聖書って世界で一番発行されているらしいですね
この世界に来て一週間経った。その間に分かったことがある。
ここはポフレという国で、私のいる場所は海辺の町ベーリエ、大陸全体でシビラという宗教を信仰していて、教義はとにかく善行を積もうという穏やかなものだ。
井戸汲みに薪割り、どれもやったことがなく大変だったけど、教えを乞うたら丁寧に教えてくれた。ありがたい。
井戸汲みし、食堂で質素なご飯を食べ、街を見学、お昼のお祈りをし、教会の雑用、夕飯、就寝。
お風呂は三日に一回大浴場に入れた。
街は賑やかで、活気に溢れている。最近挨拶する人も多くなった。
毎日の生活は穏やかで、どこか落ち着いた様子で過ぎていく。
海が近いからか、魚が美味しい。
こんなに何もやらずに過ごしたのは、こどものとき以来かもしれない。
何かしたくて手がワキワキしてしまう。
ひとまず私は今巡礼者なので、シビラについて学ぼうと思う。
宗教があるということは、聖典があるはずだ。
それで学んでみるなんていうのはどうだろう。
ルゲラ司祭に頼むと、彼は驚いていた。そしてそのあと、何やら嬉しそうな顔で、懐にある聖書を出した。
「どうぞ。お貸しします。ですが、本は貴重なので、くれぐれも注意を。もし汚してしまったら。必ず報告してください」
「はい、ありがとうございます」
早速部屋に戻ってページを捲ると、文字も問題なく読めた。そのことが少し気味が悪いが、今は便利さに目を瞑るとしよう。
そんなに厚くはなかったが、内容はお祈りのときの説教とあまり変わらないようだった。
ただ、それが物語調になっていただけ。
それだけのはずなのに。
なんで私は涙が出ているんだろう。
控え目のノックされた。ぱっと顔をあげる。
もうすっかり夕暮れだった。
ルゲラ司祭が、時間になっても食堂に現れない私の為に、わざわざ様子を見てきてくれたらしい。
「もうそんな時間なんですね。すっかり忘れてました」
「いえいえ、具合が悪いとかじゃなくて良かったです。今まで聖書を読んでらしたんですか?」
「はい。なんか泣いてしまって」
「分かります。私も最初読んだときは泣きそうになりました」
その言葉に一瞬ドキっとしてしまったけど、ルゲラ司祭からそれ以上の言及はなく、食堂まで一緒に歩いた。
なんで私は泣いたんだろう。
私はどうしたいんだろう。
穏やかな会話の間、ぐるぐるとそんなことが頭をよぎった。




