は早速教科書を広げる。

「うん?家族はまだ帰ってきてないのかな?」

「もうそろそろ帰ってくると思うが」

 君が言い終わると同時に、ただいま、と言う透き通った声が聞こえた。足音は軽やかなリズムを奏でて、そのまま僕達の所に着いた。

「お帰り、凛。そろそろ帰ってくる頃だと思ったよ」

「ただいま、お姉ちゃん。あれ?そっちの人は、もしかして例の彼氏?」

 例の?例のとは何のことだろう。て言うか、妹が居たんだ。

「この家には、私達二人だけが暮らしているんだ」

 君はそういうと、立ち上がって、台所のほうに行った。お茶でも入れに行ったんだろうか。

「はじめまして、有木凛です。お姉ちゃんの彼氏さんですよね?」

「ああ。どうもご丁寧に」

「いつも話を聞いてます。どうしようも無い、変態さんだって」

 凛ちゃんは笑って言った。いや、笑い事じゃないぞ。自宅でさえ僕の悪口を言っているのか。そこの所のイメージを直しておきたいけど、凛ちゃんはすっごく笑顔になっているなぁ。

「初めてなんです。あの時以来、お姉ちゃんがこんなに誰かの事を話してくれたのは。だから私もすごく、その彼氏さんがどんな人か気になっていたんです」

にこにこしていて、とても人当たりのよさそうな子だな。見た目は姉ととてもよく似ていた。その美しくかわいらしい外見で、こうも目の前で笑顔で居られるとこっちもなんだか照れくさくなってくる。

「おい、君。私の妹に欲情しないでくれ。汚らわしい」

「僕は、野獣ですか!」

「おや、違ったのかい?」

「君は、自分の彼氏を何だと思っているんだ」

「私の理解者だと思っているが」

「あうぅぅ」

 君は、広げた教科書をしまって、代わりにお茶を三つ置いた。

「これが凛ので、これが私の。そして、この塩酸と硝酸入りのが君のだ」

「殺す気か!」

 確か、塩酸+硝酸=王水だったかな?何でも溶かしてしまうという最悪の液体。飲んでしまえば最後、僕の口から食道、胃まで全て溶けてしまう。

 冗談は終えて、まともなお茶を出してくれた。もちろん、王水入りのお茶は処分した。まじもんだったかは定かではないが。

 もともとは、勉強の予定だったのだが、ついつい話し込んでしまって、結局この日は勉強できず仕舞いになった。


「すまないな。勉強を教えるといったのに、この始末とは」

「かまわないよ。また明日に教えてもらえばそれでいい」

「そうだな、今度は集中して出来る様に、図書館で勉強しようか」

 僕らは、住宅が立ち並ぶ狭い路地を並んで歩いていた。君が大通りに出るまで送っていく。と言うから、僕は素直に承諾した。

「確か、さっきの私のボケに君は王水がどうとか考えていたよね」

 話をしている最中でも僕の心を読んでいるんだね。て言うか、あれはボケだったんだ。立ち上る湯気が、他のお茶とは違った気がするんだが。

「よく、君の頭脳で塩酸+硝酸=王水が出てきたな。もしかして、科学は得意なのか?」

「所々でバカにしているな。まぁ、確かに科学は他の科目と比べても好きな方かな」

「じゃあ、この前のテストの科学の点数は?」

「…」

「…」

「…」

「ふむ、67点か。悪くないと言えば悪くないが、それでも平均点以下だな」

 くそ、もう僕は君に、一切の隠し事は出来ないのか。

「じゃあ、明日の勉強は数学を中心にして行こう」

 もちろん、僕の数学の成績も把握済みって所だな。

「じゃあ、私はここで戻るよ」

 気が付けば、すでに目的の道に着いていた。

「また明日学校で」

 言い放つと同時に、君は早足で来た道を戻っていった。

「僕も帰ろうかな」

 僕はポケットに手を突っ込んで、ゆっくりと帰路に着いた。



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