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とても目覚めがいい朝だった。

とってもぐっすり眠れた。

こんなに気持ちがいい朝は初めてぐらい。


「なんだか調子よさそうじゃない」


ってお母さんも言ってくれた。


「この前はとっても具合悪そうだったけど、大丈夫そうね」


「うん、もう大丈夫」


過呼吸のこととかはお母さんに言ってない。

もう大丈夫だって思うし、万が一家でなっても対処法は分かってる。

お母さんは私の本当のお母さんではない。

お母さんから生まれたのは確かだけど、本当のお母さんは別にいる。

カナさんの話を聞いて、一層強くそう思うようになった。

でもお母さんのことは変わらずに好きだと思うし、これからもできるだけ仲良くいたい。

できるだけ心配かけたくないのは前と全然変わらなかった。


「あんまり無理しちゃ駄目よ」


「うん」


お母さんは相変わらず心配性な感じだなって思う。


「具合が悪いときはちゃんと言うから」


「学校なんて無理して行くところじゃないからね」


なんて言ってしまうのは親としてどうかと思うけど……。


「いってきます」


「いってらしゃい」


いつものように私は家を出る。

ちょっといつもより早い時間。

だって早くカナさんに……


「おはよっ!」


「わっ!」


驚いて思わず声を出してしまった。

家を出てすぐにカナさんがいた。

早く会いたいとは思ってたけど、こんなに早く会うとは思わなかった。


「お、おはよう……」


とりあえずの朝の挨拶。

でもまだ胸がどきどきしている……。

なんだか嬉しいのと驚きなのが混じった、変な感じ。


「驚かせちゃった?」


「うん。早く会いたいって思ってたけど家の前にいるなんて思ってなかったから……」


そういえば入学式の時にカナさんを見たのを思い出した。

ということは同じ通学路ってこと。

案外、近くに住んでるのかもしれない。


「連絡くれたらよかったのに」


私がちょっと不満気に言うけど、カナさんはにこにこしたまま。


「驚かせたかったの。サプライズみたいなの?」


そう言われたら何にも言えないって思った。


「嬉しいのは嬉しかったけど……」


「これからも家の前まで迎えにくるねっ!」


張り切ったような、とても元気がいい声だった。

でもカナさんに迎えに来てもらえるのはやっぱり嬉しいって思う。

なんだか特別な存在になったみたいな感じがする。


「でもよく私の家を知ってたね」


「先生に教えてもらったの」


「私に聞けばよかったのに……」


プライバシー的にどうなのかなーと想いつつ私は言った。

カナさんにならいいけど、他の人に同じ感じで教えてるならちょっと困る。

私の住所を知りたがる人って、絶対に正体とか探ろうとしてるに決まってるし。


「私が遅くなった時は家の中で待っててもいいよ」


私は時々、盛大に寝坊することがある。

あんな感じなお母さんだから、そんなに寝たいならって起こしてくれないから。

そんな時にずっと外で待たせるのはあんまりよくないって思った。

これから暑くなるだろうし、冬になったら寒くなるだろうし……。

でもカナさんは


「うんうん。ここで待つわ」


そう言った。


「いつきさんって……家族で住んでるんでしょ?」


「そうだけど……?」


「だからわたしはここで待つのがいいと思う」


「でもお母さんがカナさんのことを気に入ってたんだ」


「気に入ってた?」


そして私は入学式のことを話した。

カナさんを見てあんな子と友達になりなさいって言われたこと。

だからカナさんを連れていけばお母さんも喜ぶんじゃないかなって思った。


「それは嬉しいけど……」


カナさんはちょっと困ったような表情を見せる。


「いつきさんのお母さんは地球人でしょ?」


「そうだけど……」


「……いつきさんってお母さんと仲いいの?」


「普通だと思う」


他の人がどれだけ自分の母親と仲がいいのか分からない。

だから普通、としか言いようがないって思った。


「……そうよね。秘密がバレちゃいけないもんね」


ぼそりとカナさんは言う。

秘密がバレちゃいけないのはそうだと思う。

けど今の流れでどうしてそんな言葉が出るのか分からなかった。


「でもわたしはここで待ってるのがいいって思う」


最終的な結論って感じでカナさんは言った。


「迷惑かけるのもいけないしね」


「カナさんがそういうなら……」


もっとも私が寝坊とかしなければいいだけの話。

これから気をつけよう!

って思った。


「それじゃ行きましょう」


「うん」


そして私達は並んで歩く。

こうやって登下校するのは小学生の時以来。

なんだか子供の頃に戻ったような感じがした。


「そういえばもうすぐ球技大会があるね」


カナさんが言う。

あんまりそういうの興味なさそうだったから、カナさんがそういう話題を出すのは変な感じがした。


「そうだね。ちょっと憂鬱」


きっと私は活躍できない。

いや、きっとじゃなくて、絶対。

だからできたらさっさと負けて、応援とかに回りたい。

でもナツミパワーでなんか決勝とかいきそうなのが怖かった。


「いつきさんってバレーだっけ?」


「うん」


「わたしソフトボールなんだよね」


ポツリとした感じでカナさんは言った。


「違うのになったんだね」


でもこうやって仲良くなったのがつい昨日の話。

それまではただのクラスメイト。

だから同じ種目になれなかったのはしょうがないって思った。


「わたしなんでもいいって言ったから、人が少ないソフトボールになったんだよね」


「外であるもんね」


やっぱり日焼けはできるだけしたくないってみんな思ってるんだろう。

私もどうしても嫌ってわけじゃないけど、できるなら避けたい。


「負けたらすぐ合流できると思うから」


私もカナさんと同じ種目がいいって思う。

でもしょうがない。

決まったものだから。


「終わったら一緒に応援とかしよう」


「そうね」


ちょっと考えてカナさんは言った。


「でもちょっと頑張ってみる」


「頑張る?」


「きっとまだお願いしたら間に合うって思うの」


「誰かと変わってもらうの?」


「うん。とりあえず委員長に言ってみるっ!」


とてもはりきった、明るい声だった。

きっと学校に着いたらすぐに直談判しそうな感じ。


「凄いね」


って私は思わず言葉が溢れてしまった。

私ならきっとしょうがないって諦める。

でもカナさんは違うんだなって思った。

きっとそこがカナさんのいいところだし、私が足りないところ。

そんなカナさんだから校庭に大きな文字を書けたし、わたしを見つけてくれたんだろうって思う。

カナさんがバレーにうつれなかったら、私がソフトボールにうつれないか聞いてみよう。

一緒になって喜んでくれたナツミには悪いけど、そう決めた。

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