まだまだ宜しくないヤツだけと、とりあえず結婚致しましょう。(決定)【本編完結】
やはり私の弟のブライアンは、前世での私の息子なのね。つまり姫とは前世では双子だったと。
「そうなんだよ。姫と婚約破棄した時は思い出さなかったのに、姫とユリウス大神官の結婚式で思い出したんだ。それで納得出来たんだよ。姫を好きでは有ったけど、婚約破棄はそんなにショックではなかった。更には結婚式で思った。今回は愛する人と結ばれて良かったとね」
ブライアンは姫を好きだった。結婚しても、良い関係を育めると感じていた。それは姫も同じだった。
「私も同じ気持ちだったのです。ブライアン様なら信頼ができる。政略結婚でこんな方と婚約できるなら幸せだと」
二人ともに前世では、王家の者と政略結婚で結ばれた。しかし二人は納得していた。激しい恋愛ではなかったけれども、互いに相手を思いやり親愛の気持ちを育んだ。
「「幸せで悔いのない人生でした。だからこそきっと、前世を忘れていたのです」」
たしかにそうかもしれないわね。私もすべてを忘れている。夢で見たりはしているけれど、あれは夢であるとしっかり感じている。私は己の前世とやらを、未だに思い出してはいない。それはつまり……
「クリスティーネも満足して死んだのよね。新しい命を授かり育み産み出した。クリスは己の短い命を知っていた。だからこそ愛するユウに宝物を残したかった。もちろん己も死ぬ気なんてなかったのよ? 」
だって……私は最後まで生きようと頑張ったもの……双子の成長が見たかったから……ユウが双子を抱いて、喜んでくれる姿が見たかったのだから……
「しかし死には抗えなかった。でもクリスは満足して死んだの! ユウの役に立てる。己が死んでも愛おしい我が子と共に生きてほしい。己の命は尽きる運命だったから! だから己がいなくなっても! ユウには守るべき双子がいる。生きる希望を与えられたと喜んでいたんじゃない………………私が死んでも愛しい我が子たちと共に生きて欲しいと。寂しさを感じて欲しくないと……なのにユウは全てを放棄したのね。クリスの……私の思いは報われなかったわけよね? 」
そうよ。報われず!届きもしなかったのよ!
駄目ね……私も思考が混じっているわ。時々夢で見たことを、己の過去のように感じている。まあ正確には前世であり私の過去ではないけれど、気が高ぶるとクリスティーネの気持ちに同調してしまう。冷静にならなきゃダメ。これではエドワードと同じになってしまう……
私は私よ。クリスティーネではないの。エリザベートなのよ!
*****
さてと。とりあえず座りましょう。三人用のソファーの中心に私が一人で座り、姫と弟と皇太子様を対面の三人用に促す。皇太子様が何だか不服そうな顔をしている。反省しているのではないの?ならばふーん……私は扉の横に控えているリーダーを手招きし、己の隣をポンポンと叩く。思わずギョッとするリーダー。
「早く座りなさいよ。真ん中開けてあげるわ。これなら良いでしょう? 」
「…………触るな…………コロス……ぞ……」
「……………………!! 」
「あのねぇ……護衛が守るべき対象に触れられないのでは困るのよ。エドワードは威圧するな! リーダーは気にしない! これから一年間は同じ釜の飯を食べる仲間です。現場では私が隊長で貴方方はヒラです。魔物を実地でビシバシと倒して貰います! 」
皆さま口を開きポカーンとしていますね。特に姫と弟には寝耳に水でしょう。しかし私は決めたのです!
「既に王には計画書を提出しました。皇太子様育成強化計画です。皇太子様はかなりの魔力を成人まで封印しているとのこと。ならば体を鍛えましょう。筋肉量を増やせば、魔力を効率よく体内に巡回できます。いきなり封印をとくと暴走してしまうこともあるそうです。それを防ぐためにも! これは良いことづくめなのです! 」
私はリーダーを例に話を続ける。リーダーは生まれながらの魔力量が少ない。なので簡単な魔法しか使えない。もちろん討伐隊では剣士として十分に働いていたし魔法も役立てていた。
「リーダー。気配を消してみて」
途端にリーダーの気配がなくなる。
「そのまま動いて適当な所に止まって」
一息おき私は皆に問う。
「今、リーダーがどこにいるかわかるかしら? 」
姫と弟が頭を振る。皇太子様は部屋の中をくまなく検索しているようだが、やがて降参した。
「リーダー。もう良いわよ」
リーダーの姿が現れる。彼はそのままソファーに腰かけていた。
「リーダーってば凄いでしょ? ブライアンはリーダーより魔力量があるはずなのに見つけられなかった。私がさりげなく鍛えたの。筋肉は魔力を吸収し蓄えることが出きる。また筋肉量を増やせば体を魔力が効率良く巡回する。元々の魔力量だけでなく、自然な魔力も取り込めるようになるから、魔法がより沢山使えるようになるわよ 」
メンバーは、皇太子様にブライアン。元騎士団長の息子と元魔術師団長の息子も預かるわ。私が隊長でリーダーが副隊長よ。他はもちろんヒラです。
「リーダー? 副隊長がヒラに威圧されないの! エドワード? ヒラが副隊長を威圧しない! 討伐隊では信頼が大切です。おバカ二人のことも温い目で見ること。もちろん節度は大切です」
「それは良いけどなんで僕も! 僕は関係ないよね? 」
ブライアン?関係ないとは言わせませんよ?
「自力でローズマリーの魅縛を解いたのは認めましょう。しかし一時でも囚われたのは事実です。それに貴方は勿体ないわ。せっかく魔法を理解出来ているんですもの。リーダーみたいに悩筋でもこれだけ伸びるの。だから貴方の使える魔力が増えたら、将来公爵家の当主になっても助かるわよ」
リーダーってば睨み付けないでよ。例えばの話じゃない。
「お母様は……エリザベート様は……それで良いのですか? 」
「良いのよ。私は公爵令嬢のエリザベートなの。皇太子様の婚約者として生きてきたわ。正直ぶっちゃけたら、あの婚約破棄の後は万歳三唱したわよ。変態から逃げられるってね。でもね? クリスティーネの気持ちも解るの。許せないけど許したい。クリスはユウを愛してると思えたから許した。なら私にもそう思わせてくれる? 皇太子様。ううん。エドワードが私を振り向かせてよ。私は貴方に口説かれたことがないわよ? 変態行為ばかりはされたけれど、その訳も信じましょう。だから二人でその変態行為を抑えましょう。魔力を上手く扱えれば変わると思うの。私だって使いこなしているわ。ユウではなくエドワードなら出きるはずよ」
俯くエドワード。返事はないのかしら?
「しかし……ユウはクリスを幸せに出来なかった……その贖罪が先だと……」
「このウスラトンカチ! クリスもユウも死んでいるの! 今の貴方はエドワードでしょ? なら貴方は私がクリスティーネじゃなければ好きではないの? そうよ。私はクリスではなくエリーだもの。だから贖罪なんて要らないわ。ましてや覚えていないのよ。満足して死んだクリスを叩き起こしたいの? それこそ自己満足じゃない! 贖罪したいなら前世を覚えている方々に土下座して一発殴られなさいな! 特にユリウス様よ! リュウに謝罪しなさい! まあ今のユリウス様にはお邪魔でしょうけど」
「はい。正直邪魔です。我が家に来る必要はございません。前世と現在を混在し己を見失なっている皇太子様を、あの人に会わせたくありません」
「わっ私は……では誰に謝罪すれば……」
「とりあえず己に謝罪しなさいな。ユウの記憶にのまれてエドワードの心を無視しているからね。後はおいおい強制しましょう。私がビシバシと鍛えてあげる。もちろん公務もするわよ。一年後が楽しみね。頑張ればご褒美デートもしてあげる。初めてのデートはリーダーとしちゃったけど、初めての遠出はエドワードとしましょう」
「エッエリー! お前余計なことを! 」
「はい。エドは威圧をストップしなさい。これからは私は貴方をエドと呼びます。エドも私をエリーと呼んで下さい。もちろん公式の場では今まで通りです」
こうして私たちは、一年間を魔の森で討伐隊として過ごした。エドはけじめだからと先ずは姫とブライアンに殴られた。 その後ユリウス様に土下座をしやはり殴られた。エドは両頬を殴ってくれと頼んでいた。それから公爵家の父親にコメコメのロジャース。迷惑をかけたと思う者たちに、誠心誠意謝罪して回った。
エドワードは私が眠っていた一年間にかなりの調べものをし、己の前世と向き合っていたのだと言う。そして己の記憶が己に都合の良いものばかりであると気付いた。
その忘れていた部分の真実を知り、深い後悔に悩まされてしまう。己でも自分が誰を好きなのか?誰を幸せにしたいのか?それらの何もかもが曖昧となり、前世と現在の区別がつかなくなっていたのだという。クリス!クリスと執拗になっていたのが起きたら大人しくなっていた。あれはこれが理由だったのね。
毎日毎日クタクタになるまで体を動かす。公務としての書類仕事をこなし親善として各国を訪問する。私も婚約者として一緒に出向き、皇太子様のサポートをしながら人脈を広げてゆく。
私も変態だからと、皇太子様を避けてばかりいたわ。よりそうつもりだったのならば、もう少し側により中身をみて差し上げるべきだった。己の身では扱いきれない魔力過多による弊害。多大な魔力を封印しているための苦しさ。それらを知らずに変態だと影で罵っていた。もう少し婚約者らしく寄り添っていたならば、あそこまで変に拗れることはなかったのかもしれない。魔の森の討伐の帰りにあの妖精たちの湖に二人で寄り道をする。清浄な魔力を作り出す魔道具作りはかなり進行している。やがてこの地は魔の森のオアシスとなるでしょう。
他の仲間は今日と明日は休日。私とエドはお城での公務のために移動中。その途中で寄った湖の湖畔。相変わらずに美味なマリエンヌの手作り弁当を取りだしエドに差し出す。私はカップでスープを作るだけ。周囲に結界を張り巡らしさあお昼を戴きましょう。
お腹がいっぱいになりエドがうとうとし始める。毎日倒れるくらいに体を動かしているからか、このうとうとは毎回のお約束ごと。私は膝を貸して、己もそのまま…………
まったくもう……
…………お尻の辺りがモゾモゾするのはなぜなの?パシりと不埒な手を捕まえた。
「すっすまない……ついでっ出来心で……」
「エッエリー? 許してはくれないのか? 」
私は握った手を己に引き寄せ近付く頬に軽くキスをした。互いの顔が真っ赤になる。
「ボディタッチもキスも自然の流れだったでしょ? お互いに嫌じゃなかったから良いわよ。でも完全に寝ているときは駄目よ。特に変な薬は使用禁止よ。もしかしてエドは嫌だったの? 」
「嫌な訳がないだろう! 疑うならもっと先へと進もう! 」
くっ苦しい!抱き締めすぎー!折れるー!背骨が折れるー!ヘルプミー!
「はぁ……はぁ……はぁ……」
身体強化をしたまま抱きついたわね……死ぬかと思ったわよ。
「調子にのらないの! さあそろそろお城へ向かいましょう。明日は朝一番で隣国の先の国へ飛ばなくちゃ。前回いらした親善大使のご夫婦が接待してくれるんですって! ご夫婦ともかなりの魔力もちだけど、奥さまには特に才能があるの! お友だちになったのよ! 」
「……お友だち……」
「女ともだちよ! 変な誤解はしないで! エドも一緒にいたわよね? そう言えば旦那様が奥様にベタ惚れで、一年かけて口説き落としたらしいわよ。エドも素敵なデートとか旦那様に教えて貰ったらどう? 変態は二度とゴメンよ」
「……」
*****
約束の一年後、私たち二人は無事に結婚式を挙げました。私の等身大の人形はある国の親善大使夫妻の活躍で、以降更新されることは無くなったのです。
私たちは内政的なことばかりではなく、多大なる魔力を民のために使用し、ますます国を発展させてゆく。やがて無事にたくさんの子宝にも恵まれました。
めでたし……かな?
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