第12話 使用人テスト2
俺が次に連れてこられたのは厨房だった。現在はお嬢様が学校に行っていて仕事がない料理人たちが休憩中だった。
しかし、少し休んだら、また仕事があるのだという。なんでも、学校に出来たての料理をお持ちしないといけないのだとか。
うちはそんなことは一回もなかったけどなっ! いつも自分で作った弁当を持って行っていたよ畜生!
でも厨房で使用人のテストか……状況から考えるに、このテストは――
「風魔様には夕飯のメニューを考えていただきたい。そして実際に試作し、その味を我々で評価します」
やっぱりそう来たか……。
でも、夕飯のメニューねぇ……俺はこういうお嬢様が食べるような料理は作れないんだけど、どうしようか。
自分で作るにしても、いつも卵焼きとかチャーハンなどの庶民料理になってしまう。硬派な料理なんて作ったことがないぞ……。
どうする風魔春人。このままじゃ、料理は不合格だ。
「ちなみにこの料理のテストを合格すれば、料理人の資格を獲得できます」
料理人ねぇ……確かにこれは使用人に向いているか、はっきりと区別できるテストだと言えるだろう。
俺もここはクリアしていきたいところだが、どんなメニューがいいのか全く予想がつかない。この屋敷で出すものだ、多分庶民の料理じゃ不合格を貰うことは確実。
今日は見たけど、いつもどんな料理を食べているんだろう。
とりあえず唐揚げを美味しそうに食べていた。しかし、唐揚げは今朝食べたので夕飯に出すのはナンセンスだろう。
そう言えば、夜は少食だって言っていたな。少食の時って、あんまりしょっぱい物を食べたくないんだよな。
となれば、一品目はふんわりたまごのコンソメスープで決まりだ。あっさりと仕上げれば、濃いものを食べたくない時でも食べやすいのは間違いない。
とりあえず、考えついたものを試作してみる。
ます、ベーコンとキャベツを加えて普通のコンソメスープを作っていく。そこに、溶き卵を穴あきお玉を使って糸状にスープの上に降らせる。
そして仕上げにちぎったバジルを添えて完成だ。
「一品目、出来上がりました」
「ふむ」
ふんわりたまごのコンソメスープを提出すると、焦燥さんは香りを嗅ぎ始めた。
「では一口」
そしてついに、俺の作ったコンソメスープを口にした。その反応は――
「ふむ。これは大変美味しいですね」
その言葉を聞いて内心でガッツポーズをした。とりあえず、一品目はこれで問題は無いだろう。しかし、問題はこの後だ。
これ以外に硬派な料理なんて知らない。なら、自分の知識をぶつけるしかない。
とりあえず、スープはこれでOKとして、これに合わせてメニューを考えていくのが一番いいよな。
ということで最終的には、サラダとしてシーフードサラダ、メインにおろしハンバーグにすることにした。これが今考えられる俺の全力だ。
まずはサラダから作っていくことにする。
これは安易な発想だが、冷蔵庫にあったからシーフードを入れてみることにしたって感じのやつだ。シーフードサラダなら何度も作ったことがあるが、ここのシーフードたちはものすごい立派なものばかりだ。なので少し勝手が違う。
でも、一応料理に関しては自信がある。父さんの知り合いの料理人の方に厳しく教えられた記憶がある。なので、料理に関しては大体のものならば出来るだろう。例えばシーフードサラダに入れるエビやイカの下処理なんかは出来ているはずだ。
「ものすごい手際だな」
あんまり海鮮ものって調理したことないんですけどね。俺はバイトしたこともないし、親が料理人って訳でもなかったから、厳しく教えて貰ったと言っても、その程度のもののはずなんだが。
そんなこんなでサラダは出来上がりだ。
とりあえず、これを提出して、次にハンバーグを作る準備に取り掛かる。
まずは大根おろしを作り始める。大根おろしは暫く作っていないので、大根をおろす感覚がだいぶ無くなっていて、おろし金でおろしているだけで腕がパンパンになってくる。
そんなこんなでおろし終わった大根の水分を絞ったら大根おろしの完成。
そこでやっとハンバーグ作りに取り掛かる。ハンバーグに関しては、教えてくれた料理人が洋食屋の方だったらしく、こういう物は特に厳しく教えられた物だ。
なのでハンバーグに関しては絶対の自信がある。
それでも最近は手ごねでハンバーグを作っていなかったので、少しのブランクはあるが、そんなに変わるものでは無いだろう。
ハンバーグの種が出来上がったらついに焼き始める。この焼き加減で師匠に丸を貰えるまで長かった。
焼きながらハンバーグに串を刺して焼き加減を確認する。ここで透明な肉汁が出てきたら焼けているって証拠だが――うん、バッチリだ。
焼きあがったら皿に移して先程おろした大根おろしを上に乗せたら完成だ。後は少し野菜を周りに添えたら色味も完璧。
「……君、一体何者?」
いつの間にかそこにいた加川さんが信じられないものを見る目で俺の事を見てきていた。
「こんなに手際がいいなんて、料理人の最前線で働けるじゃねぇか」
「いえ、僕はまだまだですよ。師匠には届きませんでした。そして、出来ました。おろしハンバーグです」
普段はただのハンバーグにソースをかけて食べるだけなんだけど、少し気取っておろしハンバーグを作ってみたが、味はどうだろう。
「完璧だ。美味いぞ!」
「はい、とても美味です。今日の夕飯はこれで行きましょう」
ともかく、どうやら問題は無いようだ。これにて第二試験は終了だな。
「お次が最後のテストですのでお気を引き締めて参りましょう」




