2―4 本日の方策
ゴトゴトと王都の石畳を蹂躙しながら回る、馬車のホイール。
この馬車の物は、軽量な金属ホイールで出来ていて、それが馬車の性能に大きく寄与しているという。
その辺の知識は稀人からもたらされたのかな。
そして、それがまた乗り心地にも貢献してくれているのが嬉しい。
アルミみたいな奴じゃないんだけど、鉄をベースにした魔法金属でそこまで高価ではないので、こういう用途にも普通に使われるそう。
お蔭で、こいつのホイールは自転車のようなスポークタイプではなく細身のアルミホイールみたいな感じになっている。
ただの鉄製とは段違いの強度と性能らしい。
「自転車かあ、欲しいな」
「どうかなさいました? サヤ様」
「ああ、うん。
地球にあった好きだった乗物を思い出してね。
さすがに各パーツを作るのがかなり難しいから、過去の勇者や聖女なんかも作らせていないみたい。
もし日本と行き来できたら絶対に持ってこようっと」
さすがにベアリングとかの精度がなあ。
あとタイヤの性能に自信が持てないのなら、絶対に乗りたくない。
今、私にはチャックという、ある意味で日本の最新の自動車でさえ遙かに凌ぐ乗用従者がいてくれるのだし。
「それ、楽しいのですか?」
「とっても。貴族の間でも流行りそうだな~。
あれはきっとアメリも気に入ると思うよ」
「へえ、素敵ですねえ」
自転車メイドさんか。
それも悪くはないかな。
私のイメージではメイド服でチリリンっと可愛くベルを鳴らすアメリ。
乗るのは御洒落タイプのママチャリないし、これまた独特のデザインのお洒落な折り畳み自転車みたいなタイプがいいかなあ。
メイド服の自転車さんが被るのは、大正時代を生きた着物姿で自転車に跨るハイカラさんのイメージだ。
あれは、あの時代にしかないスタイルだけど。
でも絶対にこの子って、ぴっちりとしたお洒落で派手派手な、真っ赤や黄色で彩ったレーシングスタイルのスーツでバッチリと決めて、カーボンフレームのロードレーサーあたりに乗っていそう。
それも悪くないかな。
今度スーツだけでも作ってみるか。
「ねえアメリは青い鳥についてどう思う?」
「どう思うとは」
「今日、たぶん王様が私に何か褒美をという話をしてくれると思うんだけど、青い鳥の捜索を頼んで見つかると思う?」
「さあどうでしょう。
それは、そういう仕事を得意とする冒険者でも困難でしょうから。
それに、青い鳥が見つかったらあなたが帰ってしまうでしょうから、その話には王として今は内心いい顔を出来ない案件かもしれません」
「ああ、なるほど。
そういう話はあるかもね。
その話は今日しない方が得策か。
ありがとう」
今回、いろいろあった中で私も結構活躍したからなあ。
たぶん、宗教絡みでヤバイ事になっているこの国で、青い鳥関連は回復魔法士として飛び抜けた力を持った聖女を返してしまうような案件というわけか。
回復魔法士は、この国でも神官服を来て神殿に配慮するような存在だから、特に本職ではないものの無視出来ないほどの圧倒的な能力を発揮する『現在この国で唯一の稀人聖女』は貴重ってところかな。
あの強力な聖水は、今現在たぶんこの世界の中で私にしか作れない代物だしな。
ガルさん達ならどうだろうな。
まあ王国には縁がないだろうけど。
「そういう話なら、王宮へ神官服を着ていかない方がいいかな?」
「ああ、それはなんとも言えませんわね。
ここは神官服聖女のイメージを押し出していった方が、サヤ様にとっては利益になるのかもしれませんし。
まあ今の国王陛下のお人柄ならば、いずれにせよ、そう問題にはなりませんので。
ねえリュール様」
「ん、そうだな。
むしろ、その格好のままの方がいいのではないか。
なんというか、あれこれどう転がるかわからんような状況だが、お前の力を象徴するその神官服を着て聖女アピールをしておいた方がいいかもしれんな。
父も兄も人間は出来ている。
問題があるとすれば神殿の連中あたりだろう」
「厄介な話?」
「さあな。
力のある者にはいろんな物が寄っていく。
いい面もあれば悪い面もあろう。
お前の性格では、一番無難で一番問題なくて、安寧と趣味に生きられる状況がよいのであろう?
私の見立てでは、今日はそのままの格好でいるのがいいのではないか?」
「ヤダ、このイケメン。
なんでそんなに人の事がわかってんの!?」
「サヤ様は、自分の事を隠さないというか、思いっきり前面に押し出してゴリ押しするタイプですからね。
まあそれで自分の望む方向へ進めていますので、そのままでよろしいのかと」
「う、皆のいう事が正論過ぎて反論できない。
理から本日の私の服装の正当性が導かれてしまった」
「お着替えの手間が省けてよかったですね」




