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十色の追想  作者: 詩庵
出会い編。
48/70

氷神。

ー怜燈視点ー

「その子を渡してもらおう。」

その神は突然そう言い放った。


氷のような冷たい瞳。

雪のように真っ白なその姿。

それは氷神 グラシエだった。

「なぜでしょう、この子は貴方様とはなんの関係もないはずです。なのになぜ。」

「関係ない?

この状況でよくもそんな事が言える。

見てわかるだろ?月の王よ。その子は私の眷属だ。」


「……眷属。ならばなぜこんな状態になるまで放置していたのですか?

なぜ、この子の家族を助けなかったのですか?

もっと早く動いていれば、この子はこんなに傷つくことはなかったでしょうに。」

「……何を言う。月の王よ。ずっと守ってやっていただろう?

ずっと吹雪で守り続けてやっていた。お前は何を言っているんだ?」


「……貴方たち神は、相変わらず人の心がないんですね。

守る?そんな馬鹿な事は、休み休み言ってください。

本当に守られていたなら、この子はこんなに苦しむことはなかった。

吹雪お兄ちゃん達だって、あんな目には合わなかった。」

「馬鹿だと、この私に向かってよくもそんな口が聞けるな。

たかが仮初の神の分際で私達と同格にでもなったつもりか?」

そう言ったグラシエからは、ものすごい冷気と殺気が放たれた。

不味い。

蓮華ちゃんを庇うように背を向け襲い来る冷気に備えた。

しかしその衝撃はいつまでたっても来なかった。

その代わりスパーン!と何かを叩く音と怒鳴り声が聞こえてきた。


「この馬鹿息子!!おまえは何をしてるんだ!

私はこんな気ぐらいの高い馬鹿を創った覚えはないよ!!!」

「?!……お母様?!何故ここに?!!」

「……そりゃうちのバカ息子が、馬鹿な事をしてたらシバキにも来るよ。」


「いえ、そうではなくお母様は永らくこちらの世界にはいらっしゃらなかったので……」

「私もね、おまえがこんなことしてなかったら出てこなかったよ。」

「すまなかったね。月の王よ。」

そう言ったアウラ様はいつもの豪快な喋り方ではなく母親のような喋り方をしていた。


「それに怜燈は紛うことなき神だ。我々神に優劣などない。

おまえはそんな事も忘れたのか?」

「何を言っているのですか?

そいつはただの、仮初の神格を持っているに過ぎません!断じて神などでは……」

そう言いかけたグラシエの頭を、

またもやアウラ様がスパーン!と引っぱたいた。


「おまえはどうしてしばらく見ないうちに、そんな差別をする子になったんだ、

昔はもっと優しい子だったのに……」

「お母様!何を言っているのですか?!私はただ自分の眷属を守ろうとしているだけです!」

「?!なに、を……」

「何言ってるんだい!この子の顔を見てみな?

こんなにも弱って傷ついて、こんなのは今できたものじゃない。

長い時間をかけてできたものだ。なのに守る?

何を守るというんだ?

私もおまえのことを言えた口じゃないけどね、

守るというなら、もっとちゃんと守りなさい!」


「……申し訳、あり……ません、でした。」

「それを言うのは私に対してかい?」

「いえ、月の王よ。すまなかった。」

スパーン!

「誠意が足りん!やり直し!!」

「すいません!いや……申し訳ありませんでした!」


「……いえ、わかってくださるのなら別に気にしません。

ですが、貴方が謝るべきは私ではないかと……」

「……?他に誰が……」

「この子にです。」

「なぜ?」

ギロッ、ビクッ


「わかっております。謝ります!!」

「……何がわかったんだい?」

「えーそれはその、あのー、えー」

「全く、おまえは何も変わらないね、グラシエ。

この子はおまえの眷属のはずだ。守るべきはおまえだ。

それは存在を知らなかったとしてもだ。

他の神に頼る。ましてや迷惑をかけるなんてあってはならない。」


ハッ

「申し訳ありませんでした。私の思慮が足りませんでした。」

「わかればいい。ほら、さっさとこうなった状況を話な。

それと月の王よ。来るときにお前の家族を連れて来たが数が足りぬ。どうしたのだ?」


「え……それは、どう、言う……」

「怜燈さん!申し訳ありません、響さんと凪が……」

「……嘘だろ。」

たった数時間離れただけなのに。

信じられなかった。


「本当です。俺が、ついていながら、

こんな事になる、なん、て……申し訳ありませんでした……」

そう途切れ途切れに言った時雨の声は震えていた。


「……大丈夫。時雨のせいじゃない。」

ようやく返すことのできたその言葉は、冷たい風に飲み込まれていった。


「グラシエ、こんな状態で話すのも気まずいかもしれないが、早く話せ。」

「はい。」

そう言ってグラシエは話し始めた。

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