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15

「今日はどこかに出かけるの?」


朝の時間。

朝ごはんを食べている最中。

私が出かけることを言う前にお母さんは言った。

今日はたまこと出かける予定。

行く予定のところは猫カフェ。

とっても楽しみな場所だ。

でもどうしてお母さんはどこかに出かけることが分かったんだろう。

まだお母さんには出かけることも言ってないのに。


「そうだけど、なんで分かったの?」


私が尋ねるとお母さんは勝ち誇ったような表情をする。

なんだかちょっと悔しい気分……。


「昨日からいっちゃんって何だかそわそわしてたからね」


「そうかな?」


自分ではそうしてるつもりなんて全然なかった。


「いっちゃんって分かりやすいから」


そう言ってお母さんは嬉しそうに微笑む。

なんだか私が単純って言われてるようで、やっぱり悔しい気分……。


「それに……」


言いながらお母さんは時計を見る。


「休日にこんなに早く起きるなんて用事がない限りありえないからね」


「それは……」


私も視線を動かして時計を見る。

……今は9時ちょっと前。

待ち合わせ時間は10時だからまだ余裕がある時間。


「そうだね」


何もなければ寝ている可能性が高い時間。

でも起きてるってことは何か用事がある。

そうお母さんは推理したんだろうって分かった。


「どう? 合ってるでしょ?」


「お母さん、探偵になれるんじゃない?」


「いっちゃん相手だから分かるのよ」


「そうなんだね……」


今度からは用事がなくても早起きしようって思った。

思うだけで終わる可能性が高いけど。


「今日もカナちゃんとお出かけ?」


お母さんは言う。

今までお出かけといえばずっとカナとだった。

だから今日もそうだろうって思ってる。


「うんうん。違う人」


だから私は少し自慢気に言った。

……自慢気に言うことでもないって思うけど。


「あらそうなのっ!」


でもお母さんはとても驚いた様子。

その反応もなんだか複雑な感じがする。


「いっちゃんってカナちゃん以外に友達いたのね」


「そりゃいるよっ!」


……もちろん、たくさんはいないけど。


「それを聞いてなんだか安心したわっ!」


「安心させることができてよかった」


「いっちゃんって性格はお父さんに似てるからね」


「そうなの?」


「そう。少なくとも社交的ではないでしょ?」


「それはそうだね」


お母さんはすごく社交的。

きっと高校生の時とかもたくさん友達がいたんだろうって思う。


「それでいっちゃんって学校でもてたりするの?」


「はぁ?」


思わず変な声が出てしまった。

お母さんが変なことを聞いてくるから。


「自慢じゃなけど私ってそこそこモテテたのよ」


ってお母さんは自慢気に言う。


「だからいっちゃんはどうかなって思ったの」


「私の通ってる高校は女子校だからね」


「関係あるかしら?」


不思議そうな表情を浮かべるお母さん。


「あんまりそういうのは気にしないでいいと思うんだけどな」


「関係あるしっ! 気にならないわけないじゃんっ!」


思わず大きな声を出してしまった。

きっとお母さんはこうやって私をからかうのが好きなんだろうって思う。

本当に酷い親だ……。


「今日会う人はどんな人かしら?」


ウキウキな感じのままお母さんは言う。


「可愛い? 綺麗? 格好いい?」


「そんな話して楽しいの?」


「楽しいに決まってるじゃないっ!」


なぜかお母さんは堂々と言う。


「なんだか私も若返った気分になるわ」


「私はなんだか気苦労で老けそうなんだけど……」


「それは大変ね。いっちゃんって色々気にするタイプだから気をつけないと」


「お母さんのせいでもあるんだけど……」


「それでどんな感じの人なの?」


私の言葉を無視してお母さんは言う。

しょうがないなって思って私は言った。


「可愛いって感じだよ。小さくて子犬みたいな感じ?」


犬種で例えるとチワワかなって思った。

でもあんなには吠えないから違うかな……。

でも小さい犬ってよく吠えるからどっちかというとアイコっぽいな。

って思ってたけど、訂正はしなかった。


「子犬っぽい子なのねっ!」


お母さんはそれで納得してるみたいだし。


「今日はちゃんとリードしてあげなさいよっ!」


「そういう雰囲気でもないって思うけどね」


私は言いながら立ち上がった。

自分の部屋で準備とかしようって思った。


「今日はお昼ごはんいらないから」


「分かったわ。今日はお父さんもいるし出前でも頼もうかしら」


前は1人だから出前を頼もうって言ってた。

それで今日はお父さんがいるから出前を頼むって言ってる……。


「もしかして私がいないときに出前頼んでない?」


「気のせいじゃないかしら?」


「気のせいじゃないっ!」


これは大きな声を出していいって思う。


「いっちゃんにはできるだけ母親の手料理を食べて欲しい的な?」


お母さんはなんだかもっともらしいことを言う。

でも私は騙されない。


「来週は私がいる時に出前を頼むからっ!」


「出前頼むぐらいなら3人で外食でもしましょうか」


「そっちでもいいかな」


っていうかそっちの方が嬉しい。


「お父さんに言っておくわ。今日はうどんでも作ろかしら」


どうやら出前を頼むのはなしになったみたい。

最初から自分で作るつもりだったかもだけど。

私はなんとなく時計を見た。

時間はまだ余裕ある。

でもいつも通り時間前に着くように行こうって思った。


……

…………

………………


私は歩いていた。

待ち合わせ場所に向かって。

待ち合わせ場所は駅の近くの公園。

いつもの場所って感じのところだ。

私とたまこの家はちょっと離れていたから、そこが場所的にちょうどよかった。

そこから駅に向かってバスに乗って20分ぐらいのとこにあるみたい。

このペースなら15分前に着くぐらいだ。

ちょっと待ったなきゃいけないかもだけど、でも全然平気。

待つのは好きだから。

猫カフェ……。

私は歩きながら考える。

たくさんの可愛い猫がいるんだろうな。

色々な猫にさわったり撫でたり抱っこしたりできるんだろうな。

なんだかとっても楽しみになってきた。

天体観測に行く日とはまた違ったわくわく感があった。

猫を飼いたいって思ったことはもちろんあった。

でも引っ越しが多いから無理だろうなって思ってた。

引越し先がペット不可って可能性もあるんだし。

お父さんやお母さんにも言ったことがない。

今から飼いたいっていうのもなんだか難しそう。

だから行ける距離に猫カフェがあるのは嬉しいって思った。

とことこと歩いているうちに目的地の公園が見えてきた。

するとそこに見慣れた人がいるみたいだった。

よく見るとそれはたまこだった。

私より先に到着してるみたい。

私が遅れちゃったのかな?

時計を見るけど、15分前。

どうやらたまこも私と同じで時間前に来る人みたいだ。

待たせちゃったかな。

遅刻をしたわけじゃないけど、なんだか気になってしまった。

私は早足でたまこのところに向かった。


「お待たせっ! ごめんっ! 待った?」


最後の方は走り気味だったからちょっと疲れた。

カナっていつもこんな感じだったんだなって思った。


「全然待ってないですよっ!」


たまこは嬉しそうに言う。

不機嫌そうな感じとか全然なかった。


「ちゃんと時間前に来てるから謝る必要なんてないです」


「ちなみに何分前に来てたの?」


私は聞いた。

たまこは時計を見て言った。


「えっとえっと……ついさっきです」


なんだかちょっと挙動不審な感じ。

嘘をついてるような様子だった。


「本当は?」


「1時間前ぐらいに来てました……」


「早すぎるよっ!」


1時間前って言ったら私がのんびりとご飯を食べてた時間だ。


「遅れちゃいけないって思ってっ!」


「それにしても早すぎると思うんだけど……」


「ごめんなさい……」


たまこはしゅんとした感じになる。


「こういう待ち合わせってあんまりしたことないから……」


「いやっ! 落ち込まなくていいよっ! 遅れるより全然いいからねっ!」


私は慌てて言った。

変な風に言ってしゅんってさせたことをちょっと後悔。


「むしろそんなに楽しみにしててくれて嬉しいかなっ!」


「そうですねっ! 楽しみで全然眠れなかったですっ!」


「私もそんな感じ。早く猫をさわりたいよね」


「さわりたいですっ!」


元気よく返事をするたまこ。

その姿はとっても可愛くてやっぱり同じ年には見えなかった。


「それじゃ行こっか。バスはたくさん走ってるしね」


この街はバスが多いことで有名。

今日もバスで移動予定だ。


「はいっ!」


やっぱり嬉しそうに、楽しそうに返事をする。

初めて会った時とか自己紹介の時のおどおどは全然ない。

そのことがなんだか凄く嬉しく思えた。


……

…………

………………


「猫がたくさんっ!」


「本当ですねっ!」


バスを降りて歩いて10分しないところに喫茶店はあった。

日曜日だけれどそんなにお客さんはいないみたいだった。

猫に人間の食べ物をあげない。

猫を驚かせない。

猫を無理にだっこしない。

…………

みたいな感じの説明を受けた。

私とたまこは真剣にその話を聞いて中に案内された。

中には猫がたくさんいてそれぞれ好きに遊んでいた。

なんだか凄くどきどした……。

ちゃんと来てくれるかなって。

でも猫は人に慣れてるみたいですぐに私とたまこのところに来た。

そして甘えるように頭とかをこすりつけてくる。

それだけでなんかもう……すっごく可愛いって思った!

おそるおそる抱っこすると嫌がらずに、むしろ嬉しそうにしてくれる。


「ふわふわしてる……」


初めてこんな風に猫を抱っこした。

なんだか安心するような、ドキドキするような凄く嬉しい感じ。

なんだか感動がある気がした。


「すっごく可愛いねっ!」


何かおねだりされたらなんでもしてあげたいぐらい可愛いっ!

猫はぺろぺろって私の頬を舐める。

舌がざらざらってしてるけど、気にならなかった。

むしろそれがなんだかいいって思えたぐらいっ!


「本当に癒やされますねっ!」


たまこの足の上には茶色の猫がいた。

たまこは優しそうに猫をなでている。

猫も満足そうに目を細めてうっとりとしていた。


「いっくんはどの猫が好きですか?」


たまこが言う。


「うーん。とっても難しいね……」


お店の中にはたくさんの猫がいる。

でもどの猫もとっても可愛い……。


「難しいけど……この子かなっ!」


私は今抱っこしてる猫を選んだ。

最初に抱っこしたからかもしれない。

何だかもうこのまま連れて帰りたいぐらいに可愛いって思った!

もちろんそんなことはしないけど。

この子もここにいるのが一番幸せだろうしっ!


「たまこのこの子が一番可愛いって思えますねっ!」


たまこが選んだのは自分が撫でている猫。


「なんだか撫でてるだけで幸せな気分になれます……」


「本当に凄いよね……」


猫は可愛い。

それは十分すぎるぐらい分かってた。

でもこんなに幸せな気分になれるとは知らなかった。

猫って凄いっ!

教室で飼ったらいじめとかなくなるじゃないのかなって思った。


「そういえばこの子の名前ってなんて言うんだろうね」


「とっても気になりますねっ! でも……」


たまこの声のトーンが凄く小さくなる。


「店員さんに話しかけるのってなんだか苦手で……」


そういえば最初に会った時も話しかけれなくて困ってたな。

きっとたまこはとっても人見知りをするんだろうって思う。

仲良くなれば平気だけど、そこまでが難しい感じ。


「私が聞いくね」


でもそこら辺は私がカバーすればいいって思う。

人は得意不得意とかあるんだし。

だいたいの人は不得意の方が多いんだしね。


「すみませんっ!」


私が呼ぶと店員さんはすぐに来てくれた。


「この子とこの子の名前はなんて言うんですか?」


「こちらがみーでこちらがまーです」


私が抱っこしてる方がみーちゃん。

たまこが抱っこしてる方がまーちゃん。

っていうみたい。


「たくさん可愛がってあげてくださいねっ!」


店員さんは言って持ち場に戻っていく。

どうやら基本的に遊んでるのを見守るって感じみたい。

危ないことをしてる時とかに注意するんだろうって思う。


「みーちゃんっ! とっても可愛いねっ!」


私が言うとみゃーみゃーって可愛く言ってくれた。

なんだか返事をしてくれたみたいで嬉しい。


「まーちゃんとっても喉をごろごろってしてますっ!」


「たまこがとっても居心地いいんだろうね」


「そうだと嬉しいですっ!」


そうこうしてる間に時間がきた。

ここの料金は時間制。

ワンドリンクセットで1時間1000円。

2000円で3時間のコースもあってそっちの方がお得。

でもお小遣いを考えたら1000円じゃないと厳しかった。

ドリンクと飲み物は別室で食べる。

猫の安全のためだろう。

猫がコーヒーとか飲んだりしたら危なそうだし。

窓から猫が遊んでるところを見ることはできるみたい。


「ばいばい。まーちゃん。また来るからねっ!」


「たまこも絶対に来ますからっ!」


なんだか別れるのがすごくつらい……。

絶対にまた来ようって思った。

そして私とたまこは飲み物と食べ物を頼んでお昼ごはんにすることにした。

私はオレンジジュースとペペロンチーノ。

たまこはコーヒーとフレンチトースト。

オレンジジュースもペペロンチーノもすごく美味しかった。

たまこも美味しそうにコーヒーを飲んでフレンチトーストを食べてる。

砂糖とかを入れてたとはいえ、たまこがコーヒーを飲めるのがちょっとショックだった……。

でも猫が遊んでいるのを食べながらのご飯はとっても美味しかった!

たくさん猫がいる。

でも私もたまこもまーちゃんとみーちゃんをすぐに見つけることができた。

また来た時に私達のことを覚えてくれてたら嬉しいな。

そう思いながらオレンジジュースを飲んだ。

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