表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
中二病の地球防衛論~最強チートは雑草だった~  作者: とまCo
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

20 妹が生まれた日

 妹が生まれた日のことを、誠は今でも鮮明に覚えている。


 春の光がやわらかくて、

 風が少しだけ冷たい、そんな朝だった。


 誠は保育園にいた。


 いつも通りの時間。

 いつも通りの遊び。

 でも、その日は少しだけ空気が違った。


 先生が誠の名前を呼んだ。


「誠くん、お父さんが迎えに来てるよ」


「……え?」


 父が迎えに来るなんて珍しかった。

 いつもは母だ。


 玄関に行くと、父が少し息を切らしていた。


「マコ、行くぞ」


「どこに?」


「病院だ。母さん、急に入院した」


 誠の胸がきゅっと縮んだ。


「……母さん、だいじょうぶ?」


「大丈夫大丈夫。ちょっと早く生まれそうなんだよ〜」


 父はそう言って笑ったけれど、

 その笑顔の奥に、少しだけ緊張が混じっていた。


 * * *


 母は社畜という種類らしい。


 出産予定日まであと1か月でも、

 普通に仕事に行っていた。


「ギリギリまで働くわよ。だって引き継ぎが終わらないもの」


 そう言って、毎朝バタバタと家を出ていった。


 その日も、母は仕事の合間に定期健診へ行っただけだった。


 でも――

 産婦人科で、急に言われたらしい。


「へその緒が首に絡まってます。今日、入院です」


 そしてその日のうちに、帝王切開が決まった。


 父は会社を飛び出し、

 誠を迎えに来て、

 そのまま病院へ向かった。


 人生で初めて乗るタクシーに少し興奮しながら、

 誠は窓の外をじっと見つめていた。


 春の光がまぶしくて、

 胸の奥がざわざわした。


(……母さん……だいじょうぶ……?)


 父は誠の頭を軽く撫でた。


「大丈夫だよ〜。母さん強いからな」


 その言葉に、誠は少しだけ息がしやすくなった。


 * * *


 病院に着くと、母はすでに手術室に入っていた。


 誠は祖父母と一緒に待合室で待った。


 時計の針の音がやけに大きく聞こえた。


「誠、お兄ちゃんになるんだぞ」

 祖父が静かに言った。


「……お兄ちゃん……」


 その響きが、誠の胸の奥にじんわり広がった。


 * * *


 しばらくして、父が戻ってきた。


 顔は疲れていたけれど、笑っていた。


「マコ、妹が生まれたぞ〜!」


「……ほんとに?」


「ほんとほんと。小さいけど、元気だぞ」


 誠は胸が跳ねるほど嬉しくなった。


 手術室の前の廊下で、父がそっと誠を抱き上げた。


「母さんも頑張ったぞ。妹も頑張った」


 誠は父の胸に顔をうずめた。


(……頑張ったんだ……)


 まだ会ってもいないのに、

 誠は妹のことが愛おしく思えた。


 * * *


 初めて妹を見たとき、

 誠は息をのんだ。


 父の両手にすっぽり収まるほど小さかった。


 生まれるはずだった最後の1か月を、

 お腹の外で生きることになった身体。


 細くて、

 柔らかくて、

 泣き声はかすれていて。


 でも、その小さな手が誠の指をぎゅっと握った瞬間――


(……こんなに小さいのに……よわいけど力強い……)

(……守らなきゃ……)


 胸の奥に、はっきりとした感情が生まれた。


 誰に言われたわけでもない。

 誰に教わったわけでもない。


 ただ、自然に湧き上がった。


(……ぼくはお兄ちゃん……この子を守りたい……)


 それが誠が“兄”になった瞬間だった。


 * * *


 妹は4月生まれ。


 予定より1か月早く生まれたのに、

 今では標準体型で元気いっぱい。


 学年では一番のお姉さんになる。


 その成長を見るたびに、

 誠は胸の奥が温かくなる。


(……強いな……)


 妹の強さは、誠の希望だった。


 誠の“守りたい気持ち”の原点は、

 あの日、妹の小さな手が誠の指を握った瞬間に生まれた。


 その感触は、今でも胸の奥に残っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ