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球技大会から2週間が過ぎた。
私はやっぱり去年と似たような学校生活を送っている。
でももちろんちがうこともある。
昼休みや放課後はいつもカナといる。
でも1年生の時みたいに朝から晩まで一緒って訳じゃない。
別のクラスになってからは会わない時間もそこそこある。
授業中はもちろんだけど、休み時間とかもそう。
合計するとそこそこの時間になるかもしれない。
そんな時は私は本を読んだり、クラスの人とおしゃべりしたりして過ごしている。
話す人はその日、その場面によって違う。
今はたまことお喋りをしている。
3時間目の授業後の休み時間。
次は数学だからなんだか気だるげな感じ。
でもその次はお昼休みだから気合を入れて頑張ろうって思う。
2週間後には中間テスト。
直接的に補修に関わるってわけじゃない。
うちの学校では期末テストの結果で決まるから。
でもその期末テストの前哨戦みたいな感じなので、適当じゃだめだってカナは言ってた。
カナに数学を教えてもらうようになってからだいぶできるようになった。
でも、それでも赤点を回避するのがぎりぎりって感じ。
カナがいなかったら確実に補修を受けてたって思う。
「もうすぐテストだね」
私はたまこに言った。
ちょっと沈んだ声だなって自分でも分かった。
テストは2週間後
もうちょっとあるなって油断してるとすぐにやってきてしまう。
「そうですね……」
ってたまこも言う。
たまこも似たような声だった。
たまこの学力は私とあんまり変わらないぐらい。
つまり平均よりは下ってところ。
ドベじゃない。補修はぎりぎり受けたことがない。
っていうのが心の支えになっているグループ。
カナはもちろん頭がいい。
ナツミも見た目とかと似合わずにそこそこできる。
だから同じぐらいの学力のたまこと話をするのは安心する。
そういえばアイコってどれぐらい勉強できるんだろう……。
今度会ったら聞いてみようって思った。
勝手な想像だけどあんまり良くはなさそう。
漫画を書くのに凄く時間をかけてそうだし……。
「テストってドキドキしますしね」
「ドキドキする?」
「はい。なんだか緊張しちゃうなって……」
「私は緊張はしないかな」
「そうなんですねっ!」
たまこはなんだか嬉しそうに微笑む。
たまこの笑顔を見ると先日のことを思い出してしまう。
涙を流して泣いていたたまこが頭に浮かぶ。
たまこはそんなことなかったかのように、元気に暮らしている。
私が見てたことも知らないみたい。
だから私からも何も言うことができなかった。
「テストが配られて表にするまでとかとっても緊張しますっ!」
「それはちょっと分かるかも」
勉強したところが出ますようにって思うことはある。
暗記科目なんかは特にそうだ。
山勘で覚えた単語とかが出るとなんだか嬉しい。
おみくじにあたったみたいな気がする。
「1問目から分からないとがっかりするよね」
「そうですねっ! なんだか終わったって思っちゃいます」
「中間テストは自信ある?」
「……あんまりないです」
ちょっと暗めの表情。
本当に自信がないんだなって思った。
「いっくんはどうですか?」
「私は……やっぱり数学が問題かな……」
「数学難しいですもんね」
「でもたまこは数学そこそこできてると思うけどな」
授業で当てられた時もちゃんと答えている。
でも黒板に書くときとか、みんなの前で何か言うのはやっぱり苦手そう。
声や手が震えていることが多い。
でも正解を書いてるから凄いって思う。
私はそんなに緊張せずに書ける。
でも間違える。
「そんなことないですよ。平均ぐらいです」
「平均できれば十分だと思うけどな……」
「料理を作るようになって、ちょっと得意になったんです」
「料理?」
料理と数学の何が関係あるんだろうって思った。
私は少し考える。
そして1つ思いつくことがあった。
「お魚料理を作って食べて頭が良くなったみたいな?」
なんか昔そういう曲があったなって懐かしい気分。
本当に魚を食べたら頭良くなるんだなって思っていると……
「うんうん。そうじゃないです」
たまこはふるふると顔を振る。
思わず指をおいてぷにぷにしたくなった。
「えっと料理するときとか人数分とかで水の量を計算したりするんです」
「ちゃんと水の量を図ったりするんだね」
私は家庭科の調理実習でも目分量でやっちゃうけど。
さすがは料理部だなって思った。
すごく本格的な気がする。
「普通すると思うんですけど……」
「そうかな?」
「多分ですけど……。えっとそれで足し算とか掛け算とかに慣れてちょっとできるようになったんです」
「基本ができるようになったって感じなんだね」
「はいっ!」
確かに私も掛け算とか割り算を間違えることが多い。
あと計算に時間がかかったりとか。
私もそういう基礎をしっかりすれば平均ぐらいにはなれるのかなって思った。
カナはそこらへんは感覚でできちゃうタイプ。
2桁同士の掛け算なら考えなくても分かるらしい。
本人が言うには頭に数字が出てくる。
私が計算で悩んでいると、何でわからないんだろう?っていう不思議そうな表情をする。
だから私に数学を教えるのがちょっと大変そうなのかもしれないって思った。
「何かを頑張れば別の何かも身につくってことだね」
私も小説を書くようになってタイプするのが早くなった。
あとパソコンがちょっと得意になった。
調べ物とか。
学校のテストとかに関係なさそうなのが残念だけど。
「そうですね。あと料理作るようになって段取りもできるようになりましたっ!}
「料理って段取りが大事だもんね」
って私は料理を出来もしないくせに言った。
料理って本当に難しいって思う。
包丁怖いし。
間違ったら怪我するものを持つなんて絶対に怖い。
「最初の頃は目の前のことしかできなかったから1つの料理しか作れませんでした」
にこにこって嬉しそうな表情。
自信がついてきたんだなって思った。
「でも今は2つとかの料理を同時に作れるようになりましたっ!」
「それは本当に凄いって思う」
心から思った。
「私は料理本当に苦手だからね」
「いっくんはそういう人ですからっ!」
あれ?
って私は思った。
なんだかたまこからも駄目な人っぽい扱いになってきてる気がする。
「でもたまこは可愛いし料理も上手だしいいお嫁さんになるよね」
私が言うとたまこは顔を真赤にする。
「そんなっ! たまこはそんなに凄くないですよっ! 可愛くもないですし……」
「十分可愛いって。私はお嫁さんに欲しいぐらい」
家に帰ったらたまこがごはんを用意してくれている。
なんだかとってもいい感じだなった思った。
憧れの家庭生活。
問題はその場合は私が働かないといけないってところ。
「お嫁さんっ! それは気が早いっていうか……」
たまこはなんだかもじもじってしている。
「お嫁さんに憧れがあるの?」
「そうですね。好きな人に美味しい料理を作ってあげれたら素敵だなって思います」
「そうだね。とっても素敵だね」
たまこにご飯を作ってもらえる人はさぞ幸せだろうな。
羨ましいと思う。
「いい人見つかるといいね」
からかい半分で私は言った。
でも本当にいい人を見つけて欲しいとも思った。
「いい人は……もう……」
「もう?」
「何でもないですっ!」
たまこはぶるぶるって顔を振った。
さっきより随分と勢いがよかった。
「そろそろ授業だから……」
そして時計を見ながら言う。
「そうだね」
楽しいお喋りの時間は終わり。
そしてやってくるのは嫌な数学の時間……。
「それじゃ自分の席に戻るね」
私はそう言って自分の席に戻った。
カナは今の休み時間は誰とどうんな話をしてるんだろう。
何となく思った。
もしかしたらナツミと話をしてるのかもしれない。
でもアイコとはしてないだろうなっていうのは確信できた。
アイコは教室では恐ろしく静からしい。
そんなアイコも私には想像できなかった。
……
…………
………………
「たまこっ!」
昼休みが終わると同時に美香の声がした。
美香はたまこの方を見て言う。
「今日は一緒に食べるわよね?」
「……うん」
たまこは小さく返事をする。
誘われて嬉しいって感じはしない。
そのままパタパタと美香のグループのところまで走る。
私はそれを見て何だか嫌な気分になった。
球技大会の後もたまこはよくあのグループといる。
あんなに酷く責められたのに。
今もよくからかわれたり、仕事を押し付けられたりするのに。
なんでそんなに一緒にいるんだろうって思った。
私はいつもそう疑問に思っていた。
でも直接尋ねる勇気はなかった。
もっとも怒鳴られたり、お金を取られたりしてるわけじゃない。
いじめられてるってわけじゃない。
なのでたなこも楽しんでいるのかもしれない。
……分からないなって思う。
これは私が地球人じゃないから?
そんなことさえ考えてしまう。
考えてもしょうがないよね。
お昼休みはカナといられる時間。
ずっと一緒にいられなくなったからこそ、そんな時間を大事にしたいって思った。
だからこんなもやもやっとした感じで行って心配とかさせたくない。
「……よしっ」
って私は小さく言って心を入れ替える。
たまことはたまに仲良く話しをする友達。
そうただの友達。
だから深入りはしちゃいけないって思った。
……
…………
………………
「今日はクッキーを作ってきたんだっ!」
可愛い袋に素敵な飾り。
中には美味しそうなクッキーが入っている。
カナは告白記念日からよくお菓子を作って来るようになった。
すっかりお菓子づくりにはまってしまったみたい。
私もカナのお菓子が大好きで、虜になっている。
でも毎日だと太っちゃうので週に3日ぐらいでってお願いしてる。
「美味しそうだねっ!」
私は言った。
カナが作ってくれたんだから美味しいに決まってるって思った。
袋を開けると香ばしい匂いがした。
お弁当箱は食べ終えて直してある。
食べてすぐだけど、なんだかお腹が減ったような感覚。
甘い物は別腹ってよく言ったものだと思う。
お腹いっぱいでも目の前に美味しそうな甘いものがあると食べたくなっちゃう。
食べて後悔するまでがワンセットだけど……。
でも今日は食べる日だなっ!って思った。
カナのお菓子は別腹の別腹だから。
「食べてもいい?」
「いっちゃんのために作って来たんだからっ!」
カナは嬉しそうに言う。
私は1口食べてた。
柔らかくて、しっとりしててすごく美味しい。
それになんだか暖かくてできたてホヤホヤみたい……。
「すごく美味しいねっ!」
思わず大きな声で言った。
それぐらい美味しかった。
こんなに美味しいクッキーは初めてっ!
「これね。生地を家で作って家庭科の先生に焼いてもらったんだ」
ってカナもクッキーを食べながら言う。
カナも自分が作ったクッキーに満足してるみたい。
「本当にできたてなんだね……」
私はまじまじってクッキーを見る。
そしてもう1つ食べた。
やっぱり凄く美味しいっ!
食べてるだけで幸せな気分になってくる。
「基本的にお菓子とかケーキってお店のものが美味しいって思うんだ」
「プロが作ってるしね」
でも私にはカナの作ったお菓子やケーキが一番美味しいって思える。
「でもクッキーはその例外。できたでが絶対に一番美味しいって思う」
「こんなに美味しいもんね」
「うん。だからいっちゃんには一番美味しいクッキーを食べて欲しくて頼んだんだっ!」
「本当にありがとうっ!」
そこまでしてくれるなんてとっても嬉しいって思った。
「いっちゃんの喜んでる顔が見れるならお安い御用だよ」
カナもとっても嬉しそう。
やっぱりカナには心配かけられないなって思う。
それが私ができる精一杯の恩返しだって思うから。
「そういえばね」
ってカナは言う。
「今日の放課後は遅くなるかも」
なんだか申し訳無さそうな表情。
「委員会?」
「うん。選挙委員会って面倒くさいな……」
カナは不満そうに言う。
もうすぐ生徒会選挙がある。
その委員に選ばれてしまったらしい。
選挙委員は今の時期しか仕事がない。
でも今の時期は放課後残ることが多いみたい。
「誰かしなくちゃいけないことだからね」
カナが選挙委員になるって分かったら私も立候補したのになって思う。
「できるだけ急いでくるねっ!」
「うん。待ってるからね」
「そういえば委員長が生徒会長に立候補するんだって」
「そうなんだ」
ここで言う委員長は1年生の時に私達のクラスの委員長だった人。
文化祭でテキパキに指示とかしてて確かに凄いなって思った。
今はカナと同じクラスみたい。
なんだか知ってる人がカナのクラスに偏ってる気がした。
「委員長が生徒会長になったら予算とか融通きかせてくれるかもねっ!」
今から仲良くしなくちゃってカナは言う。
どこまで本気の言葉なのかは分からない……。
でも委員長には頑張って欲しいなって思う。
あんまり話したことはない。
私は影が薄い方だし、向こうはもう私のことを忘れてるかもしれない。
でも知ってる人が生徒会長ってなんだか楽しそうだなって思った。




