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ログホライズン外伝if ~1人で行う世界制覇~  作者: 夜の狼
第3章 -義理と波乱ー
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姫様襲撃事件

今回は、一気に5話連続の投稿になります。現在はまだ前哨段階ですが、物語は少しづつクライマックスへ向けて動き始めます。

「レイネシア、あたしから離れないで!」

 アンジェロはそう言うと、背中にレイネシアをかばって一人で敵の集団に立ち向かった。

「たかが女1人に何が出来るってんだ?邪魔くさいお前から神殿送りにしてやるぜ!」

 敵がそう言って斬りかかって来ると、アンジェロは短くつぶやいた。

「頼みの力(ラストリゾート)」

 背後にレイネシアをかばっている為、攻撃を自由に避ける事が出来ず行動も制限されるアンジェロは、短期決戦でかたを付ける為に、「頼みの力(ラストリゾート)」を解放したのだ。そして、敵の攻撃を魔剣で弾いて捌(さば)くと、反撃として相手に容赦無い一撃を見舞った。彼女に斬られた者は、一瞬の輝きの後に無数の泡となってその姿を消した。

「な、馬鹿な……」

「一撃……だと!?」

 目の前でそれを見せ付けられた集団は、さすがに驚きと動揺を隠せなかった。

「悪いけど、あたしは愚か者にかける情けは微塵(みじん)も持ち合わせていない。敵であっても払うべき敬意がある相手も居るが、あんたらにはそんなものは無い」

 アンジェロはそう言うと、今敵を斬ったばかりの魔剣を、まるで付いた血を払う様に一振りして、ゆっくりと集団に視線をやった。その様子に、集団は恐れを隠せなかった。

 名前を隠してはいるが、推定でレベル90オーバーの冒険者を、一撃で屠(ほふ)る事が出来る力。まさに、死神とも魔王とも呼べる存在が自分達と対峙しているのだ。これに勝る恐怖は無い。

「くそう、所詮相手は女1人だ。全員でかかれ!」

 冒険者が完全に死ぬ事は無いという事もあり、集団が半ば自棄(やけ)になって襲って来た。

「てめえの所業に、あの世と神殿で2度後悔しな!!」

 そう言うと、アンジェロは向かって来る敵の集団を次々に容赦無く斬って捨てた。その姿は、まさに鬼神とも呼べるものだった。

 名前が伏せられている為に、例え斬られた者がアキバの神殿で復活したとしても、それを見分ける事は出来無い。しかし、もし仮に正体が割れた者がアキバを復活地点としていたのなら、おそらくだが街から2度と出られる事は無いだろう。

 レイネシアに牙を剥(む)いた連中を、アキバの住民達が許すとは到底思えないからだ。だが、事実上死なない冒険者を殺す事は出来無いので、24時間の監視が付いたどこかへ監禁・幽閉される事になるだろう。それが、この世界における冒険者にとっての実際の死と等しい事となる。

 レイネシアを狙った狼藉者(ろうぜきもの)を、その身に付けたドレスの端にさえ触れさせる事無く、アンジェロは全て一刀のもとに斬り捨てた。恐るべき身のこなしと、凄まじいまでの剣速である。

 レイネシアの護衛が最優先であるので、アンジェロはあまり自ら動かずに斬り付けて来る者だけを相手していた。自らに迫る刃を余裕の間合いで見切ってかわすと、お返しに速(すみ)やかな死の反撃をプレゼントするのである。

 やがて、会場に敵の影が完全に無くなったのを確認すると、ようやく魔剣を鞘(さや)へと収めた。

「レイネシア、大丈夫?」

 アンジェロが、背後にかばったレイネシアの安否を確認すると、

「はい、お陰様で。」

 そう答えながら、レイネシアは襲撃の現場となった会場を見回していた。警備の者達が会場全体の被害状況を確認すると、割れたガラスやひっくり返ったテーブルや椅子以外、特に倒れている様な者もおらず、参加者の中には目立った被害がなさそうな事から、最初からレイネシアを狙って来たものと、アンジェロには断定出来た。

「一体、何者だったのでしょうか」

 レイネシアの言葉に、

「解らない。でも、おそらくだけど、誰かに雇われた冒険者だろうね。さすがに雇い主までは解らないけどさ」

 アンジェロはそう答えた。

「雇われた?何の為にでしょう?」

 レイネシアの疑問に、

「狙われた張本人が、それを言うの?」

 と、アンジェロが苦笑いしながら言った。


 やがて、混乱が収まると会場には来客とセルジアッドが戻って来た。セルジアッド本人には逃げるつもりはさらさら無かったのだが、周囲の使用人や警備の者に無理矢理連れ出されていたのだった。

 しかし、その警備に気が付かれなかった事から、おそらくだが襲って来た連中はサブ職にアカツキと同じ「追跡者」を持っていたものと思われた。

「レイネシア、我が孫娘は無事か!?」

「はい、お爺様。私はこの通り大丈夫です」

 セルジアッドとレイネシアは、お互いの無事を確認しあうと喜んだ。

「アンジェロさんが守って下さいましたから、私は平気です」

 その言葉に、

「アンジェロ殿、大切な孫娘をよくぞ無事に守り抜いてくれた。このセルジアッド、重ねて礼を申すぞ」

 と、頭を下げた。

 セルジアッドからそう言葉をかけられて、

「頭をお上げ下さい、閣下。私はあくまでも務めを果たしただけでございます。閣下からこうして直々にお言葉を賜(たまわ)りました事、身に余る光栄でございます」

 さすがにドレスを着たまま跪(ひざまず)くのは無理なので、アンジェロは控える意味で剣を持った手を背後に回して深々と頭(こうべ)を垂れた。

「ふむ、ところで……」

「何でございましょうか、閣下」

 アンジェロがセルジアッドに尋ねると、

「ご貴殿のその剣、ちと気になるのだが見せてもらっても構わんかな」

 セルジアッドにそう言われて、

「お見せいたしますのは一向に構いませんが、おそらくですが手に取られる事は叶わないと存じます」

 アンジェロはそう言って、鞘から無敵の刃を引き抜くと横向きにしてから両手で捧(ささ)げ持ち、セルジアッドに恭(うやうや)しく差し出した。

「ふむ……、では拝見いたそう」

 セルジアッドはそう言うと、魔剣の柄(つか)を手で握ったのだが、

「これは……、まるで動かぬ。一体どういう事であるか?」

 尋ねられたアンジェロは、魔剣の説明をした。すると、

「何と、神から授けられたと申すか!?」

 セルジアッドが驚くのと同時に、周囲にもざわめきが広がった。

「なる程。ならば、主(あるじ)の言う事しか聞かぬと言うも、また道理」

 そう言うと、セルジアッドは深く頷いた。

「しかし、未だに信じられぬが、もしその剣をわしに譲れと言ったら、そなたはどうする?」

 セルジアッドに言われて、

「お言葉ですが、閣下。この剣はイースタルはおろかヤマト全土と引き換えにしても、渡す事は叶いません。なぜなら、この剣は神から賜った世界で唯一無二の存在であり、持つ者の身に栄光と同時に滅びをもたらしかねない武器だからです」

 アンジェロはそう返事をした。

「……ふむ、そうであろうな。いや、ただの戯(たわむ)れである、気にせぬ様にな」

 セルジアッドは、アンジェロの答えを聞くと感慨深そうに言った。


 しかし、レイネシアを始めとして参加者に被害は出なかったとは言え、当然ながら舞踏会は続行不可能となった。

 けれど、不謹慎ながらレイネシアは面倒事が無くなったとばかり、内心ではほっとしながら喜んでいた。

もちろん、狙われたのが自分だとは解っているが、こんな事なら集まりがある度に襲撃されても良いとさえ思ってしまい、慌ててその考えを払拭(ふっしょく)した。

「レイネシア」

 不意にアンジェロに呼ばれて、我に返ったお姫様は、

「な、何でしょう?」

 と、努めて平静を装った。

「今何か、ものすごく物騒な事を考えてなかった?」

 ニヤリと笑うアンジェロにそう指摘されて、

「い、いえ。何も……」

 内心ではギクリとしながらも、知らぬ顔でそう返した。

「はて。呼び出したはいいんだけど、これ、どうしたもんかな」

 と、アンジェロは手に持った魔剣の置き場所に困っていた。何せ、今は魔法の鞄(マジックバッグ)は控え室に置いてあるのだ。魔剣「無敵の刃(インビンシブル・ブレード)」は、持ち主の意思でどこからでも呼び出す事が出来るが、反対に戻す事が出来無い。普通の召喚術とは違って一方通行なのだ。

 さすがに、ドレスを着たままで剣を背負う訳には行かないが、どのみち舞踏会は中止になったし、乱れた服装のままでは続行も難しい。とりあえず、アンジェロはドレスの裾を元に戻すと、剣を持っていない方の手で、スカートに出来た皺(しわ)を伸ばしたり、埃(ほこり)を払う様な仕草をした。

「全くあいつらめ……。この準備にかかった費用を弁償させてやりたいわ」

 そうこぼすアンジェロと、それがおかしくて微笑を浮かべるレイネシア。セルジアッドは、そんな2人を眺めながら思った。

(欲しい……。この者を、出来る事なら我が臣下に欲しい……)

 イースタルの為政を担うこの初老の男性は、喉から出かかったその言葉を辛うじて飲み込んだ。

 凛(りん)とした気高さと気品、そして類稀(たぐいまれ)なる美貌。さらには並ぶ者が居(お)らぬ程の圧倒的な戦闘力。まるで、伝説の戦乙女(ワルキューレ)ーーもしくはヴァルキリーーーの様だった。いや、本当に彼女は戦乙女なのかも知れない。

 実際、今持っている剣は神からの賜(たまわ)り物だと言うし、たった今、実際に自らの目の前での活躍を見た者なら、彼女が戦乙女だと言っても誰も疑わないだろう。それくらいの材料をアンジェロは揃えていたからだ。

 しかし、アンジェロは冒険者だ。自由気ままなその存在を、自らの手元に置いて使う事など出来るはずもない。アイザックを始めとして、イースタルの力になってくれている冒険者は多いが、それらは全てあちらーー円卓会議ーーの好意に過ぎ無い。ましてや、セルジアッド自らが戦乙女にも例えた者である、容易に彼ら大地人の意思に従うべくも無いだろう。


「何ですって!?」

 アンジェロから念話で緊急の報告を受けたシロエは、ギルドの執務室で思わず大声を上げてしまった。そして念話をしたまま、ほとんど反射的に片手を動かして近くにあるまだ何も書かれていない白紙と羽根ペンを手繰り寄せ、アンジェロが話す報告の内容を書き留めるメモの用意を始めた。

 それが終わると、今度は円卓会議のメンバーに念話を回し、すぐに議会の召集にかかる。何せ事は緊急を要するのだ。全員の都合を聞いた上でまた後日なんて事は言っていられない。

 しかし、このレイネシア襲撃事件が、これより後に起きる”ある出来事”に対して重大な意味を持っている事を、シロエはもちろん円卓会議の誰もが気が付く事は無かったのである。


 アンジェロは、それから数日の間レイネシアの護衛として、共に「エターナルアイスの古宮廷」に留まっていた。襲撃がそれで終わりという確証も無かったからである。

 けれど、レイネシアがアキバに帰還する日になるまで、以後は全くの平穏であった。普段着になったアンジェロは、魔剣を背負って城内のあちこちを警戒して回ったが、特に気になる様な事も無かった。

 アンジェロは、道中の事を考えると再び乗用飛竜を呼び出してレイネシアを乗せ、一足先にアキバへと向かった。馬車でのんびりと地上を移動するよりは、こちらの方が余程安全だったからだ。

 アキバへ戻ったアンジェロは、皆の出迎えを受けるとレイネシアと別れてから円卓会議の招きを受けて、事件のあらましを説明して聞かせたが、はっきりとした首謀者が誰だか解らない以上、円卓会議としては何も出来る事が無かった。せいぜい街の警戒を強めるくらいだったが、犯人とそうでない者の見分けが付かない以上、無駄とも言える話だった。

この作品は、あくまでも二次創作ですが、本編にさりげなく絡んだりしています。何かおかしい所があれば、遠慮無くご指摘下さい。

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