第13話 使用人テスト3
次がラスト。と言うのでどんなテストかと思ったら、今度は体育館のような場所に連れて来られてしまった。
ここって基本的に運動をする場所だよね? なに、これからたくさんの怖い人たちが出てきて俺を囲ってリンチでもしたりするの? 本当は俺みたいな男をお嬢様に近づけるつもりはなかったから、最終的に潰すおつもりだったんですか!?
すると、体育館準備室からなにやら屈強な男たちが出てきて俺を取り囲んだ。やっぱり俺はここでリンチにされるみたいだ。古沢に助けられたこの人生、意外と呆気ないものだったな。
「よぉ、坊主。俺たちはお嬢様のボディーガードをしているぜ。と言っても、さすがに学校内には入って行けないのが難点だがな」
確かにあの学校は在校生でないと立ち入る事が出来ないんだったっけ? 確かそんな校則があったような気がする。例えボディーガードだったとしてもだ。
「で、焦燥さん。今度はこいつが相手ですかい?」
「ええ、この方はお嬢様のご友人でいらっしゃる風魔春人様でございます。この方はお嬢様に助けられたご恩を返したいと使用人に志願してくださいました」
「へぇ、この坊主がねぇ」
とても威圧的っ!
そのスキンヘッドと、強面の顔面で街中を歩くだけでも不審者感しかない。
多分、古沢はボディーガードを付き添いに連れてきていい学校だったとしても、あなたは連れていこうとはしないと思いますけどね。
「ん? ってことは次はボディーガードのテストですか?」
「そうでございます。では早速、テストの概要を説明していきます。この男とタイマンしてください。以上です」
……この男?
指さされた方向をゆっくりと見てみる。すると、そこに居たのは先程のスキンヘッドの強面ボディーガードだった。
もしかしてこれは公開処刑ってやつですか?
「権蔵さん。手加減は要りません。全力で叩いちゃって下さい」
あ、これは確実に公開処刑する気だ。俺がお嬢様に歩み寄ろうとしたこと、焦燥さんは絶対に怒っているよね!? 怒っているから公開処刑なんてしようとするんだよね!!
「よしきた坊主。お前も全力で来いよ。俺に一撃でも与えられたら坊主の勝ちだ。まぁ、出来るならノックアウトしてくれても構わない。そのひょろヒョロの体で出来るならな」
イラッ
今の台詞は全ひょろひょろを敵に回したと言っても過言ではない。こうなったら何がなんでも一矢報いてやる。
「それでは、初め!」
その合図とともに俺は臨戦態勢を摂るが、相手の権蔵とか呼ばれていたボディーガードはかなり油断しているようで、掛かってこいよとでも言いたげに人差し指を伸ばしたり曲げたりしている。
その程度の挑発に乗る俺じゃないが、それでもこの見くびられっぷりは腹が立つものだ。なので、あえてその挑発には乗ってやることにした。
権蔵さんに向かって俺は走り出す。それに合わせて権蔵さんは臨戦態勢を摂った。
もう少し敵として見て欲しかったんだが、そこまでナメられちゃ仕方がない。一発かまして本気にさせてやる。
「本気で構わないんですよね」
「はい。風魔様を本当にお嬢様に付きまとうストーカーだと思ってやりなさい」
やっぱり焦燥さんは俺に恨みを抱えているよね!? 絶対、今のは殺害命令だ。やべぇ、古沢に恩返しがしたいとか言って先走ったかもしれない。
「それじゃ、俺の拳を受け止められるかな?」
その台詞とともに放たれる権蔵さんの本気のパンチ――ではなく、超スローモーションの拳だった。
もしかして、本気とか言いながら、この人はまだ俺をナメているな。なら本気にさせてやる!
そう決意した俺はその超スローモーションの拳を片手で受け止めた。
すると、やはり甘く見ていた子供に受け止められたのが驚きだったらしく、余裕の表情が一瞬で崩れる権蔵さん。
このまま俺は驚いている権蔵さんの手を引く、その勢いに任せて権蔵さんに拳を叩きつけた。
その瞬間だった――さっきまで余裕そうな表情で戦っていた権蔵さんが泡を吹いて倒れてしまったのだ。その事にはこの場に居る誰もが呆然としてしまった。もちろんこの俺も驚いている。なにせ、この程度のパンチで倒れるなんて――
「……この人、弱くね?」
その俺の言葉で更に場が凍ってしまうのは言うまでもない。




