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2-40 神獣ポピー

「どうしよう、アメリ。

 あのウルトラ表六玉め」


「これは困りましたね。

 もしかしたら、アレはここで何かをやりたいのかもしれません」


「何をよっ」


 だが、そこで声をかけてくれた子供がいる。


「早くアイスを寄越せー」ではない。


「お姉ちゃん達、ポピーのお友達?」

「ポピー……」


 明らかにそれは、あの草色をした奴の事らしい。

 あの大馬鹿野郎は、この街でそのような似合わない名前を名乗っているのだと?


 どうせなら、トレードマークの「ゴンス」でいけよ。

 その方がこっちもまだ追跡しやすいだろうに。


「まあそのようなものだけど、それでそのポピーちゃんがどうかしたの?」


「あのね。

 ポピーは孤児院に来てくれたの。

 あたしのお友達なのよ。

 あたしね、ポピーの事が大好き」


 うん、それは本人に直接言ってやった方がいいと思うのだが。


 この子はまだ小さな子なので、会話でうまく情報を引き出せる気がしない。


 まだ三歳くらいなのかな。

 仕方がない、その孤児院なる場所へ行ってみるか。


「チャック、そこに集まっている子達全員にアイスを配ってあげて。

 今すぐ」


 すると、見事なまでに高速で触手を操り、チャックはほぼ一瞬で並んでいた全員にアイスを配り終えた。


 さすがに幾つも脳があるだけの事はあって、いつ見ても見事な制御だ。


「じゃあ、みんな。

 今日は来てくれてありがとう。

 その食器はあげる。

 またね!」


 そして、その子をチャックが抱き上げて私に渡してくれた。


「ねえ、よかったら孤児院まで案内してくれる?

 どうせなら、みんなでアイスを食べようよ」


「うん、いいよ」


 すかさず、チャックは自らを再び馬車の虜囚とし、周囲に十分気を使いながら可及的速やかに走り出した。


 そして御者席に座りながら、御者をやっている振りをしながら周囲に気を配っているアメリ。


 私とその子は、馬車の中からスラムの街並み(というほどのものではない)を眺めつつ進んだ。


 この子にとって馬車は楽しいものだったようで、目をキラキラさせながら周囲の流れる景色に夢中になっていた。


 彼女が使命を忘れてしまわないように、時折誘導するように会話をしながら、なんとか目的地「らしきもの」に辿り着いた。


 そこはなんというか、屋根がないとかそういうレベルではなく、大方の壁すらもない。


 そして残っていた一枚の、ほぼ原形をとどめていない、元は四角かっただろうに今では三角形っぽい感じにしか残っていない僅かな外壁すらも、崩れかけた煉瓦の集積に過ぎない。


「あっぶな……」


 日本だと、もしこのようなスタイルの児童養護施設があったなら、まず確実にマスコミの餌食となり、さらに行政が責任のなすりあいを始めるのだろうが、ここは無事に何者からも捨て置かれたままのようだった。


 我らの探し物であるアレ(まくら)を除いては。


「見てー、ここがあたし達の孤児院なの」


 はい、見てますよ。

 お願いだから、そんなに嬉しそうにするのは止めてちょうだい。

 さすがに鬱が入りますから。


 これに関しては王国の偉い人達にも何か言っておかなくてはならない。


 こんな感じに国が怠慢でスラムを放置しておいた結果、今このような『国家の危機』が存在し、しかも騎士団にも手がつけられなくて聖女が関わる破目になってしまっているのだから。


 そして奴はそこにいた。

 子供に高い高いをしてやりながら。


「うーん。

 解説のアメリさん、何か一言お願いします」


「えー、なんともリアクションに困るような光景と言いますか、もういっそ見なかった事にして、我々も帰りますか。

 このままだと我々はここでずっと野宿して、あれを監視していなければならないのですが……」


 私もそれは嫌だな。

 だがそれは出来ないだろうな。

 だってさ。


「みんなー、アイス食べようー」


 小さな天使様が、可愛らしく無料アイスクリーム屋さんの呼び込みをしてくれていた。


「ね。そいつは、その子と約束したもん」


「これは困ったものですね」


 そして再び私達とまみえてしまった『奴』も、この状況になってちょっと困っているようだ。

 主に言い訳が苦しいみたいな感じで。


 特に私達がそいつを直接責めずに、にこにこと子供達と和やかにしているので、どうにも居心地がよくないようだ。


 こいつに、そんな可愛いところがあったなんて知らなかったよ。


 まあこちらとしても状況は理解したのだが、もたもたしていて他勢力の介入によって荒事にでもなったなんて事にでもなると、目も当てられない。


 何故か奴が護りたがっているらしい、この孤児院? とやらも焼け野原になるは必至だ。


 それをもたらしたのが、国王に聖女認定されたばかりの私の不手際という最悪の事態だけは、なんとしても避けねばならない。


 もう、どうしろっていうの……。

 ちょっと助けてよ、リュール。


 ハートが鯔背なイケメンお兄ちゃんの方でもいいけどさ。

 こんなのって、聖女の仕事の範疇なのかしらねえ。


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