うちの猫の部屋
うちの猫たちが動かなくなった。
あまりにも暑いからだ。
***
暑いとき、シマシマちゃんは横になって遠くを見つめる。
なにもかも諦めた表情だ。
実際諦めているのかもしれない。
僕が触ってもなんの反応もしない。
扇風機をつけてあげるとうっとりと目をつぶる。
一方うちの猫は、少しは反応してくれる。
「暑いですかー?」と僕が近づくと、「来たわね」と嫌そうな顔をする。
嫌そうな顔をするだけで逃げないので、お腹を触る。
するとどうにか前足だけで逃げようとして、うまくいかずに諦めるのだった。
***
「あれ……どこいったんでしょう?」
シマシマちゃんはソファーの上で動かなくなっている。
しかし、うちの猫が見つからない。
テレビの裏やら、椅子の上やら、お気に入りの場所を探す。
「ええ……いない? また押し入れに入り込んだとか……?」
押し入れをのぞいて回る。
うちの猫はときどき勝手に押し入れに入り込んで、しばらくすると、「どうして閉じ込めるのよ!」と激怒するのだ。
丁寧に確認するが、うちの猫の姿はない。
「お散歩に出かけたのかな……?」
あきらめてシマシマちゃんのお腹を触るのだった。
***
「やっぱりいませんよね。どこに行っちゃったんでしょう……」
心配になってもう一度家の中を見て回る。
すると、普段使っていない二階のトイレに、うちの猫は入っていた。
「あー、もう! こんなところにいたんですか」
「フウーン」
ふたを閉めた便座の上でくつろいでいる。
「ここが気に入ったんですか?」
「ウーン」
二階のトイレは日陰になっているから、涼しいと言えば涼しい。
「んー、トイレ……? まあ居場所が分かったならそれでいいです。ドアは開けときますからね」
「フーン」
***
うちの猫は本当にトイレが気に入ったようだった。
のぞいてみると、かならず便座の上に寝転んでいる。
そんなに気に入ったのなら仕方ないと、100円ショップでマットを何枚か買った。
トイレを改装して、少しでも過ごしやするためだ。
もうトイレとしては使えない。
「あとちょっとで涼しくなりますからねー。もう少しの辛抱ですよー」
と声をかけると、うるさいなあという様子で、ゴロッと転がり、顔を隠して丸くなるのだった。




