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第4話 最強ボス、初めてのピンチ


【プレイヤー『エース』、『アルファ』、『あああ』を討伐しました。対象が一定以上のカルマ値を超えているため獲得経験値が増加します。】


 PFOがリリースしてから1週間。私はすでに数えきれないほどのプレイヤーを討伐していった。私に勝負を挑んでくるプレイヤーも少なからずはいたが私と十分に戦える力量を持ち合わせていなかった。挑む勇気は認めるが勇気と無謀をはき違えないでもらいたい。


「ああ、また『執行者』の反応だ。今日は一段と多いなあ。」


 何故ここまで悪質なプレイヤーが後を絶たないのかはメアリーにとって理解し難いものであるが、自分の獲物であることに変わりはないので少なからずありがたい話ではある。

 

 いつものように吸血女王の飛翔(クイーン・バタフライ)を使って移動を始めた時、不思議な感覚とともに羽の維持が出来なくなり、メアリーはそのまま自由落下を始めた。


 MP切れはよほどのことがない限り発生しない。しかし、現に私の飛翔スキルは全く機能していない。


 焦ることなくメアリーは試しに他のスキルを使用したところ、何の問題なく使えたため、これがプレイヤーの仕業だと気づくことができた。まさか空を飛んだところを狙ってくるとは思っていなかったメアリーは、自分がこの1週間で一番のピンチであることを自覚する。ピンチの原因は他のゲームによくある『落下ダメージ』という仕様にある。当然落下する位置が高ければ高いほどダメージも上がっていくが、もし仮にメアリーがこのまま落ちていったとしたら即死、よくて瀕死となるだろう。

 

 幸い地面までは時間があるため、メアリーはどうにか打開しようと頭を巡らせる。1つだけこの状況をどうにかできる方法を思いついたメアリーは鎖針を1つにまとめて捻じり、まるで蕾のように先端部分を膨らませた。


 鎖針は、まるで呼吸をしているかのように膨らんで縮んでを繰り返す。とてつもない速度で落下しているメアリーだが、焦らず冷静に鎖を正確に操作していった。


 「嬢王の鎖針<開花>!」


 地面に衝突する寸前、メアリーは鎖に溜めていたエネルギーを一気に放出し大爆発が起こった。

 メアリーは爆発と吹き飛ばされた際の衝撃でダメージを食らってしまったがそれでも最小の被害で抑えることに成功した。


 「さすがにこれは使えないかな。はぁ~あ。武器どうしよう。」


 嬢王の鎖針<開花>は嬢王の鎖針のスキルの中でも一番の威力を誇るスキルとなっている。しかし、重大な欠点としてしばらく使えなくなってしまうので、この武器を愛用しているメアリーは好んでいない自爆技だ。

 

「『鎌鼬』!」


 周囲が土煙で視界を覆い、全く見えない状況となっているが、そんなのお構いなしといわんばかりに、連続攻撃が迫ってくる。


 通常時であれば簡単に避けられる攻撃でも今の状況では避けることすら至難の業となっている。


 メアリーは最初のほうは避けることができたが2撃目、3撃目と繰り出される連続攻撃に対応できず、ダメージを食らってしまった。


「装備変更『夜血の羽衣』!スキル『黄泉の祈り』。」


 素早い動作で別の装備を変更しスキルを発動すると、メアリーは光に包まれていった。


 お構いなしに攻撃を仕掛けるプレイヤーだが、メアリーが光に包まれた以降一切の攻撃をあてることはできなかった。高くまで舞っていた土煙もいつの間にか晴れており、両者が相まみえる形となった。


 「初めまして、まずは自己紹介としましょうか。私はメアリー。趣味でユニークボスモンスターをやっています。それにしてもスキルを使えないようにした方法、ぜひ私に教えてほしいものですね。」


 「やなこった!分かんねえなら分かんねえままやられてくれてもいいんだぜ?」


 飛翔スキルはいまだに使えない。おそらく術者を倒さなければ解除されないタイプのものだろう。ここまで強力な代物ならば相手がユニークアイテムを保持しているのではないかと考えた。いくらレベルが低くともユニークモンスターをソロ討伐するレベルなら相手はそれなりの強者であるとメアリーは再認識した。


「油断していると負けちゃいそうですし、今回は全力で相手をしてあげるとしましょう。血刀『紅下黒』」


 動画で一度だけ現れた赤い刀身の刀。メアリーは構えをとるとプレイヤーに向かって動き出した。


「剣技『血車』!」


「……っく!『超加速』!」


 メアリーが扱っている剣の恐ろしさはPFOを遊んでいるものならだれもが知っている。ただ早いだけならまだしも龍すら一撃で屠る圧倒的な攻撃力。当然無視できるわけもなく、プレイヤーは回避に専念した。


「逃げ続けても私は自動で回復するから不利になるのは君だよ?」


 ここであえて自身の手の内を明かすメアリー。一見不利に見える行動でも、最初の落下で弱っているうちに倒し切りたいと考えているプレイヤーにとってはかなり焦る言葉となった。


「やベっ!?」


「一瞬だけ隙が生まれたね!剣技『血車』!」


 メアリーの言葉に一瞬だけ揺らいだプレイヤーに、メアリーは容赦なく一撃を叩き込んだ。レベル差もある中で完ぺきな一撃を食らったプレイヤーはそのまま倒れ、メアリーの勝利であっけなく終わった。……そう思われていた。


「スキル『決死の一撃』。俺と仲良く瀕死になろうぜ執行者!」


 油断がゆえにプレイヤーの一撃をもろに食らったメアリーは、HPが残り1まで減少していた。

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