学校でバトル
ボク達は殺人鬼を探して学校へと向かっている。
うーん、今し方現れた二面体でも軽く圧倒するキャラじゃないと召喚する意味がない。そうなるとかなり絞られてくるな。……よし、決めた。
「ルシータ、ちょっといいかな。召喚合体するから」
「オッケー」
ボクより少しお姉さんの凄腕暗殺者であり『火葬』と言う炎の闘気と『侵食』と言う腐った闘気を操る『レイゼル=ブラームス』の名を強く念じる。すると斜め上方の空間にキラキラと輝く光の粒子が溢れ始め、そこから黒装束に身を包むレイゼルが現れた。そして降りて来たレイゼルがボクに重なると、溶けるようにしてボクと一体化する。
また一体化すると、ボクの服装がレイゼルの黒装束に変わり、髪の毛は前髪パッツンのショートヘアになった。因みに武器は両手に各々握るナイフ二本だ。
それと召喚合体が解けるのが前もってわかるように、携帯で55分のタイマーをかけておこう。
そうして僕達は歩みを再開させる。
「ツカサ、今度はそのナイフで戦うのかな? 」
「うん、それと火葬と言う炎を手に出して素手での直接攻撃の時に相手に消えない炎を着火させる能力があるよ。また彼女はもう一つ無差別に半径十メートル内の物全てを腐らせる、侵食と言う能力も持ってるんだ」
「そっ、それは凄そうだね」
「なんたって彼女は元勇者様でもあるからね」
あと次のキャラクターも決めておいた方が良いよね。真琴の恋のライバルである『アズゥリュ=デウミュナ=ダークネス』、もしくは真琴の妹でありラスボスである『五条橋風華』あたりがいいかな。二人とも最強格だし。
とそこで、ボクの前に回り込んだルシータが、真剣な表情を見せる。
「そうそうツカサ、万が一にも私とはぐれてしまった時の事を考えて、この夢世界からの離脱方法を教えておくね」
「えっ、ルシータと離れ離れ……」
「そんなに深刻に考えないで。万が一、だから」
「うん」
「因みに離脱方法は簡単だよ。周りに敵がいない状態で個室に入って、『目が覚めろ』と念じるだけだから」
「へぇー」
「ただこの夢世界は敵がわんさかいるからそんな場所は限られている。だから困ったら、私のマンションを目指したら良いかな。あのマンションならどこの部屋でも離脱可能だから」
「わかった」
「と話していたら学校に着いたね」
夜の学校、そこは学校の怪談などが囁かれる普段からどこか怖い場所。そして今から行く夜の学校は、100パーセントの確率で怪物が待ち構えている場所でもある。
怖い、怖いけどルシータが手を繋いでくれたらいける気がする。だからボクはルシータの手をそっと握ると、ルシータも握り返してくれた。
ボク達は校門をジャンプで飛び越えると、正面の校舎へと侵入する。そして下足箱が並ぶ空間を進んでいっていると——
心臓が飛び跳ねそうになる。なんと正面の下足箱の陰から、青白い顔がコチラを覗いていたのだ。
「キャハハハ」
ルシータの銃が火を吹いた。しかし距離がありすぎたため、怪物は顔を引っ込める事でルシータの攻撃を躱す。そして隣の列を駆け抜ける音がした後、真横の下足箱の上から這い上がるようにして怪物が顔を見せる。
『キンッ』
相手が悪かった。ルシータの一振りで、下足箱ごと怪物は左右に分断され黒霧に変わった。
流石ルシータ!
と、ボクも頑張らないと。
次現れたらボクのナイフで瞬殺してあげる!
とか思っていると、下足箱を抜けた長い長い廊下に浮かぶ、青白い顔達。
無理、やっぱり無理無理。真琴の時みたいに遠距離から攻撃出来たら良いけど、レイゼルは超が付くほどの近距離暗殺者。あの怖い怪物に接近しないといけないのはハードルが高すぎる。
そこで開戦の狼煙となるルシータの銃が発射される。その攻撃を怪物達は躱わすため、重力を無視したかのように壁や天井に足元を引っ付けてこちらへ向けて滑るようにして迫ってくる。
「ツカサ、数が多すぎる。そっちに何体か行くかも」
えぇい、怖がってばかりじゃいられない。
「わかった」
そしてルシータが銃で一体仕留める中、残りの四体がボク達に急速接近してくる。交わるボクのナイフと怪物のナイフ。とそこで反射的に身体が動く。そう、ボクはナイフで防ぐと同時に、もう一本のナイフを突き出す事により怪物の顔面にナイフを突き立てていた。黒霧へ変わる中、別の怪物が手にしたナイフがこちらへ伸びてくるのが見えた。そこからはスローモーションのようにコマ送りに怪物の攻撃が見える中、半身になり薄皮一枚で躱す。そしてボクはそのまま横に回転しながらナイフを逆手に持ち替えると、怪物の横っ面にナイフを叩き込み黒霧へ変える。
「ヒュー、ツカサやるね」
ルシータが残りの二体を瞬殺してから声をかけて来た。
「いや、ボクじゃなくてキャラが強いだけだよ」
それからボク達は廊下や教室に巣食う怪物達をナイフや火葬で倒していき、探索する階を上げていった。そしてあと調べていないのはこの先である屋上と、離れている体育館だけになった。
そこで屋上への階段を登っていると、携帯のアラームが鳴り響く。そろそろ召喚合体が解ける合図だ。結局侵食は使わなかったな。まー、次召喚した時に使えば良いか。
よし、次のキャラを召喚しよう!
そうしてレイゼルを解除した後、真琴の妹風華を召喚しようとするのだけど。
あれ? おかしい。何度も念じているのに召喚出来ない。それに最初の召喚が解けた後より今の方が、とても身体が重くなっている感じがする。これってもしかして、ボクは一度の夢の中で召喚出来るのは二回が限度って事? 体力的に。
「ツカサ、どうしたのかな? 」
「それが、今日はもう召喚出来ないみたいなんだ」
「そしたら今回はもう帰ろう、かな」
「ごめんなさい」
「謝らなくて良いよ、元々今回はツカサに少しでも夢世界に慣れて貰うのが目的だったからね。上出来上出来。それに無理は禁物だよ」
そうしてボク達は、来た道を戻ろうとするのだけど——
すぐ近くから女性の悲鳴が聞こえる。
この声って、屋上から!




