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1-34 再び無職に

 それから、無事に通常の傷などを癒すヒールポーションを作成できた。


 よくわからなかったのだが、こう指先から瓶の中の水に、何かが流れるように充電していくようなイメージだろうか。


 聖水の本質は、魔法を蓄える一種のバッテリーだ。


 命の水、化学的にはシンプルな記号で書き表されるH2Oという物質は、物理的にいろんな形態を持っており、物理的にあらゆるエネルギーを蓄える機能が元から備わっているのだ。


 だからこそ生命の基幹物質でいられる。


「うーん、これってもしかして……」


「ベロニカさん。

 ドクターは、一体何を唸っているの」


「お前はドクターの話を聞いていなかったのか?

 あれこそ、ドクターが生涯をかけて研究していた究極の聖水なのかもしれんのだぞ」


「へええ」


 マリエールさんは、私のそのあまりにも軽過ぎる返事に溜息で返してきて、さらにこう付け加えた。


「ただし、そんな物は表に出せないから、お蔵入りにしておかないといけないって事ね。

 それに、そんな物をホイホイと作れちゃうのが国にバレたら、あんたは幽閉ものよ」


「えー、そうなんですかー?」


「今、この国に纏わる国際情勢がキナ臭いのは知っているでしょう。

 あんたが敵にさらわれたりしたらエライ事でしょうに。


 まあここは緘口令を敷いて、みんなで口を噤むしかないわね。

 という訳で申し訳ないんだけど、一旦あなたを王国騎士団の回復魔法士から解雇します」


「えー、そんなあ」


「サヤ、幽閉されたくなかったら、その回復魔法は人前で絶対に使わないように。

 まかり間違って第二王子フランクにでもバレたりした日には一体どうなる事やら」


「うえええ」


 そういう訳で、就職したその日に私は職を失って再び無職になりました。

 なんのこっちゃ。


 そういう訳なので、今私は無事に騎士団の馬達と遊んでいるのです。


 ミス・ドリトルとしてはこれで本望のような、あるいは不用品扱いをされて少し寂しいような。


「ねえ、みんな。

 もう酷いんだよー。

 またお仕事が無くなっちゃったー」


『まあまあ、姐さん。

 世の中には理不尽な事なんてたくさんありやすから』


『お姉ちゃん、元気出してー。

 あ、僕人参もう一個欲しいなー。

 すりすり』


 ちょっと足の具合が悪い子とか、お腹の調子が悪い子とか、なんやかやで体の具合の悪い子達は私が全部治しておいた。


 人間には使えないけど、馬なら問題なし。

 馬には緘口令を敷く必要もないしね。


 一応、ベロニカさんは付き添いで一緒にいる。

 さすがに私を野放しには出来ないと考えたようだ。


 彼女の分の仕事は、団旗の件がなんとかなったので、それなりに手の空いたサリタスさんがやってくれているようだ。


 問題児である騎士団長のお守りは、リュールさんがついている。


 どの道、騎士団交流会の日も近づいているので、副騎士団長である彼も本部に詰めている必要があるらしい。


 とりあえず、私は騎士団の馬専任のエセ聖女様に就任した。

 他にする事なんて何もないんだもの。


 ああ、工作員用にカラスでもティムしにいくといいんだけど、この国には日本みたいにカラスがウジャウジャといないんだよね。


 ああ、こんな時には癒しのワンコが欲しい。

 もちろんニャンコも。


 日本に残してきた愛しのあの子達は元気でやっているだろうか。


 そして、話を聞いた副団長様が様子を見に来てくれた。


「なんだ、さっそく仕事をクビになってしまったのか。

 マリエールが、がっかりしていたぞ」


「しょうがないじゃないですか。

 普通っぽい回復魔法なんて覚えてませんし」


「今から覚えられんのか」


「それが無理らしいです。

 かなり上級に相当する、人外の凄い回復魔法を覚えてしまったので、今更普通の魔法なんて上手く使えないらしくて。

もpのが

 魔力の流し方というか、体の中に作った魔力回廊のようなものというか、そういう物が根本的に違うようです」


 あれかな。デジカメとかってパワーが要るアルカリ乾電池じゃないと動かないみたいな。


 この場合はそれとは逆だし。

 パワーがあり過ぎて魔法の中にある術式みたいな物が破綻するとか。


「また、お前って奴は難儀な奴だな」


「そうなんですよねー」


「まあいい。

 うちにいれば、そう暮らしには困らないだろう。


 騎士団預かりなのだから、そうそうお前には誰も手は出せない。

 まだ金も充分あるはずだから生活に困る事もあるまい」


「まあ、それはそうなのですがね。

 無職のニートであるというのは、まことに困ったものです」


 という訳で日々騎士団本部に通いつつ、人参と回復魔法の威信により馬達から礼賛される事だけを心の糧としていた。


 もちろん、公爵家の馬達も同様なのであった。


 青い鳥の情報を持っていそうな方々も一向に戻っては来ないし。

 馬車で通う道すがら、御者のアルバートさんに訊いてみた。


「そういや、公爵家には他の動物もいるとか聞いたのですが、見かけませんね」


「ああ、動物というか御当主達が使役している魔物達だな。

 従魔という奴だ」


「へえ、可愛いのです?」


「どうだろうね。

 どっちかというと、雄々しいとか凛々しいとかなのではないかね。

 そういや、待機で家に居残っている奴もいたはずなのだが」


「その子はどこに?」


「よくわからんのだが、専用の空間があって、何かの事情でお留守番をしているような奴はそこで暮らしているらしい。


 わしらにもよくわからんなあ。

 うちの部署は馬の世話だけだし」


「そうですかあ、それはとっても残念ですね~」


「そんな事を言うのは、サヤ様くらいのものだね。

 何しろ、あれらは基本的に戦闘用の魔物なんだからね」


「ちなみに、その子達ってモフモフですか?」


「さあねえ」


 一応は探してみようかな。

 どこにいるものやら。


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