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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
覚醒者の王
134/160

覚醒タッグ

「はあァァァァッ!!」

 ダドリー・モアの覚醒態は彼の高過ぎる自尊心を象徴するように全身が発光していた。そしてその眩い光のせいで視認しづらいが、なんとか目を凝らして見てみると人を見下しているような薄ら笑いを浮かべたような顔をしていてとても不愉快。ちなみに空も飛べるようで宙をプカプカと浮かんでいる。

「ふぅ……」

 対照的にボビー・レスコットの覚醒状態は全身を黒い泥が覆う、暗くじめじめと陰鬱な印象を与えるものだった。こちらも彼の卑屈な内面が色濃く出た結果の姿なのかもしれない。

「出たな六覚星……!」

「ザット、気持ちはわかるが、あの二人相手に今のおれ達では勝ち目がない」

「なら、あの青いのにマジで守ってもらうっていうんですか!?」

「恥を忍んでそうするしかない。ですよね?青のエヴォリスト」

「はい。言ったからにはオレがあなた達を守ります。ザット・ティアニーだったな?」

「お、おう!なんだ!?文句あるのか!?」

「それを今、言おうと思ってたんだ」

「……は?」

「文句があるなら、信用できないなら後ろから撃って構わない。だが、その前にオレが倒した特級タッグを安全なところまで運んでくれ」

「ジェイミーとミルコさんを……?」

「彼らをここで死なせるには惜しい。オレより君の方がよくわかっているだろ?」

(こいつ……)

 アストは肩越しにこちらを睨むザットを、真逆の優しい瞳で見つめた。彼の固く閉ざした心をほぐすように優しく……。

「……わかった。お前を信用したわけじゃないがあの二人に生きて欲しいのは俺も同じだ。お前らの仲間割れの巻き添えを食らわないように……バーズリーさん!!」

「おう!」

 ザットが声を発する前にバーズリーを始めとした一部の解放戦線のメンバーがピースプレイヤーを装着して、すでに倒れるログケプトとキオンフェクスの下へと向かっていた。

「させると思うか?」


ヒュッ!!


 しかし、そうはさせまいと人型をした泥となった覚醒レスコットが腕を彼らに向かって振り下ろした!すると彼の腕はぐんぐんと伸びていき、鞭状に。これはまるで……。

「水鞭!!」


バシャアン!!


「ちっ!!」

 目には目を、歯には歯を、鞭には鞭を!

 覚醒アストも脱力、液体化させた腕を振り鞭状に!水の鞭が唸りを上げて、解放戦線を襲おうとした泥の鞭を切り裂いた!

「本当に似ていますね、オレ達の能力」

「今さらシンパシーを感じてももう遅い。今のは完全なる敵対行動だ。もう言い訳できないよムスタベ氏」

「言い訳が必要なのは、あなた達の方でしょ!これだけの力があるなら、もっと穏便に事を納めることだってできただろうに!なんで!?」

「なんでも何も……」

「なんで選ばれたおれが無能力者のために、手を煩わせなきゃいけないんだよ」

「!!?」

 急に明るくなったと思ったら、ダドリーの声が上から聞こえた。彼はその飛行能力を使い、青き龍の頭上に移動していたのだ。そして……。

「イカれてるぜお前……せっかく戦闘型エヴォリストに生まれたのに、その力で目覚めてないゴミどもを守ろうなんてよ!!」


ビシュウッ!ビシュウッ!ビシュウッ!!


 身体に纏っているのと同様の光を両手のひらから撃ち出した!

「くっ!!」

 アストはそれを地面に転がりながら、回避。結果覚醒ダドリーが放った光は……。


ビシュッ!!ジュウゥゥゥッ……


 地面に穴を開け、その近くにあった先の戦いの残骸、氷塊を熱で溶かし、水溜まりを作り出した。

「ダドリー・モアの能力は光……ビームか!?」

「格好いいだろ?ヒーローの能力だ!お前の水みたいな脇役の能力とは格が違うんだよ!!」


ビシュウッ!ビシュウッ!ビシュウッ!!


 さらに連射!両手から交互に発射することで、発射直後の隙を消しながら、敵に生半可な反撃は許さない脅威の連射を繰り出した!

「はっ!ほっ!よっ!!」

 しかし相手はカウマが誇る無敵の青龍。体操選手のようにくるくると側転やバク転をしながら、華麗にビームを全て避けていく。

「ちっ!ちょこまかと!!」

(自慢することじゃないけど、ビームには散々苦しめられてきたからな。そんくらいじゃ取り乱しはしないよ)

「ったく……できることならおれ一人の手柄にしたかったんだけどな。レスコット!!」

「すでに」


ズブッ!!


「――ッ!!?」

 龍が着地すると、今までと違う感触を足裏に感じた。柔らかく冷たいまるで泥に包まれたような……いや、実際に泥に足を突っ込んだのだ!レスコットが密かに敷いていた泥の絨毯に!

「この!!」


グヌッ……


「ッ!!?」

 覚醒アストは持てる全ての力を使って足を引き抜こうとしたが、その泥は普通のものよりも遥かに粘性が高く、執拗に足にまとわりつきそこから逃げ出すことを許してはくれなかった。

「ナイスだレスコット!!」

「ダドリー氏!今です!!」

「おう!!」

 覚醒ダドリーは両手を突き出し、交互に撃っていたビームを……。


ビビシュウッ!!


 同時に発射した!それはダドリーの感情の昂りもあってか、威力が二倍以上に跳ね上がっていた!その証拠にキオンフェクスが下げた地下の気温は著しく上昇し、遠く離れた氷の表面にも水滴が浮かぶ。

 当然そんな攻撃が直撃したら……。

「当たってたまるか!アウェイクスピード!!」


ブシュウゥゥゥゥゥゥッ!!


 通常形態からスピード特化形態に!アストは変形の過程で太くなっていく足で泥を弾き、さらに各部の噴射口から勢いよく水蒸気を放出することで、泥の罠から脱出!空中へと逃げた……が。

「来ちまったか!おれの領域に!!」

「!!?」

 息つく暇もなく覚醒ダドリー強襲!光で軌跡を描きながらスピードアストに接近してくる!

「ピカピカと鬱陶しい!!」

 アストは追ってくるダドリーを振り切ろうと、一気にトップスピードまで加速した。しかし……。

「遅いわ!!」

「ッ!?」

 速攻で追い付かれ、前方に回り込まれてしまった。

「無理矢理作った飛行形態と元から飛べるおれ……どっちが優れているかなんて説明するまでもねぇだろ!!」

 そしてそのままラッシュを仕掛ける!


ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!ヒュヒュッ!!


「何!?」

 けれど、パンチもキックもスピードアストを捉えることはできなかった。上下左右に飛び回りながら、ものの見事に全部回避されてしまう。

「飛行能力はあんたの方が上でも格闘戦はオレの方が……説明するまでもないだろ!!」

「てめえ!!」

 挑発にまんまと乗った覚醒ダドリーは渾身の力を込めて蹴りを放った!


ブゥン!!


「……やべ」

 だが、今まで散々もっと細かく洗練された打撃を避けてきたスピードアストにそんな大振りが当たるはずもなく、あっさりと避けられて上を取られる。高々と足を上げた龍に上を……。

「天は龍の住処だ!あんたの居場所じゃない!マッハ踵落とし!!」


ドゴッ!


「――ッ!?」

 水蒸気噴射によって加速した踵落としをもろに喰らい、覚醒ダドリーは地面に叩き……。

「ほっ!!」


バシャ!!


 叩きつけられそうになったが、覚醒レスコットが墜落地点に正方形状の泥のクッションを生成し、固い地面への激突を防いだ。

「大丈夫か?」

「ぷはっ!!助かったぞ!レスコット!!お前のおかげで命拾いした!これでおれの輝くボディーを汚さなければもっと最高だったんだけどな」

 泥のクッションが解除され、中から出て来るや否やダドリーは身体をブンブンと振って、付着した泥を撥ね飛ばした。

「なんでそう一言多いのかな、あんたは」

「そういう性分なんだ。悪いな」

「悪いと思うならとっとと下がってください。来ますよ」

「アウェイクテクニック」

「!!?」

 機動力重視から技術重視に。覚醒アストは右腕をライフルに変形させると、即座にダドリーに狙いをつけた。そして……。


バシュッ!バシュッ!バシュッ!!


 躊躇することなく、圧縮した水の弾丸を発射した!しかし……。

「無駄だ、ムスタベ氏」


ズブッ……ズブッ……ズブッ……


「……なんだと?」

 しかし、テクニックアストの水弾は盾のように立ち塞がった覚醒レスコットの泥のボディーに吸収されてしまった。

「いくらでも撃って来てくれて構わないよ。水なんて我が泥の前では無力。全部吸収してやりますから」

(弾の反応がなくなった。本当に吸収されたんだな。こんなことが前にも……)

「ちなみに基本形態のあなたと同じく打撃も効きませんから、悪しからず」

(これを封じるための氷使い、キオンフェクスだったのか。それをオレに対して使ってくれちゃって)

 アストは思わず小さく「チッ」と舌打ちをした。そしてそれで解放戦線への不満を全て吐き出し終えると、再び記憶の海へ……。

(……それにしてもこの力、やっぱりあの人に。っていうかダドリー・モアの能力も奴に……)

 自らの攻撃を無効化したエヴォリストとその相棒に、とある男達の姿を重ねるアスト。ダドリーとレスコットの戦い方は皮肉にも彼らによく似ていた。

「俺の能力は最初に会った時言ったように、お前の下位互換だよ。お前ほど器用に変形なんてできやしない。ただしこうして直接戦うとなったら……俺に分がある」

「レスコットがお前の水による攻撃、そして打撃を全て防ぐ。そしておれが隙を突いて、ビームでお前を仕留める。やることはシンプルだ。だが、それ故に止めようがないぜブルードラゴン」

「あれが君のマックススピードならば、俺のサポートを受けながらダドリー氏が全力で逃げれば、決して追いつけない」

「つまり詰みだ。わかったら投降しろよ。許すつもりはもちろんねぇけど!!」

 勝ち誇るダドリーとレスコット。その姿を見て、アストは……笑った。

「申し訳ないですけど、勝つのはオレです」

「聞いていたのか?お前の攻撃は俺に通じない」

「そしておれのビームは当たれば一撃必殺!この覚醒タッグ相手に勝ち目なんてねぇよ!!」

「確かにあんた達の能力は素晴らしいよ。でもボタンの掛け違いというか……とにかく順番が悪かった」

「はい?」

「順番?」

 訳がわからずレスコットもダドリーも首を傾げた。

「あぁ……さっきの特級タッグじゃないが、オレが以前からシミュレーションしていた策をあんた達に使わせてもらう。もう一度言う……オレの勝ちだ」


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