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薄明に向かって
人生どん底になってしまったら、みんなは一体どうする?
端的に言おう。婚約破棄になった。
最悪の家庭環境から、奨学金で学歴を上げるだけ上げて、上昇企業に就職した。もうすでに証券口座にF
ire出来るだけのお金がある。貯金も1000万円以上あるし、マンションも買った。
あとは幸せだけが必要だった。
良い人だと思った。柔らかく微笑むその姿はなぜか安心した。お酒もタバコもしない。一緒にいて胸の奥が暖かくなるようなそんな人だった。
今はもう、過去の話だ。
映画だったら、勢いでラスベガスにでも行くんだろうけど、私はどこにも行きたくなかった。でも、彼の思い出が蔓延るこの部屋に、余り長い時間居たくもなかった。
そうだ、国内旅行しよう。
ついでに会社を辞めよう。
今まで頑張ってきた自分にご褒美をあげよう。
とりあえず休暇を取って、荷物をまとめた。
少し他人行儀になった部屋を見渡して、「いってきます」と呟いた。
ドアを開けて、一歩外へ踏み出す。
気が付いたら、私は異世界にいた。




