第八話 王都に向かう
レイが俺の元に駆け寄ってきた。
そして俺の胸に抱きついてくる。
その顔を見ると涙で濡れている。
「何も言わずに、去らないでくださいよっ!!」
「なんで……、知らせてなかったはずじゃ……」
神父がレイの後ろで笑いながら俺に言う。
「私が知らせたんだよ。君がレイ君に言わないのなら私が言うまでだよ」
「く、余計な事を……」
舌打ちすると、神父は眼を細めながら言う。
「敢えて言わなかったのは、レイ君を悲しませないためだろう?その歳でその考えが出てくるのは正直びっくりだ」
真顔になり、レイの背中を見ながら言う。
「しかしね、お世話になった人に対して、その態度はだめだ。レイ君だって言いたいことがあるだろう」
確かに、俺の対応はレイを悲しませただろう。しかし、言ったら言ったで……
「レイに言ったら!俺がこの村から出る決心が揺れてしまいます!だから言わなかったのに!なんでっ……」
神父が少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になり、俺とレイの頭を撫で始めた。不思議とその手は温かかった。
「君は、君の弱さを認めている。しかし、それはあくまで横からだ。正面からでは無い。お互いに心残りがないようにすることこそが弱さを認め合えてるんじゃ無いのかな?」
神父の言葉に、俺は何も言い返せなかった。全て、俺の弱さの芯をついているからだ。
「……レイ……」
「……」
「ごめんな。「村を出ていく」って言うべきだったよ。でも、お前を悲しませたくなかったんだよ」
「……悲しみませんよ。ハレさんがこの村を出ていくって言ったって、ですが、さよならぐらいは言わせてくださいよ!貴方は私にとっての初めての友達だったんですから!」
レイの言葉に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
初めての、友達。
その言葉が、やけに重かった。
「……そうだな」
小さく呟く。
俺は、剣だった頃、誰かと対等に話すことなんてなかった。
キーナの隣にはいたが、あいつにとって、俺は相棒だった。
でも今は違う。
こうして、泣いてくれるやつがいる。
「……ありがとな」
そう言って、レイの頭に手を置く。
少しだけ、震えていた。
レイは顔を上げ、涙を拭った。
「……約束、覚えてますよね」
「覚えているさ」
俺は頷く。
「必ず戻ってくるよ」
レイは少しだけ笑った。
「……待ってます」
神父が一歩前に出る。
「では、改めてだ。ハレ君」
その声はいつもより少しだけ静かで、優しかった。
「行ってきなさい」
俺は深く息を吸う。
そして、二人を見た。
レイ、神父。
この村で出会った、大切な人たち。
「……行ってきます」
そう言って、背を向ける。
一歩、踏み出す。もう振り返りはしない。
振り返れば、きっと足が止まるはず。だから、前だけを見る。
王都へ続く道。
その先にあるものを、掴むために。後ろから、小さな声が聞こえた気がした。
「……いってらっしゃい」
俺はその声に応えることなく、ただ、歩き続けた。
更新遅れました!すみません!
今度こそ、これから王都編です!




