第41話 成功例は、危険だ
正式採用は、あっさり決まった。
都市連合議会。
議決は、過半数。
『緊急時優先順位判断基準を、暫定運用とする』
名前は出ない。
だが内容は、あのままだ。
ロウが、壇上で語っている。
「我々は感情ではなく、理性で選択する」
「全体を守るための基準が、ついに整った」
拍手が起きる。
俺は、傍聴席の端にいた。
(早いな……)
制度は、答えを欲しがる。
そして一度答えが出れば、それに縋る。
ミレイが、隣で小さく言った。
「止めますか」
「いいえ」
「反対は?」
「しません」
本音だ。
止められない。
止める理由も、ない。
数日後。
基準が適用された最初の案件が、成功した。
小規模な供給不安定。
即座に優先順位を整理。
被害なし。
議会は沸いた。
「見ろ」
「やはり正しかった」
成功例は、強い。
ロウが、再び語る。
「我々は前に進んでいる」
「恐れず、選択した結果だ」
その言葉は、正しい。
だが俺は、椅子にもたれて目を閉じた。
(成功は、危険だ)
失敗よりも。
成功は、基準を固定する。
疑問を消す。
再検証を止める。
ミレイが、静かに聞く。
「不安ですか」
「ええ」
「どこが?」
「次も、同じ状況とは限らない」
彼女は、視線を前に戻す。
「制度は、単純化します」
「人も」
「はい」
夜。
都市の灯りは、安定している。
基準は、機能している。
だからこそ、
誰も疑わない。
俺は、小さく呟いた。
「成功例は、危険だ」
聞こえたのは、ミレイだけだった。
──第41話・完
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