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ログホライズン外伝if ~1人で行う世界制覇~  作者: 夜の狼
第3章 -義理と波乱ー
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面倒事処理係

今回は場面の描写が少し難しかったので、解りにくい部分があればすいません。

 アンジェロがレイネシアと待っていると、豪華なファンファーレと共に合図が送られ、階段を降りたアンジェロの目に舞踏会の会場の光景が飛び込んで来た。

(これは、ほとんど御伽話おとぎばなしの世界だなあ)

 それを見ながらアンジェロはそう感じた。けれど、まるで夜空に輝く星を散りばめた様な豪華なシャンデリアに、顔が映る程に磨き抜かれた大理石の床、どこかの芸術家が描いた絵の様に着飾った来客の面々など、ここまで想像通りだと逆に驚く事は無かった。

 レイネシアが会場入りする為に階段を降りると、一瞬その場が水を打った様な静まり返った。やがて、あちこちからため息や賞賛の声が漏れ出した。

「いつ見ても、レイネシア姫はお美しい」

「さすが、イースタルの冬薔薇ふゆばら

「あの歳であの気品と落ち着きぶり、さすがですな」

 だが、それと同時に小さいながら別のささやきもあった。

「姫の後ろに控えているのは誰だ?」

「一体どこの令嬢だろうな」

「あの様に美しい女性は、滅多にお目にかかった事が無い」

 レイネシアは、純白のドレスを身にまとっていた。同時に、ひじまである白い長手袋をはめていて、その装いは白一色であった。まさに、「イースタルの冬薔薇」と呼ばれるにふさわしい井出達いでたちだった。

 白は高貴な色という事で、普段は白がトレードマークのアンジェロも、さすがに今回ばかりはレイネシアにそれを譲り、自らは緑を基調とした落ち着いた半袖の、裾を少し絞ったロングドレスを着ていた。

 長手袋だけは白だったが、それは他の来客の女性も同様なので、それは問題が無かった。そして、アップにした銀髪はいつもよりも手入れがされており、付けられた花をあしらった髪飾りが、輝く様なその銀髪に一層の映えを見せていた。

 後は、イヤリングやネックレスといった装飾品だが、これも決して派手さは無くワンポイント添えた気品というものをかもし出していた。

 こういうセンスは、サブ職の芸能人のスキルで多少はカバー出来るが、それよりも個人が生まれ持った素質が大きい。アンジェロは、マリエールやヘンリエッタの意見を参考にチョイスしたのだ。そういう点で、彼女達はさすが大人の女性と言うべきだろう。

 レイネシアが会場の中央へ進み出ると、彼女の進む側の人垣が自然に割れて行った。そして、その先には1人の初老の男性が立っていた。

「お久しぶりです、お爺様」

 そう言うと、レイネシアはその男性に向かってスカートの両端をつまむと少しかがんでお辞儀をした。

「おお、レイネシア。少し見ないうちに、また美しくなったな」

 その男性は、まさに喜色満面という表情を浮かべた。しかし、その顔にはいやらしさは全く無く、穏やかで優しかった。

「うふふ、ありがとうございます」

 そう言うと、レイネシアは口に手を当てて微笑んだ。その一連の流れを見て、さすが貴族だなとアンジェロは感心していた。とても、”ずぼら”で怠惰が信条の姫様とは思えない。

「そちらの方は、一体どなたかな?」

 男性が、アンジェロの方を見て言うので、

「お初にお目にかかります、セルジアッド=アインアルド=コーウェン公爵閣下かっか。私はこのたびレイネシア姫様の護衛役を仰せ付かっております、冒険者のアンジェロと申します。そのご尊顔を拝謁はいえつ出来ました事、誠にもって身に余る光栄に存じます」

 そう言うと、レイネシアと同じくドレスの両端をつまみ、優雅にお辞儀をしてみせた。

 それを聞いて、会場のあちこちからざわめきが起こった。

「あの麗人が冒険者だって!?」

「それにしたって、あの優雅な立ち振る舞いは一体!?」

「ただ者では無いのかも知れませんわ」

 そんな周囲を他所に、セルジアッドはアンジェロに対して言った。


「うむ、我が大切な孫娘の護衛というお役目ご苦労である。それと並び、お手前の見事な口上、誠にもって感じ入った次第である」

「お誉めに預かり、恐悦至極きょうえつしごくに存じます」

 それを聞いたセルジアッドは、

「堅苦しい挨拶はこれまでにしよう。今宵は親睦を深める為の交友会である。皆、肩肘張らずに楽しむが良いぞ」

 そう宣言すると、早くも貴族と思われる若者が何人か、レイネシアの元へとやって来た。

「レイネシア姫、早速ではございますが、是非ともダンスのお相手などお願いしても宜しいでしょうか」

それを聞いて、レイネシアが少し横を向いてジト目で(うええ……)という、いかにも面倒くさいという表情を見せたので、

「閣下。誠に差し出がましい様でございましょうが、姫様は急な移動で少しお疲れのご様子。差し支えが無ければ、僭越せんえつながら、ここはわたくしがこの方のお相手をいたしたく思います」

 アンジェロがセルジアッドにそう言うと、

「失礼ながら、冒険者に我々のダンスの相手が務まりますかな?」

 セルジアッドの手前、あからさまではないが貴族の1人が少し侮蔑めいたニュアンスを含んだ事を言ったので、

「試して頂いても宜しいのですよ?」

 アンジェロがそう返すと、

「うむ。冒険者のお手並み拝見としてみたら、どうだろうな」

 セルジアッドが言うので、

「それでは、一手ご教授願えますかな」

 若者がそう言って、アンジェロにうやうやしく手を差し出して来たので、

「はい。未熟者ですが、お相手つかまつり致します」

 アンジェロはそう言うと、差し出された若者の手に自分の手を添えながら、ドレスの片端をつまんで一礼をした。

 若者に連れられてアンジェロが会場に進み出ると、会場の視線が集中して来るのがアンジェロにも解った。

 下賎げせんな冒険者のお手並み拝見、といった、いかにもな雰囲気を持った空気が会場を支配し始めている。

 しかし、いざ音楽が流れ出してダンスが始まると、ダンスの腕を見せつけるはずだった貴族の若者は、逆にあっさりとアンジェロの手玉に取られて、ほうほうのていで引っ込んだ。

「お粗末様でございました」

 そう言うと、アンジェロは優雅にお辞儀をした。サブ職「芸能人」のスキルで、貴族の若者相手にアンジェロは見事にダンスを踊ったのであった。本職の最高レベルの半分ではあるが、さすがにスキルがそれなりのレベルになれば、貴族と言えども大地人ではアンジェロに歯が立つものでは無かった。

 その後も、アンジェロはダンスを挑まれた相手を、ことごとく返り討ちにした。

「はっはっは、見事だ。冒険者とは言え、ダンスでも決して侮る事は出来んな」

 そう言うと、セルジアッドは拍手をしながら嬉しそうに笑った。

「いえいえ。まだ若輩者でありますので、未熟な技量で申し訳無く思います」

 アンジェロはお辞儀をしながらそう言った。

「いやいや、何の何の。冒険者は戦うばかりでは無く、こういった事にも長けておるのだな。感じ入ったぞ」

「恐れ入ります」

 アンジェロは、セルジアッドに対して優雅にお辞儀をして見せた。


 冒険者と言う事を除けば、まれに見る美貌びぼうとプロポーションを持ち、優雅な身のこなしと貴族を前にして一歩も退かない見事な立ち振る舞い。会場に居る者達は、すっかりアンジェロに感心してしまっていた。

 レイネシアーーこの、生来せいらいずぼらで怠惰な姫様ーーは、そんなアンジェロを見ながら、主役を取られた寂しさや嫉妬などと言う思いよりも、自分が楽を出来た事の方が先に出てうれしかった。そういった意味でも、アンジェロに護衛を頼んで正解だったのかも知れないと考えていた。

 同時に、物事をここまでにこなすアンジェロの手腕にも、深く感銘を受けた。

(一体、この人は本当に何者なんだろう。ただの冒険者とはとても思えない)

 相変わらず、アンジェロは貴族にダンスの相手をわれては、苦も無く相手をひねり続けていたが、さすがにこのままでは貴族の面子が立たないと思ったのか、セルジアッドが直々にダンスの相手を所望して来た。

「どうだろう、この老体にも一手お付き合い願えるだろうか」

「喜んでお相手あい務めいたします、閣下。」

 アンジェロは迷う事無く応じると、セルジアッドをパートナーにダンスの共演を始めた。しかし、今回はおもむきを変え、上手くセルジアッドに合わせる事で見事な舞踏を披露して見せ、これを見る者達を驚嘆せしめた。

 踊りながらセルジアッドは、

(この容姿だけでなく、能力も見事な器量だ。冒険者にしておくには惜しいな)

 と、目の前に居る稀に見る逸材に関して、考えを巡らせていた。

 やがてダンスが終わると、音楽が止んだ一瞬の静寂の後、盛大な歓声と拍手が巻き起こった。

「うむ、見事だ。実に大したものであるな」

「お褒めに預かり恐悦至極です」

 アンジェロは、セルジアッドに対して胸に手を当てるとドレスの片端をつまんで優雅にお辞儀をした。

 セルジアッドが次の言葉を話そうと口を開けた次の瞬間、会場の外に面しているあちこちの窓が割れて、10人近い正体不明の者達が乱入して来た。服装は全員ばらばらだったが、手にはもれなく剣や斧といった武器を持っていて、それぞれ防具も付けて武装している。その装備やスタイルがばらばらな事から、大地人では無くて冒険者だと思われた。何よりそれが解るのは、一様に名前を隠していたからだった。

 一瞬で舞踏会場は大混乱に陥った。皆、先を争う様に複数ある会場の出口や外へと向かったが、乱入して来た連中はそういった逃げ出す人には目もくれず、短時間で周囲を見回すと真っ直ぐにレイネシアへと向かって行った。


「来い!魔剣『無敵の刃インビンシブルブレード』!!」

 アンジェロは魔剣を召喚した。すると、一瞬で彼女の手の中に漆黒の刀身を持つ剣が現れた。その剣を構えたアンジェロは、レイネシアを背後にかばうと叫んだ。

「聞くだけ無駄だが、誰だ!?」

 当然だが、相手はその問いには答えない。

「まあ、返事があるとはあたしも思って無かったけどね」

 アンジェロはそう言うと、ドレスの裾を膝下までたくし上げてから縛った。

「あんた、結構いい女だな。そのドレスが大事だったら、そっちの姫を置いてってもらおうか」

 賊の1人が口を聞いた。

「お断り!それと、結構じゃなくて、かなりいい女だよ!」

 アンジェロは、即答ついでに言い返した。

「ここはあたしに任せて、閣下を早く安全な場所へ!」

 そして、周囲に短くそれだけ言うと、アンジェロは前を向きながら後退しつつ、レイネシアのそばへと移動した。

どこかおかしい部分があれば、遠慮無くご指摘頂けたらと思います。

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