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07

今日は入学式。

でもほとんどの人は休みの日だった。

生徒会や合唱部や吹奏楽部の人の人達。

あと部活勧誘をしたい人達が行く感じ。

部活の勧誘とかは明日からみたい。

料理部も漫画研究部もバスケット部も頑張って欲しいなって思った。

特に漫画研究部に関しては切実に思う。

天文部は何もしないけど。

だから今日は緊張とかも全然しないで、ただのんびり過ごす1日になった。

起きるのがとても遅かったせいで、ちょっと頭が痛いぐらいに。

なんだか最近は眠りすぎると具合が悪くなるような気がする。

前よりぐっすり眠れるようになったせいもあるだろうって思った。

夢も最近はよく分からないものが増えてきている。

ふわふわってした感じの、現実離れしているようなの。

悪夢を見ないから眠るのも怖くなくなった。


「バスケ部はどんなことするの?」


夜。

ナツミと電話をしてた。


「普通に勧誘とかだねっ!」


「その普通がよく分からないんだけど……」


「ユニフォーム着てチラシ配ったりだね」


「そうなんだね」


なんだかナツミが元気よくチラシを配ってる姿が目に浮かぶ。

とっても目立ってそうだなって思った。

バスケに興味が無い私でももらってしまうかもしれない。


「私そういうの苦手だからやらないでよかったかもね」


「天文部も部員増やした方が楽しいと思うけどな」


「それはそうだけどね」


星に興味を持ってくれる人が増えるのは嬉しい。

でも……


「カナが部員とか増えるの嬉しくなさそうだから」


「あー。それもそうだねっ!」


私の説明でナツミは納得できたみたい。


「2人だけの部活っていう感じがするもんねっ!」


「そうだね。でも2人が楽でいいかもなっては思うときもある」


「人数が増えるとそれだけ大変なことも増えるからねっ!」


その言葉からナツミも苦労することもあるんだなって思った。

でもどんなに大変でもナツミは表に出すことはなさそう。


「私達はまったりしていければいいかな」


「そういうのがいつきっぽいしねっ!」


「そういうのって?」


「のんびりだらっとした感じっ!」


「……はぁ」


「なんでため息っ! 褒めてるのにっ!」


「いやいや。全然褒めてないでしょ」


むしろ貶し成分が80%ぐらいあった気がする。


「いつきってしっかりしてそうだけど、でもどこか抜けてるのがいいところだって思うっ!」


「それ全然褒めてないから」


私が言うと電話からちょっと慌てた声が聞こえた。

それがなんだかおかしくて思わず笑ってしまう。


「でも逆にナツミはお気楽そうでしっかりしてるよね」


私は思ったことを言った。

ナツミのことは1年生の時にけっこう見てた。

話すことはあんまりなかったけど。

教室でのナツミはよく話して、よく挨拶して、よく笑ってた。

その姿は本当に楽しそうに生きてるって感じがした。

この世界が大好きっていうように見えた。

実際のところどう思ってるかは分からない。

でも私はそんなナツミを見るのが好きだった。

だから違うクラスになったのは残念。

ちなみにナツミはカナと同じクラス。


「部活では教室より真面目な感じなの?」


「どうだろうねっ!」


ちょっと照れた感じの言葉だった。

ナツミは私が褒めるとすぐに照れる。

褒められ慣れしてないのかもしれない。

というより私の周りは感情を素直に出す人が多いって思った。

カナもナツミもたまこもそんな感じ。

アイコに至っては感情剥き出して生きているタイプに見える。

私は感情表現とか得意じゃない方だって思う。

だからそういう人達と付き合いやすいのかもしれない。


「でも今度から先輩になるのがちょっと不安かな」


何気なくって感じでナツミは言った。

言葉を思わずこぼしてしまったって感じがする。


「珍しいね」


「何が?」


「ナツミがそういうこと言うのって」


「あー。そうだねっ! でも本当に思うんだ。いい先輩になれるかなって」


「いい先輩って?」


部活経験がない私にはそういうの全然分からなかった。


「えっと後輩と仲が良くて、でも怒るときはちゃんと怒って……みたいな?」


「確かに難しそうだね」


きっと私には無理だなって思う。

仲良くするのも、怒るのも。


「ナツミは仲良くする方は問題なさそうだけどね」


「それは……自分で言うのもあれだけど、ちょっと自信はあるかな」


「怒るのが難しいの?」


「そうなんだよね……」


はぁっていうため息が聞こえた。

ナツミのため息も珍しい。


「やっぱり勝ちを目指す訳じゃない?」


「うん。そうだね」


「だから楽しいだけじゃ駄目なんだよね」


「そこらへんはあんまり分からないかも」


「あたしはその子が辞めちゃったらどうしよう、バスケを嫌いになったらどうしようって考えちゃうんだよね」


「それで厳しいことが言えないみたいな?」


「うん。やっぱりやってて楽しいって思って欲しいし」


ナツミらしいって思った。

そういうところがナツミのいいところなんだし。


「私はそういうのでいいって思うな」


だから私は言った。

自分でも無責任だって思うけど。


「ナツミは厳しいんじゃなくて、一緒に頑張るっていう感じの先輩が似合ってると思う」


「一緒に頑張る?」


「出来ない子にできるようになれって言うんじゃなくて、一緒に練習してあげれるような」


「なんだか理想的な先輩って感じだね」


「うん。でもナツミならなれるって思う」


「……ありがとうっ!」


「なんだかすっきりした感じがするっ!」


「それはよかった」


「いつきに電話してよかったよっ!」


「部員勧誘頑張ってね」


「うんっ! 頑張るっ!」


とっても元気な声が聞こえた。

なんだか私はほっとした気分になる。

やっぱりナツミには明るくいて欲しいから。


……

…………

………………


朝の廊下。


「バレー部ですっ! よろしくお願いしますっ!」


「楽しくみんなで投げあいましょうっ!」


「綺麗な字をかけるようになりますよ~」


なんだかとっても活気がある廊下になっていた。

もしかすると文化祭より賑わってるかもしれない。

朝登校すると廊下にはたくさんの部活が自己PRしてた。

ユニフォームとかを着た人達がチラシを配っている。


「なんだか凄いね……」


「そうだね……」


私もカナもなんだか圧倒されて廊下をこそこそって歩いた。

みんな部員を獲得するのに必死みたい。

部員を入れるのは思ったよりも大変なことなんだなって思った。

でも見ていて疑問に思ったことが1つ。

こんなの去年は見た記憶がないってこと。

私はあんまり部活とか興味なかったからスルーしてたのかもしれない。

でもこれだけ盛り上がってると、記憶に残りそうだけど……。

そう思っていると


「これって生徒会長が提案して始めたらしいね」


カナは言った。


「1日だけ廊下でチラシ配りとかできるようにしようって」


「そうなんだね」


生徒会長のことはよく知らないけど、本当に色々提案とかしてるんだなって思った。

今の生徒会は5月ぐらいで終わり。

そして6月に生徒会選挙があって6月から新しい生徒会。

今の生徒会長がこれだけ頑張ってると次の人が大変そうって思った。


「でも本当に色々な部活があるんだね」


「うん。茶道部とかあるって知らなかった」


「何か気になる部活とかある?」


私が言うとカナはにっこりと微笑んで言った。


「やっぱり天文部が一番だよっ!」


そんな風に会話をしながら私達は教室へ向かう。

途中、漫画研究部の勧誘スペースがあった。


「みんなで仲良く漫画やアニメを語りましょうっ!」


「イラストを書いたりもしますよっ!」


「コスプレをやったりもしますっ! 興味がある人はぜひっ!」


割りと多い人数の部員。

みんなやる気満々って感じで声を出してた。

ちらしも受け取る人が多い。

文化部の中でも人気がある方みたい。

でもコスプレはしてなかった。

アイコのコスプレ見たかったからちょっと残念。

それに部誌も置いてなくてなんでだろうって思った。

アイコは不満そうな表情で声も出してなかった。

やる気だせっ!

って思わず言いたくなる感じ。

3年生っぽい感じの人が心配そうにアイコに声をかけてる。

でもそれも聞いてるのか聞いてないのか分からない感じ。

本当に大変そうだなって思った。


……

…………

………………


「なんだか眠そうだね」


休み時間。

私はたまこに声をかけた。

たまこはちょっとお疲れモードみたい。

授業中もなんだか眠そうな感じになってた。


「はい……。朝早く来て料理を作ってましたから……」


言いながら大きくあくびをする。


「そういえば料理を作って置いておくって言ってたね」


さっきは料理部を見つけることはできなかった。


「朝から本当にお疲れ様」


きっと料理だけじゃなくて勧誘も頑張ってたんだって思う。

小さな体で頑張って呼び込んでたんだって思う。

それはとっても微笑ましい光景のように思えた。


「それで勧誘の方はどうだったの?」


「えっとね! 料理は全部食べてもらえましたっ!」


料理がなくなったのが本当に嬉しかったみたい。

たまこは元気を取り戻したみたいに言った。

きっと誰かが食べるたびに可愛い笑顔を見せてたんだろうって思う。

見たかったな。


「何を作ったの?」


「肉じゃがですっ!」


「いいね。美味しそう」


「うん。食べてた人も美味しいって言ってくれたから嬉しかったです」


たまこが作った肉じゃが。

とっても美味しそうだなって思った。

いつか食べてみたいな。


「新入部員は入りそう?」


私が言うとたまこは


「それは……分からないです」


って言った。

その言葉はさっきよりとれも自信なさげな声だった。


「料理を置いておくとやっぱり食べる人が多いから、ちゃんと料理部に興味を持ってもらえたかどうか……」


「そこが難しいかもね」


私も食べ物があったらそれだけでふらふらって行ってしまいそう。


「でもちらしを見て部室に来てくれるって思うよ」


たまこはとっても頑張ってるんだからちゃんと結果はでるって思った。


「だから自信持ってもいいって思う」


「いつきさんに言われるとちょっと自信が持てますっ!


私の言葉で自信がつくなら何度でも言ってあげたいって思った。


「それじゃ自分の席に戻るね」


まだ休み時間はあった。

でもたまこの休憩の邪魔をしちゃいけない。


「たまこはちょっと眠った方がいいかもね」


「はい……。そうします……」


たまこは言いながらうつ伏せに眠り始めた。

私は席に戻って眠っているたまこを見ていた。

それを見ていたら私もなんだか眠くなってきた。


……

…………

………………


「すみません」


廊下で声をかけられたのは放課後。

部室に向かう途中だった。

カナのクラスの前で合流して、一緒に歩いていた。

振り返って見るとそこには1人の少女が立っていた。

金色に染めた髪。

それに耳には……多分ピアス。

スカートもかなり短い。

この学校はゆるやかな感じで服装とかの決まりもそんなにない。

でもこんなに派手な格好をしている生徒を見るのは初めてだった。

不良だっ!

って思った。

同じクラスの美香も不良っぽいけど、ここまでじゃない。

目つきも鋭いし、私は見られただけでなんだか固まってしまった。


「何か用?」


カナが返事をする。

声になんだか警戒心があるような気がした。


「軽音部の部室ってどこか知りませんか?」


あっ。敬語なんだ。

って思った。

そういえば話しかけられた時もそんな感じだった。

見た目よりいい子ななのかもしれない。

でも私は黙ったまま。

やり取りはカナに任せることにした。

軽音部の場所も分からないし。


「えっと軽音部の部室は……」


カナは説明する。

よく分かるなって思った。

きっと文化祭で聞いた時のことを覚えてるんだろうって思う。


「ありがとうございます」


金髪の1年生は頭を下げてお礼を言う。

やっぱり礼儀正しい。

見た目で判断しちゃいけないのかなって思うけど、次に話しかけられてもびっくりしちゃうだろうって思った。


「りんごっ! 行くよっ!」


振り返って大きな声を出す。

すると小柄でちょっとぼさっとした髪の女の子が歩いてくる。

どうやらりんごって名前みたい。

名前にあってる容姿をしてるなって思った。

ぼんやりしてる表情がなんか特徴的。

この子も軽音部に入るみたい。

なんだか意外な感じがする。


「文化祭でライブすると思うからぜひ見に来てください」


そう言い残して2人は歩いていった。


「なんだか凄い人だったね」


見えなくなってから私は言った。

聞こえちゃったら困るし。


「1年生であんなに目立つ格好をしてるなんて」


「いっちゃんってああいう人が好きなの?」


「うんうん。むしろ苦手かも」


苦手っていうより怖い。


「そうなんだねっ!」


なぜかカナは嬉しそうな声を出した。


「軽音部っていえばもも先輩がいるんだね」


私は文化祭の時のことを思い出した。

もも先輩も3年生だから文化祭に出るかは分からない。

でも出るなら見たいなって思った。


「わたしは軽音部ってあんまり好きじゃないな」


「騒がしそうだしね」


「それもあるけど……」


「あるけど?」


「うんうん。何でもないよ」


カナは言った。

もしかしたらバンドとかそういうの自体が好きじゃないのかもしれない。

そうこうしているうちに部室前にたどり着く。

1年生の時よりちょっと遠いのが難点。


「ちょっと待ってて」


カナは鞄から髪を取り出して部室の扉にぺたりとはった。

なんだろうって思ってみてみると


新入部員は募集してません。


って書いてあった。

カナはそれをまっすぐなるよう微調整して……


「うん。いい感じだね」


満足そうに言った。

カナはこういうところもきっちりしてるんだなって思った。

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