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2――旅の始まり

8/15 全く無かった六人の表現を加えました。

「そういえば、日光とかは大丈夫なのか?」

「はぁ…またその質問か…」


またとは何だ。俺はこの質問は初めてだぞ。


「お前のような異世界人に会うとその質問を初めにされるのよ。妾には日光も十字架もニンニクも効きはせぬ」


驚いた。本やテレビで言ってたこと全てが違うじゃないか。

なぜリゼが俺が異世界人と知っているかというとさっきの自己紹介の際に付け足したからだ。


「そんなことよりも、ほら。あれがヴァーヘンハイア王国の王城よ」

「おおお…すっげぇ」


日本に居た頃に見た一番大きなものといえば東京ス〇イツリーぐらいなもんだ。

そんなものとは比べものにならない程大きな城がそこにはあった。


「これが王城…。さて、お前以外の騎士が取っつきやすい人たちだったらいいなぁ」

「どういう意味よ!」


ここまでは馬に乗ってきたが、王城に馬を持ち込む訳にはいかないのでその辺に繋いで王城に入る。


「君たち。通行証はあるか」


門番の兵士に止められてしまった。もちろんそんなものは無い。

だが心配の必要も無い。


俺は左の手袋を、リゼはズボンを脱ぎだした。


「な、何をしている!?」


兵士が思わず身構える。そりゃあ驚くわな。こんなこと日本で見たら犯罪だ。


「仕方無いのよ。妾の右太ももの内側を見ておくれ」

「どいういう…はっ!」


兵士はどうやら気づいたようだ。そう、そこには封龍の紋章があるのだ。

俺も左手の甲にある紋章を見せるとあっさり通してくれた。


 リゼはその後、時の女神に文句を垂れていた。なんで手とかにしてくれなかったのとか罵倒を浴びせていた。


 遂に王城の謁見の間に来た。あとは騎士として恥じずに扉を開けるだけなのだが…

 扉を開けるとそこには、話に聞かされていたり風の噂で耳にする『英雄』とも言える人物や、いかにも特殊な力がありそうな人たちばかりだった。

俺が平凡すぎてそう思うだけかもしれんが。

男が一人、壁際で沈黙を貫いている。一人の女はこちらをやわらかく見ている。

少女は腰に付けていたボトルで水分を補給している。もしかしたら俺らより少し前に着いたのかもしれない。

子供が一人横で寝ている。この子も騎士なのだろうか。

一人の女性はなんというか、ここにいること自体が申し訳なさそうだ。


「お、揃ったようだな」


そう言うのは銀色の甲冑に包まれた女性だ。

名前はシェリー・リース。生きる伝説とすら言われている人物だ。


「お前たちが最後じゃ。王への挨拶よりも先に祝福を受けたまえ」


そう言うのは屈強な男性で、背中にボウガンを背負っている。

ザット・エネラル。西の国クェイロスの切り込み隊長だ。


 どうやらメンバーを見る限りこの二人が最年長でこの場を仕切っているようだ。


「わ、わかりました」


対等な立場だというのに敬語を使ってしまった。情けない。


「敬語など使うなよぉ。これから寝食を共にする仲間だろう?」

「クスッ」


そう言うのは一目で豪快とわかる女性だ。

彼女も有名人で、海で最も恐れられた海賊だ。

そして彼女の言葉にリゼが笑う。そりゃあどっかの誰かさんに同じセリフを言われたからなぁ。


ザットの言葉通り祝福を受けに王城の更に奥へ進む。

なぜ奥に進むのかと言えば、そこに祝福を与える人物がいるからだ。

…あれは人物と言えるのだろうか?


 奥まで進むとそこには扉があった。とてつもなく大きな扉だ。

この向こうに何が居るのか俺は知っている。

 力を込めて扉を開く。


 そこは庭園だった。庭園というのが最も当てはまる。

そこに『それ』はいた。


 自分の何十倍はあろうかという大きな図体。全身の真っ黒な(うろこ)。今では傷つき飛べなくなった翼。


 そこにはドラゴンが存在した。名をグネイオス。魔龍が創り上げた四体の強力な四体の龍のうちの一体である。

わけあって今は人間の味方をしているのだ。


「古龍グネイオスよ。最後の二人に祝福をお願いする」


そうシェリーが言うと、そのドラゴンは俺の方向を向いた。少し驚いたように見えたのは気のせいだろうか。


「そちらの吸血鬼からする。こっちに来なさい」


喋ったあああ!いやまぁ知ってたけど、ドラゴンが人語を話すのはやはりわかっていても驚く。


 リゼの祝福が終わり、俺の番が来た。

周りを見渡すとそれは強そうな人ばかり。俺、間違えて選ばれたんじゃねぇの?と考えたくなる勢いだ。


「次はお前だ。早く来なさい」


ドラゴンに呼び出された。もう行くしかない。

そうして場面は物語の初めに戻る。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「全員の祝福が終ったところで早速じゃが特異点に向かってもらうぞ」


王様が言う。

その言葉に異存は無い。


 魔龍は封龍の騎士に紋章が刻まれてから約一週間で目を覚まし、一か月で完全に復活する。

完全復活してしまったら誰にも止められない。この世界が終る。


 魔龍を封印するには、魔龍の前に紋章を持った騎士が一人でも居れば可能だ。

魔龍の前で紋章に込められた魔力を全て放出すれば、魔龍は再び封印される。


 俺たちが紋章を授かってから約五日経っている。そろそろ動きださなくてはヤバイ。


「王よ、感謝します。世界は任せて下さい」


シェリーが言う。この人にこんなこと言われたら信用しかしないな。


「それでは、馬車で北に向かうぞ!」

「「「「「「「「おー!」」」」」」」」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 なぜ北に向かっているのか。簡単だ。そこに魔龍がいるからである。

 魔龍はこのユレーク大陸の一番北から海を渡った土地である通称『特異点』と呼ばれる場所に封印されている。

この特異点というのが厄介で、この大陸にはドラゴンがうじゃうじゃいるという。

そのドラゴンを倒しながら進み、特異点の更なる先である魔龍のもとへ最低でも一人は到着しなくてはならない。

これまでの戦いでは、到達するまでに半分以上の騎士が犠牲になったという。


「…なぁ、どうせなら自己紹介しないか?」


こう提案したのは俺だ。自己紹介しておけば、お互いどんな人間と旅をするのかわかるからだ。


「ふむ、それもそうだな。自己紹介といこうではないか」


シェリーが乗ってくれた。これなら全員してくれるはずだ。


 こうして封龍の騎士同士の自己紹介が始まった。

五人全く喋ってないですが、次回喋ります。

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