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No Name's Awakening  作者: 大道福丸
覚醒者の王
133/160

任務内容は……

(完敗だ)

 プロティーブル解放戦線のリーダー、ネイザン・コルバックはそっと目を伏せた。

(ありとあらゆる認識が甘かった。おれの想像を遥かに超える能力とそれを扱うインテリジェンス。レスコット対策に用意した特級タッグをそのまま宛がってどうにかなるなんて浅はかにも程がある。この青のエヴォリストの強さは……)

「ネイザン・コルバック……改めて言います。投降してください」

 淡々としたアストの言葉に反応し、後悔と自責に苛まれていたネイザンは目を開くと小さく頷いた。

「わかった。君の言う通りにしよう」

「コルバックさん!!そんなのあり得ないでしょう!!」

 リーダーの決断に異を唱えたのはザットだった。涙目になりながら、杖をついた彼に詰め寄る。

「パジェットコープの奴らなんかに……!!」

「ザット、気持ちはわかるがあの二人が倒された時点で、もう我らに打つ手はない」

「だとしても!だとしてもこいつの言う通りに大人しく降参したところで俺達が無事でいられる保障なんて……」

「だな」

「なら!!」

「だが、少なくともあの青いのは我らをちゃんと人として扱ってくれるつもりらしいぞ」

「え?」

 ザットが自分達の組織をたった一人でほぼ壊滅状態に追いやった青き龍に目を向けると、彼はその金色の瞳でこちらを真っ直ぐと見つめていた。何もやましいことはないと言わんばかりに真っ直ぐと……。

「オレはこれ以上あなた達に何かするつもりはないです。もし罰を受ける必要があるのならこの国の法律に則って。逆に言えば、そういうきちんとした行程を踏まないであなた達を処罰しようとするなら……」

 アストは一瞬振り返り、六覚星の面々を牽制した。勝手なことをするなよと。しかし……。

「…………」

「…………」

「…………」

 三人とも知らぬ存ぜぬと目を逸らした。

(この人達は……)

「やはり他の者は信用できないな。だが君は別だ、青のエヴォリスト」

「コルバックさん……」

「あのカリギュアを切り裂いた技。龍……」

「龍輪刃ですか?」

「そうだあの技だ。あれを最初から使っていればログケプトとキオンフェクスも簡単に倒せてたはずだろ?殺そうと思えばすぐにでも殺せた」

「え!?そんなことって……!?」

 ザットは想像もしてなかったリーダーの発言に驚愕し、彼と青龍の顔を何度も往復した。

「…………」

「…………」

 そして何度見てもネイザンもアストの顔も微動だにしない。今の発言を否定することはできない、それが事実なんだと念を押すように。

「マジかよ……」

 ザットは思わずたじろいだ。今しがた目の前で起きたバトルは、自分達の切り札、特級タッグが勝利寸前までいったと思っていた戦いは、敵が手加減した結果だと知り、ただただショックだった。

「受け入れ難いだろうが、それが現実だ。このブルードラゴンの力は我らの想定など遥かに凌駕している。もしかしたらあの悪魔に匹敵してるかも知れん」

(悪魔?)

 アストはその単語に妙な胸騒ぎを感じた。

「奴と同様、正面からぶつかるのを避けるべきだった。この結果はひとえにリーダーであるおれの責任だ……すまない」

「コルバックさん……くっ!!」

 敬愛するリーダーにそこまで言われて頭を下げられては、ザットは何も言えなかった。彼と青き龍から背を向けると、ぶつけることのできない怒りを身体の中に必死に押し留めて、拳を握り、小刻みに震えた。

「みんなも本当に悪かったな」

「いえ、ここまで来れたのはあなたのおかげです。謝らないでください」

 一方、サブリーダーのバーズリーを始め、他の面々は冷静にこの状況を受け入れていた。なのでコルバックの言葉に静かに頷き、どんな決断でも従う意思を示す。

「フッ……これだけ仲間に恵まれているのに。つくづくおれは無能な指揮官だな」

「真の無能なら、ここで突撃を命じますよ。死んで来いってね」

「あぁ、命を散らすべき人間が誰かくらいはわかっている。おれは斬首だろうがなんだろうが構わない。だからどうかこいつらの命だけ救ってくれ」

「さっきも言いましたが、それはオレではなく、この国の法が決めるべきことです。その決断が下されるまでは、今の状況を作り出した者の責任としてあなた方を守らせてもらいます。だからどうか手出ししないでくださいね六覚星の皆さん」

 改めてアストは後方にいる現時点では味方に圧を強めて目を向けた。すると……。

「はっ!!」

 ダドリーが吹き出した。こいつ何を言っているんだとあまりにもおかしくて。

 もちろんそんな態度、真剣なアストには受け入れ難く、不愉快そうに顔をしかめる。

「オレ、今変なこと言いましたか?」

「むしろ変なことしか言ってねぇよ!お前、この任務をなんだと思ってるんだ?」

「プロティーブル解放戦線のアジトを奇襲して、彼らを捕らえるんでしょ?」

「んん?もしかして……フーグラー!お前、正確に任務内容伝えてねぇな?」

「あれ~?そうだっけ?ちゃんと言ったつもりなんだけどな~」

 フーグラーが操るドローンはアストをさらにおちょくるようにふらふらと左右に揺れた。

「どうりで、訳のわからんことばかりほざいてるはずだ」

「さっきから何を言ってるんですか?正確な任務内容って……?」

「おれ達の受けた任務はプロティーブル解放戦線のアジトを奇襲、そしてリーダーのネイザン・コルバックを始めとした構成員全ての殲滅……つまりこいつらを殺せって話さ」

「ッ!?あり得ない!?」

「あり得なくないだろ。こいつらは名目上はテロリストなんだから、すでに死刑判決が下っててもおかしくない。まぁ、おれ法律とかよくわからんから詳しくは知らんけど」

「だとしてもこうして降参したんだから、この場で命を奪う必要なんて……」

「確かに……何人かは生かしておいてもいいかもな。ここにいないゴミどもの隠れてる場所を吐いてもらいたいし。でも、連れ帰るのが、面倒だから二、三人くらいでいいや。レスコット、お前なら誰を選ぶ?」

「リーダーと、あと適当にいい声で鳴いてくれそうな奴でいいんじゃないか?目の前で苦しんでいる仲間の姿を見たら、口を割ってくれるでしょ。“隠れてるみんなどうか逃げてくれ!”とか心の中でお祈りしながら」

「んじゃ、それでいこう。リーダー以外は適当にやって生き残った奴を拾えばいいってことで」

「では、それで。フーグラーも」

「ハイハイ」

 話がまとまると、今まで目の前でアストがいくら戦おうと微動だにしなかったダドリーとレスコットは肩と首を回し、身体をほぐした。そしてその背後に控えるカリギュアは一糸乱れぬ動きで銃を構える。

 それに対してアストは……。

「どういうつもりだ?」

 アストは完全にダドリー達の方を向き直し、解放戦線の盾になるように構えを取った。

「オレはコルバックさんに正当な行程を踏んで処罰を受けさせると約束しました。だから……!」

「だからおれ達とやろうってのか?」

「そもそもこいつ、最初からそのつもりだったんじゃないかな?妙に落ち着いているもん」

「別にこうなることを望んでいたわけじゃないです。ただ予想はしていた……あなた達のことはいまいち信用できなかったから」

「おいおいフーグラー!お前がちゃんとやらないから!」

「え?ボクのせい?どう考えても君達の態度が悪いからでしょ!あからさまに敵視して」

「どっちもですよ。というかパジェットコープ自体に最初からずっと不信感がある。ファーストコンタクトが最悪でしたから」

「ってことは、イゴールと彼を向かわせたエドガー社長が一番の原因だね。ボクの罪は軽い」

「フーグラー、君が毎回オレが戦い終わった直後に現れるのも、めちゃくちゃ印象悪かったよ」

「ありゃま。きっちりやらかしてましたか。だったらボク自らこの失態の責任を取らないと……いけないところなんだけどね。ガチの戦闘型エヴォリスト相手に何体カリギュアをぶつけたところで、まぁ勝てないわな。ということで……」

「おれらの出番か。本当、めんどくさ」

「ええ、目覚めていないゴミカスどもを片付けるだけの楽な任務だと思ったんですけど、こんなことになるとは」

 言葉とは裏腹にダドリーもレスコットもニタニタと嫌らしい笑みを浮かべて、とても楽しそうだった。待ってましたと言わんばかりに腕や首を改めて回しながら一歩前に出る。

(目の上のたんこぶを潰せるチャンスにウキウキって感じだね。その勢いのまま、わが社の第一目標を達成してくれればいいけど)

 片やフーグラーは冷めていた。正直、どちらが勝とうと興味はない。興味があるのは青き龍の……。

「んじゃ、ちゃっちゃっと終わらせますか!!レスコット!!」

「おう!!」

 そんな彼、そして彼を背後で操るエドガーやアルトゥルの思惑など知らずにダドリーとレスコットはその身体を戦闘形態へと変化させていった……。


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