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あおいだいち  作者: 佐々木 栞
第3章 高校生

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第17話 ランキング【高校生編7】

今年もあと1ヶ月もすれば終わる。

高校1年生になって早くも12月に入った。

校外学習で組んだメンバーがそのままグループ化して現在も一緒にいる。

お昼ご飯はこのメンバーで食べることが多かった。

1学年のクラスが並ぶ廊下の1番端っこのところに集まるのが定番になった。

今日もそこで皆でお昼ご飯を食べていた。

石井くんも放送部の当番じゃないみたいで今日はいた。

春人が遅れてやってきた。

購買に行ってきたらしい。

買ってきたパンを手に持っていた。

春人が着いた早々に松本さんが春人に文句を言った。

「ちょっと!!春人!!北河高校1学年美少女ランキングってどういうこと!?」

春人達が密かに開催した北河高校1学年のNo. 1美少女を決めるランキングが女子たちにバレたのだ。

春人からランキングするから誰か選べって言われた。

その時に辞めておいた方がいいよって言ったのに

大丈夫!バレないバレない!と半ば強引に投票させられた。

春人達が密かに計画してたのはなんとなく知っていた。

そのために友達作りに奔走していたことも。

そして決行し案の定バレた。

主犯格は春人含めて何人かいるらしい。

さすがに春人ひとりで全クラスの投票を集めるのは不可能だろう。

当然、女子達から不満の声が上がった。

そして松本さんがある種代表として春人に文句をぶつけていた。

俺は火の粉がかからないように目を背けた。

「どうして!?どうして!!?」

松本さんは拳を握りしめてワナワナしていた。

これ春人殴られるか?と思っていたら

「どうして私がランキング5位なんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

と叫び春人の胸ぐらを掴んでグラグラ揺らしている。

あおいはうんうんと頷いている。

前から思ってたけど松本さんは変な人なのだ。

あおいの友人だから活発なだけでまともかと思っていたが時が経つにつれて本性が現れ始めた。

徐々に本性が現れるにつれて逆にあおいの友達なのだと実感が増した。

類は友を呼ぶとはこのことか。

「あおいが3位で私が5位!?あおいには勝てないとしても4位じゃないとおかしいだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

...怒るところそこなんだ。

俺は心の中で呟いた。

春人は特に悪びれもなく言った。

「そんなこと言われてもしょうがないじゃん。投票は公平にしたし。実際七海より上の人たちは七海より美人なんだからしょうがないよ」

松本さんからブチって音が聞こえた気がした。

「てめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!たとえ事実だとしてももっとオブラートに包めやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

更にグラグラ揺らされる春人。

木村さんが止めにかかる。

「七海ちゃん。落ち着いて。5位でもすごいよ?」

ギラリとするどい視線が木村さんに向く。

「...真央は悔しくないの?」

「...わたしは自分の順位知らないし...」

春人が余計なことを言った。

「真央は11位」

なんでそんな火に油注ぐことを言うのかね。

「真央が11位なのも絶対おかしい!真央はもっとアピールすれば3倍はモテるのにって前から言ってるのに!」

「...わたしは別にモテたいわけでも目立ちたいわけでもないし...」

「またそんなこと言って!学生時代は1度しかないんだよ!?その控えめな性格、矯正してやる!」

春人を放って木村さんにジリジリ近づく松本さん。

木村さんが逃げるように少しずつ後退する。

ここであおいから静止が入った。

「七海ストーップ!真央が怖がってるからダメよ」

あおいの制止で松本さんは少し落ち着いた。

フンっと鼻を鳴らしてお昼ご飯の続きを食べ始めた。

...よかった。

収まった。

春人はゴホゴホしてたが落ち着いてパンを食べ始めた。

最悪の空気だ。

「春人。ここまで事が大きくなったら生徒指導呼ばれるんじゃないか」

春人はあっけからんとしている。

「大丈夫っしょ。先生たちにはバレてないっしょ」

...大丈夫じゃないと思うんだけど。

俺の心配など気にしてない春人は皆に話しかける。

「皆、2年からの文理選択決まった?」

それぞれを見る。

皆決まってそうな雰囲気だった。

例年、理系はひとクラスしかないのでここで理系を選ぶと必然的に2年間同じクラスになる。

「じゃあ文系選んだ人は手を挙げて」

春人、石井くん、松本さん、木村さんの手が上がる。

「理系の人」

俺とあおいの手が上がる。

春人が驚いた様子で俺に聞いてきた。

「大地、理系選択するの!?てっきり文系かと思ってたわ」

「大学受験考えるなら理系科目も視野に入れたいから」

「理系だと担任高橋だろう?俺あの人苦手なんだよねー」

春人が女性を苦手なのは珍しい。

高橋先生に独特な雰囲気があるのは確かだ。

春人は今度はあおいに向かって聞いた。

「清水さんは医者になるためだもんね?」

「うん」

笑顔で答えるあおい。

「そっかー。皆バラバラになっちゃうのかー。寂しいなー」

感慨深そうに春人は言う。

その気持ちはわかる。

なんだかんだこのグループは居心地がいい。

「クラス分かれてもお昼ご飯とかは一緒に食べられるし」

と石井くんが言った。

寂しい雰囲気が漂うなか松本さんが春人に言った。

「2年になったら美少女ランキングなんてもうやらないでよね!?」

まだ怒ってたらしい。

「...へぇ!?」

この男図星らしい。

「何その返事!?まさか来年もやるつもりだったんじゃないでしょうね!?」

松本さんがメラメラし出した。

...やばい

春人は視線を逸らしている。

俺は昼飯が食べ終わったので立ち上がった。

俺を見て春人は言う。

「大地どこ行くの!?助けてくれ!」

「さっきやった数学のプリントを高橋先生に届けなきゃいけないから」

「お前!?親友を見捨てるのか!?」

「...お前が悪い」

俺はその場を後にした。

あおいもいるしやばくなったら止めてくれるだろう。

心の中で合掌だけしておいた。


職員室に高橋先生はいなかった。

なのでプリントだけ机に置いて戻ることにした。

職員室では岡田先生が他の先生と雑談していた。

「清水が文化祭実行委員やってくれて本当に助かった。手際もいいし行動力もある」

「あの子はすごいですよね」

「今までいろんな生徒を見てきたがここまで優秀なのは清水が初めてだ」

と話していたが岡田先生が俺に気づいて話すのを止めた。

まあ生徒の噂してるなんて生徒に聞かれたくはないよね。

俺は気にせず職員室を出た。

教室に戻るか。

途中で自販機があるところを通りかかった。

自販機が置いてあるスペースにベンチがあってそこに高橋先生がいた。

ベンチに座って1人缶コーヒーを飲んでいた。

一応、報告しとこう。

俺は高橋先生に近づいた。

高橋先生は気だるそうにコーヒーを飲んでいた。

「先生。さっきのプリント机に置いておきました。」

「おぉー。前田。ちょうどいいところに来た。ちょっと座ってけ」

手で隣のベンチを示した。

なんだろう。

俺は言われた通りに隣に座った。

「前田は理系希望なんだって?」

「そうですね」

「清水も理系希望だよな?」

「そう言ってました」

なんであおいの話題が出るんだろうと不思議に思った。

「...君たちは付き合ってるのか?」

え!?その問いに心臓が跳ね上がった。

グループは一緒でも特にあおいと親しくしてないはず。

...なんで!?

...ただ答えることは決まっていた。

「付き合ってないです」

なるべく動揺をしてないように装った。

「そうなのか」

少し考えて高橋先生は続けた。

「...それでも相当仲良いだろ?」

俺は愕然とした。

数学でしか関わりのない先生に見抜かれるなんて思ってなかった。

なんなら高橋先生とまともに話すのも今日が初めて。

俺が何も答えられずにいると高橋先生が続けた。

「...安心しろ。多分、私以外でお前達の関係に勘づいてるやつはこの学校にはいないよ。私は人をよく観察する癖があってね。来年から卒業まで受け持つ可能性のある生徒を見ていたらたまたま気づいたにすぎない」

え!?一体どこで!?

俺の表情がそう物語っていたのだろう。

高橋先生が答えた。

「そんな難しい話じゃないよ。人間の行動の中で自然なことに見えることでも不自然なことはあるってことさ。それに私は皆が注目しない細かい点も目に入ってしまうタイプだからね」

...全然意味がわからん。

「清水には先生皆が期待してるからね。私が受け持つからには下手な対応をするわけにはいかない。だから関係を聞かせてもらったんだよ。清水に聞いても答えないだろうから。君はその点素直だからね」

言い方に含みがあることに気づいた。

あおいには学校では見せてない一面があることを高橋先生はきっと見抜いてる。

...この先生怖い。

「心配しなくても私は特に関与するつもりはないよ。ただ知っているのとそうでないのでは後の対応に差がでるからね。時に前田、ラブコメ漫画は好きか?」

...何の話?話の脈絡がなくて全然わからん。

「私は昔からラブコメ漫画が好きでよく読んでいるんだ。君は読むか?」

意味はわからなくても答えておこう。

「...あまり読まないです」

その答えを聞いてニコっと高橋先生は笑う。

「そうか」

...この人には何が見えているんだろう。

なんとかして頭の中を覗けないだろうか。

「そろそろ昼休みが終わる。時間を取ってしまってすまないね」

昼休みの終了5分前の予鈴が鳴る。

俺は立ち上がってその場を去ろうとした。

「前田」

高橋先生に声をかけられた。

今度はなんだと立ち止まる。

「...頑張れよ」

「...はい...?」

最後までわからなかったけど答えておいた。

悪い先生ではなさそうだけど怖いなぁ。

高橋先生の印象がガラリと変わった。


帰りのホームルーム。

「山口。放課後、生徒指導室に来なさい」

「俺っすか?」

「そう。話があるから」

教室内がざわめく。

十中八九あのことだろう。

ホームルームが終わると春人はぶつぶつと文句を言っていた。

「まいったなー。部活あるのに」

そのまま教室を出ていった。

松本さんはあおいに

「来年はなさそうでよかったわ」

と言っていた。

あおいは苦笑いをしていた。

石井くんが俺に駆け寄ってくる。

「あの件だよね?」

「そうだと思う」

「前田くんはもう帰る?」

「俺は心配だから残るよ。石井くんは放送部行かなくていいの?」

「まだ時間あるから待ってようかなって」

俺と石井くんは2人で待つことにした。


30分ぐらいしたら春人が戻ってきた。

特に落ち込んでる様子もない。

俺と石井くんで春人に駆け寄る。

「どうだった?」

「普通に注意されて終わった」

「来年はやらないほうがいいんじゃない?」

「いいや!そういうわけにはいかないね!男のロマンが詰まってるんだ!」

何を言ってるんだコイツは...

「やりすぎると親とか呼び出されるかもよ?」

「大丈夫!うまくやるって!」

俺は呆れた。

石井くんが苦笑いしながら時計を確認した。

「山口くん。部活行かないとまずいんじゃない?」

「そうだった!先輩にどやされるから早く行かないと!」

春人が慌てて荷物を持って教室を出ていく。

「じゃあ俺も放送部行かなきゃいけないから」

そういって石井くんも教室を出ていった。

...俺も帰るか。

今年ももうすぐ終わりか。

あっという間だったな。

学校でもあおいと一緒に過ごした日々を思い出しながら帰った。


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